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シミや敏感肌には肌を休めることが重要? 東京美容科学研究所が提唱する、化粧品とスキンケアのあるべき姿

2025.01.29
戦前の1933年、近代化とともにその歪みが現れる中、東京美容科学研究所(当時の名称はゼノア香粧品化学研究所)が誕生した。
「化粧品とは本来、人の肌を健康的に美しく保つためにあるものだ」
この理念を掲げ、小澤王晃氏が設立した東京美容科学研究所は、皮膚科学に基づいた基礎化粧品の研究開発や、健やかな肌づくりの啓蒙活動を続けている。
今回は、現代表の小澤貴子さんに取材を行った。研究所としての取り組みや、長年化粧品とヒトの肌に皮膚科学の視点から向き合ってきたことで得られた知見、さらに正しいスキンケアについてお話を伺った。

PROFILE

小澤 貴子(おざわ たかこ)

株式会社 東京美容科学研究所 代表取締役
上智大学理工学部化学科卒業後、応用化学修士課程を修了。その後、大手化学会社で研究員を務めたのち、上智大学理工学部化学科非常勤助手として研究に従事。理学士、工学博士(応用化学専攻)

鉛に水銀、タール色素…化粧品の品質に疑問を投げかけ創業

東京美容科学研究所は、株式会社ゼノア化粧料本舗の研究機関として、小澤王晃氏により設立された。現在の代表である小澤貴子氏は、創設者の孫にあたる。
「今年で創業92年を迎える当研究所は、祖父が化粧品本来の役割に疑問を持ったことから始 まりました。創業当時は近代化への歪みが現れ出した頃で、美容に対する科学的な見方もま だまだ希薄で、化粧品に鉛や水銀が含まれる可能性があった時代です。
また、海外から原料や化粧品が流入したことで、安全性を判断することが非常に困難な状況でもありました。当時は禁止されていなかったタール色素による健康被害も報告されていたのです。
祖父は国民の健康を守ることを使命と考え、大学の研究者たちと協力しながら、化粧品に関する法整備の必要性を訴えました」
この理念に共感した研究者として、東京大学助教授・岡山大学教授を歴任した谷奥喜平氏(医学博士)、三重大学学長を務めた三上美樹氏(医学博士・理学博士)など、著名な専門家が名を連ねていた。
東京美容科学研究所は、これら専門家との連携のもと、化粧品の研究開発・販売に取り組むと同時に、美容科学の体系化や、理美容師・一般市民に向けた教育普及活動を続けている。

美容科学に基づき、専門家の知見がいきる商品開発

専門家の協力を得ながら、美容科学を学術的に体系化してきた東京美容科学研究所。同研究所の現代表の小澤さんも、工学博士(応用化学専攻)としてその専門性を発揮している。さらに、原料や安全性、薬機法に関する専門家も社員として常駐し、美容科学と専門家の知見をいかした製品開発を続けている。
「皮膚科医や医科大学の教授など、多くの専門家と共同で開発を進めた製品もあります。
たとえば、アトピー性皮膚炎の治療においてノンステロイドを提唱されている磯辺善成先生
(京都大学医学部卒・皮膚科医・いそべクリニック院長)にも、長年ご協力をいただきました。
また、埼玉医科大学の前副学長である松下祥先生からは、ご自身がアトピーに適した製品を研究されていた際に、当社の製品処方にご関心を持たれ、直接ご連絡をいただきました。
当社は専門家からアドバイスを受ける立場であると同時に、美容科学の知見を広く伝える責任も担っています」
東京美容科学研究所が手がける化粧品は、肌が敏感で使えるものが限られている方々にも広く支持されている。
「私たちは理容師や美容師を対象に美容科学講座を開催し、全国の理美容室との繋がりも深めています。
そうしたネットワークを通じて多くのお客様の声をいただき、その情報を開発にいかしています。お客様の肌に関するお悩みやご要望に応え、その解決策を提案することが、私たちの使命だと考えています。」

肌は臓器! 健やかな肌を維持するために大切なこと

肌の悩みを抱える人は後を絶たない。健やかで美しい肌を保つためには、どのようなスキンケアが必要なのだろうか。
「一般の方のスキンケア方法を聞いていると、肌が体の一部、さらに言うと免疫を担う臓器であるという認識を持っていない方が多いと感じます。肌は、体を外的刺激から守る最前線の臓器です。健康な人ほど肌がきれいに見えるのはそのためです。
スキンケアでもっとも大切なのは、肌のバリア機能を壊さないこと、そしてバリア機能をサポートすることです。バリア機能が弱まると、乾燥肌や敏感肌の原因になるだけでなく、添加物や病原菌などの異物が侵入しやすくなります。
皮膚の生理を考えれば、外部から水分や成分を無理に浸透させるのではなく、内側のうるおいや組織を守ることが重要です。しかし、やりすぎのスキンケアや浸透にこだわる方法が、かえってバリア機能を弱めているケースが多いのが現状です。
各社でさまざまなスキンケアメソッドが提唱されていますが、当社では何かを肌から浸透させるのではなく、肌本来が持つ“守る”機能を大切にし、健康を保つことが、美しさの原点だと考えています」
東京美容科学研究所といえば、コールドクリームが広く知られている。乳化剤や合成界面活性剤を使わない、油が主体のクレンジングクリームだ。
「メイクは水では落ちないため、一般的なクレンジング剤には乳化剤や高い洗浄力を持つ成分が配合されています。
当社が守り続けているのは、メイクなどの"油汚れ"は"油"で落とすという原則です。クレンジング剤を油のみで構成することで、肌本来の皮脂を保護し、バリア機能を維持した洗顔が可能になると考えています。
コールドクリームは、肌に広げてメイクとなじませた後、湿らせたコットンで拭き取って使用します。この肌への塗布時のひんやりとした感触が、名前の由来です。
コールドクリームによるメイクオフは、肌の微生物環境を考慮しても理にかなっています。洗浄力の高い成分を使わずとも、十分なクレンジング効果が得られ、肌環境を健やかに保つことができます」

近年、敏感肌が急増!? バリア機能を壊すNGスキンケアとは

近年、敏感肌を自覚する人が増加していることが、大手化粧品メーカーの調査でも報告されている。
「平成初期に当社が実施したアンケートでは、肌の悩みはシミやシワが圧倒的に多かったのですが、現在は敏感肌や弱肌(バリア機能の低下)に関する相談が大半を占めています。その要因の一つとして、シートマスクの過剰使用が考えられます。
シートマスクは外部から水分を与えることで一時的に肌を柔らかくしますが、過度な使用は角質の生まれ変わりを妨げ、バリア機能を弱めてしまう可能性があります。角層の本来の役割は体内の水分を保持することであり、外部からの過剰な水分補給は想定されていないのです。
一時的な効果を求めるか、肌本来の健康を目指すかで、適切なスキンケア方法は異なります。即効性のあるケアが必ずしも悪いわけではありませんが、それを継続することでバリア機能を損なう可能性があります」
小澤さんは、ここ10年ほどで男性の乾燥肌が増加しているとも指摘する。その背景には、正しいスキンケア方法を知らずに、化粧水をはじめとする保湿系メンズコスメで肌に水分ばかり与えているケースが多いことが考えられるという。
また、アジアでは美白志向が高く、日本でも日焼け対策が一般的になっているにもかかわらず、シミの悩みが依然として多い状況が続いているそうだ。
「美白ケアへの関心の高まりとともに、当社へのシミやシワに関する相談も増加しています。日傘の使用や日光の回避、美白化粧品の使用などにもかかわらず、多くの方が悩みを抱えているのは美白ケアの方法自体に問題があると考えられます。
美白自体をコスメだけに頼りすぎると肌に負担がかかりがち。肌のバリア機能を正常に維持することがもっとも重要です。
それが保たれていれば、メラニンは角質の新陳代謝によって自然に排出されます。つまり健康な肌は、自力で美白できるということなのです。この自然な美白力を高めることを目指して欲しいです」
シートマスクや導入美容液、化粧水で水分をたっぷり浸透させるスキンケアを美白とあわせて熱心に行う人こそ、バリア機能を壊してしまう可能性がある。
「エイジングサインや肌トラブルが気になる場合は、肌を休ませることが重要です。風邪の回復と同じように、肌本来の治癒力を信じて待つことが大切なのです」

美容業界への思いと今後の展望

化粧品のあるべき姿と美容科学に基づくスキンケアを提唱してきた東京美容科学研究所。その今後の展望について伺った。
「現在は、美容情報があらゆるメディアに溢れ、何が自分に本当に必要なのかを判断するのが難しい時代です。各メーカーが丁寧に製品を作る中で、ユーザーが目的に応じて適切な選択をすることは容易ではありません。
私たちは、皆様の肌本来の健康を取り戻すことを目指しています。そのために、正しい情報の提供と選択基準の整備に取り組んでいきたいと考えています。
おかげさまで大変好評な当社の美容科学指導士ディプロマ講座は、すでに2万人以上のプロの技術者に受講いただいております。こうした有資格者へのフォローアップを強化するほか、美容に対する過度な完璧主義や不安を軽減し、より気軽に美容を楽しんでいただけるよう、YouTubeなどを通じて美容科学やライフスタイルに関する情報を幅広く発信していく予定です」

92年の歴史を通じて、肌と化粧品に真摯に向き合ってきた東京美容科学研究所。その理念と製品には確かな説得力がある。情報過多の現代だからこそ、美容科学の正しい知識を学び、本来の美しさを追求してみてはいかがだろうか。

Text by 継田 理恵(美容家/ライター)

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