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ウィンタースポーツの知見を日常へ! 約30年以上の進化を凝縮した ミズノ「ブレスサーモコンパクトダウンジャケット」の技術を紐解く

2025.12.10
今でこそ吸湿発熱素材は一般的だが、約30年以上も前から開発を行い、1992年に登場したのが、ミズノの高機能素材「ブレスサーモ」だ。この素材を採用し、根強い人気を博している「ブレスサーモコンパクトダウンジャケット」の機能性について、ミズノ株式会社 グローバルアパレルプロダクト本部の山本晋司さんに話を聞いた。

PROFILE

山本 晋司(やまもと しんじ)

ミズノ株式会社

グローバルアパレルプロダクト本部グローバル企画・デザイン室

アスリートに数々のプロダクトを提供してきたミズノのブレスサーモが誕生したきっかけはスキーウエアにあった。極寒地で行われるウィンタースポーツにおいて、温かさは競技成績にも直結する重要な要素である。
ミズノは羊毛が湿気を吸って熱を発する性質に着目し、その発熱メカニズムを化学繊維で再現することに成功した。

日本代表チームのウエアにも採用された繊維

「水蒸気が繊維表面に吸着されるときに、運動エネルギーが熱エネルギーに変換されて発生する“吸着熱”を利用した素材です。この繊維(原綿)は、ウールや羽毛の約3倍の吸着熱を発生し、さらに繊維の間に熱を取り込んで保温をするため、温かさが長時間維持されます。
また吸湿することで衣類内をドライに保ち、蒸れにくく、快適に過ごすことができます」
ブレスサーモを使用していることを表すタグがついている
羽毛は乾いた状態では空気を含んで保温をするが、湿気を吸うと嵩が減って、保温性が損なわれる。雪が降ることもあるウィンタースポーツにおいて、ウエアがぬれても保温性を維持できるブレスサーモの中綿は自社開発において画期的なもので、1994年には国際大会の日本代表チームのスキーウエアにも採用され、その機能性が選手から高い評価を得た。
さらに1997年にはアウトドア用アンダーウエアとして進化を遂げる。
「当時はアウトドア市場が急成長しており、なかでも機能性アンダーウエアの開発競争が活発でした。ミズノとしても、もっとも進んでいる分野にアプローチしたいと考えていました。
ブレスサーモは人体が発する湿気を吸収して発熱する繊維であることから、肌にもっとも近いアンダーウエアやソックス、インナーグラブといったものが一番その機能性を体感しやすいと考え、アンダーウエアの発売に踏み切りました」
スキーウエアの中綿をアンダーウエアに応用するには、原綿を糸に紡ぐ必要があった。しかしブレスサーモ原綿は非常に繊細で、張力をかけると切れやすく、数々の紡績工場で断られたという。
数年の歳月をかけ、他素材との混紡比率や撚糸、染色技術を確立したことで、ようやく新しいブレスサーモが完成した。その後はゴルフや野球など、さまざまな競技用ウエアに展開され、誕生から20周年を迎えた2012年、アスリートを支え続けた素材は、デイリーウエアとして登場する。
ミドラーとして使いやすい厚みとシルエットを実現
「すでにスポーツやアウトドアカテゴリーで、さまざまなアイテムを展開していたこともあり、デイリーウエアとしての展開は比較的スムーズでした」
そのブレスサーモをさらに進化させて登場したのが「ブレスサーモコンパクトダウンジャケット」だ。
「ブレスサーモコンパクトダウンジャケット」14,300円(税込)
「以前はブレスサーモの原綿をほぐし、羽毛とブレンドして中綿として使用していました。ただブレスサーモは羽毛よりも比重が大きく、着用しているうちに下へと偏ってしまい、発熱部分にムラが出てしまうことが分かったのです。
そこで“点”ではなく“面”で発熱する方が効果的だという結論に至り、ティッシュペーパーのように薄いシートを開発しました。現在では裏地にブレスサーモのシートを合わせる構成にしています」
ブレスサーモ(原綿)の吸湿発熱構造イメージ図
裏地に配置されたブレスサーモは湿気を吸収して発熱するだけでなく、体から発せられる湿気がダウン層に届かず、羽毛のロフト感と保温性を維持することができるという利点もある。また温かさを感じやすい背中部分にのみシートを当てることで、軽量化も実現した。
「弊社では吸湿発熱素材を謳うにあたり、一定の基準を設けています。素材の量が基準値を下回ると、発熱を体感しにくくなるため、ブレスサーモの含有量にも厳しい社内基準を設けています」

機能性、耐久性、デザイン性…スポーツシーンで培った知見を、デイリーウエアに応用

スポーツメーカーならではの視点は、デザイン面にも反映されている。なかでもこだわっているのが実用性を上げるための工夫だ。
「ダウンはどうしても羽毛抜けの問題があります。完全にゼロにするのは難しいですが、通気度の低い生地を使い、ステッチの運針数や針径を定めた独自の縫製基準を設けています。
また、保温性を左右するフィルパワーについても基準を設け、コストとのバランスを考慮しています。一般的には600フィルパワー以上が良質と言われていますが、本商品では650フィルパワーのダウンを採用しています」
ステッチなどを工夫することで、羽毛抜けを軽減
ミズノではこれまでもブレスサーモのシートを使ったさまざまなダウンウエアを展開してきたが、その多くが準登山などにも対応できるアウトドア仕様だった。
パッカブル仕様で、持ち歩きにも便利!写真のように畳むのも簡単
だが「ブレスサーモコンパクトダウンジャケット」は、その知見をタウンユースに落とし込むことをテーマに開発されている。ハイカラーをノーカラーへと変更し、インナーダウンとしても取り入れやすい設計に。さらにパッカブル仕様にすることで、さまざまなシーンで活用できるようになっている。
「ブレスサーモコンパクトダウンベスト」11,000円(税込)
「お客様のお声からも、スポーツを背景にした機能素材であるブレスサーモへの信頼感は非常に強いと感じています。ぜひこの温かさを多くの方に体感していただきたいです」
スキーウエアから生まれ、多くのアスリートを支えてきたブレスサーモは、今や日常を温かく包み込む存在となっている。誕生から約30年が過ぎ、温かさへの科学が今後どんな進化を遂げていくのかを楽しみにしたい。

Text by Junko Hayashida

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