

焚き火の前に立つとき、人は無意識に服のことを気にしている。穴は開かないか、溶けないか。その迷いが、火のそばに立つ時間、あるいはキャンプそのものへの没入感をわずかに削いでしまう。
キャンプ女子として知られる森風美がキャンプ場で実際に身に着けながら、その機能と実用性を検証する新連載、キャンプ女子・森風美の「キャンプ服の実力」。第1回は、スノーピークの難燃素材ウエア「TAKIBI Herringbone Shirt Jacket」を取り上げる。
PROFILE

森風美(もりふうみ)
1994年生まれ。幼少期からアウトドアに親しみ、慶應義塾大学在学中にソロキャンプの世界へ。フィールドでの実体験を軸にギアやウエアを選び、女性の視点からアウトドアの楽しみ方を発信。モデル・執筆・PRなど幅広く活動中。
火のそばに立つための装備

難燃素材という言葉は、いまではキャンプシーンで当たり前のように聞くようになった。ただ、それがどれほど効果があるのかは、実際に焚き火の前に立ってみないとわからない。
火は暖かく、料理もでき、夜の時間を豊かにしてくれる。その一方で、熱や火の粉といったリスクも常にある。難燃素材のウエアは、それらを完全に防ぐものではない。服を気にして一歩引く、その動きを減らしてくれる装備だ。


難燃素材を語るうえで外せないのがスノーピークだ。同社は長年「火と遊ぶ」「火とともにある」時間を提案し続けてきた。火を避けるための装備ではなく、火のそばにいるための装備。その考え方はギアだけでなく、ウエアづくりにも表れている。


今回、森さんがフィールドで着用した「TAKIBI Herringbone Shirt Jacket」は、シャツジャケットという日常的な形に難燃性能を落とし込んだ一着。ヘリンボーン織りの上品な陰影が特徴的で、見た目は都会的でクリーン。それでも焚き火を前提にした難燃シリーズのモデルだ。
“難燃”で焚き火時間は変わるのか? 4つの視点で検証
難燃といっても着た瞬間に何かが劇的に変わるわけではない。燃えにくいことは前提として、その先にある“焚き火時間の質”がどう変わるのかが気になるところ。そこで今回は、森さんがキャンプを通して4つの視点から検証した。
検証1|焚き火をするときの安心感

焚き火の前に立つと、人は自然と前傾する。薪をくべる瞬間、ケトルを持ち上げる瞬間、火との距離は思いのほか近い。そのとき、服への不安が頭をよぎるかどうかで動きは変わる。
「焚き火の前では、難燃素材のウエアを着ていると安心感が大きく違います。普通の服だと穴が開いてしまわないか心配になりますし、ダウンだと生地が溶けて羽毛が出てしまったら、もう気軽には着られなくなってしまうので、それも心配です。でも、そんな心配がないだけで気持ちがだいぶ楽になりますし、焚き火で“遊んでいる感覚”が味わえるようになります」

大胆になるわけではない。ただ、過剰に身を引かなくてよくなる。たったそれだけで、薪の追加も、ケトルの上げ下げも自然にできる。
検証2|火の粉にどこまで耐えられるか

撮影中、風が吹くたびに細かな火の粉が舞い上がった。通常なら反射的に距離を取りたくなる場面だが、森さんの反応は落ち着いている。
「火の粉が飛ぶと、普通は思わず避けてしまいますよね。でも、それをしなくていいのは本当に楽です。気づかないうちに袖にも飛んでいましたが、特に問題はありませんでした」

実際に火の粉が落ちた箇所を確認すると、小さなスス汚れは残るものの、燃え広がった形跡はない。
「火の粉がポッと落ちても、溶けたり、穴が広がったりせず、小さい跡で収まってくれました。“あ、これが難燃素材なんだな”と実感しました」
焚き火をしている限り、火の粉との付き合いがゼロになることはない。ただ、過剰に身構えなくてよくなるぶん、火のそばにいられる時間が自然と延びる。
「ずっと火の近くにいられるから、やっぱり暖かいですね」
検証3|動きやすさと着心地

難燃素材と聞くと、いまだに「重い」「硬い」「ゴワつく」という印象を持つ人は少なくない。森さんもそのひとりだったという。
「以前の難燃素材は、正直ゴワゴワしていて重たいイメージがありました。でもこのジャケットは、本当に普段着と変わらない感覚で、すごく柔らかいです」
この柔らかさの秘密は、難燃素材特有のゴワつきを抑えた独自の混紡技術にある。難燃繊維をヘリンボーン織りにすることで、耐久性を保ちつつ、天然素材のような質感を両立させているのだ。

では、実際に着て動いてみるとどうだろうか。薪運びや設営といった、キャンプでは避けられない動作においても違和感はなかったという。
「今日はテントの設営も着たまま行いましたが、特に気になることはありませんでした。難燃素材でも、ここまで自然に動けるのは少し驚きでした」
その理由のひとつが、サイズ設計だ。

「ゆとりのある作りなので動きやすく、中にインナーダウンなどを着込んでアウターとしても使えます。難燃素材は一番外側に着てこそ意味があるので、選ぶときは少し余裕を持たせたサイズのほうが使いやすいと思います」
“焚き火専用の重装備”ではなく、日常の延長としてそのまま動ける一着。難燃であることを意識せずに着られる点こそが、このモデルの魅力だ。
検証4|長い時間着ていてストレスはないか

焚き火は短時間で終わるものではない。森さんは、8時間以上火を囲むこともあるという。だからこそ、長時間着ていたときの感覚は重要だ。森さんは一日の終わりを振り返りながら、こうまとめてくれた。
「長時間着ていてもストレスは感じませんでした。重さや硬さが気になることもなく、ずっと着ていられる感覚です。焚き火が終わったあと、そのまま近くのカフェに寄るような場面でも違和感はないと思います」

「また、焚き火はにおいが付きやすいですが、抗菌防臭機能があるのは安心感があります。帰宅後のにおいまで気にしなくていいのは助かります。焚き火用と街用、2枚欲しくなってしまいました(笑)」
焚き火と、少し近づくために

もちろん、難燃素材がすべてを防いでくれるわけではない。森さんは過去、火の粉でまつげを焦がした経験もあるという。守ってくれるのはあくまで衣服であり、過信は禁物だ。
それでも、服を気にして一歩下がる動きが減るだけで、焚き火との距離は確実に変わる。薪を足すときに迷わない。火の前にしゃがむのをためらわない。その小さな違いが、焚き火の時間をよりよいものにしてくれる。
「安心して焚き火のそばにいられることは、キャンプにおいて本当に大事だと思います。少しでも不安がある方には、難燃素材ウエアを試してみてほしいですね」

今回の検証の様子は、動画でも公開している。
焚き火の前での動きや、火の粉が落ちた瞬間のリアルな反応は、映像でこそ伝わる部分も多い。あわせてチェックしてみてほしい。
Photo by Akinori Kawanishi
Text by Tadayuki Matsui
Original Movie












