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「グラニフ」コラボやアジカンのアートワークで知られるイラストレーター・中村佑介が描く、女性のファッションとヘアメイクの変遷

2025.01.07
どこか無機質な印象のある女性に繊細なモチーフ、大胆なカラーリングを組み合わせた作品スタイルで知られるイラストレーター・中村佑介さん。ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)をはじめとする数々のアーティストの楽曲アートワークや書籍の装丁画、アニメのキャラクターデザイン、そしてアパレルブランドとのコラボレーションなど、活動は多岐にわたっている。
今回は20年以上にわたり、さまざまな領域で女性を描き続けている中村さんにインタビュー。「現実的な女性を描き続けている」と語る彼のこれまでの活動や独自の視点から、女性のファッションとヘアメイクの変遷を辿った。

PROFILE

中村 佑介(なかむら ゆうすけ)

イラストレーター。1978年兵庫県生まれ、大阪芸術大学デザイン学科卒業。 ASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしのCDジャケット、『夜は短し歩けよ乙女』『謎解きはディナーのあとで』、音楽の教科書の表紙、浅田飴、ロッテのチョコパイのパッケージ、など数多くのイラストを手掛ける。また、アパレルブランドグラニフとのコラボ、キャラクターデザイン、動画配信、執筆など表現は多岐にわたる。日本各地で開催された巡回展覧会は好評を博した。画集『Blue』『NOW』(共に飛鳥新社)は13万部を記録中。教則本『みんなのイラスト教室』、CDジャケット全集『PLAY』(共に飛鳥新社)、ムック本「イラストノート Premium 中村佑介のワークスタイル」(誠文堂新光社)も好評発売中。
X / Instagram

「現実的な女性」を描く理由

中村さんが描かれる女性は、肌に色をつけておらず、暗い髪色であることが多いですが、現在のスタイルに辿り着いた理由は何かあるのでしょうか?
僕が大学を卒業する直前に、萌えゲームや萌えアニメのブームが来たのですが、髪の色が赤だったりピンクだったりする女の子が、肌の露出が多い服を着て、ニッコリ笑いかけているような描き方が主流でした。
でも、現実世界では、特に当時は赤やピンクの髪色にする人は多くなかったですし、イラストになると女性がいつも笑っているのにも違和感を覚えたんです。
それで、「別に実社会にいそうなそのままの女性を描いてもよくない?」と思い、そこを心掛けて女性の絵を描くようになりました。ファンタジーの要素も含むイラストに対してそこまで求めるのは野暮な気もしますが、僕の絵を見て「こういうのも良いんだよね」と安心してくれる人がいたらいいな、と思っています。
中村さんの大学時代のオリジナル作品「糸瓜」
中村さんの大学時代のオリジナル作品「路地」
「現実的な女性」を描く上で、どのようなところからインスピレーションを受けているのでしょうか?
街を歩いている人たちのファッションや髪型から着想を得ることが多いです。僕のイラストの女性像は、キャラクターというよりは「見る人がコンテンツに共感できるようにするための入り口」のようなもので、突飛すぎると共感しづらくなってしまう。
なのでカッコ良すぎたり、かわいすぎたりしないように、街にいる人を参考にしながら、バランス感を意識しています。
言い換えるとセンスを出しすぎない、といったことでもあります。「オシャレだね」という評価は褒め言葉のようにも思えますが、時には「よく分からなかった」というある種の“壁”をオブラートで包んだ言葉でもあるんですよね。
ダサくする、といったことでは決してないのですが、尖らせすぎない、ということは意識しています。

「絶対にやらない」と思っていたファッションの仕事から得た面白さ

現在はさまざまな領域で活動されていますが、それぞれの分野でイラストの描き方に違いはあるのでしょうか?
分野というよりは、ターゲット層によって描き方を変えています。たとえば楽曲のジャケットはある程度ターゲットの年代が絞られる一方で、書籍は小学生から60代くらいまでと幅広い。
ターゲットが絞れるものであれば色やモチーフ、ファッションはどこかのパラメーターが伸びたものになりますし、ターゲットが幅広くなればより中和されたものになっていきます。
東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』(小学館 )表紙イラスト ©東川篤哉/小学館
いずれにしても重要なのは、イラストは広い意味での広告であるということです。相手の意向を僕というフィルターを通じて、どれだけ効果的な絵として表現していくか、ということを意識しています。
ここ最近は「グラニフ」をはじめ、アパレルブランドとのコラボレーションも行っているかと思いますが、ファッション特有の難しさはありますか?
アパレルはデザイナーさんとの共同作業になりますが、流行や売り上げに非常に左右されやすいこともあり、他の仕事と少し毛色が異なります。
「グラニフ」さんとのコラボだと、ショッピングモールなどに出店しているブランドなので、お客さんがお店を通りかかったときに、かわいいな、買ってみようかな、と思ってもらえるようなテーマやデザイン、価格帯のアイテムを作らないといけない。
たとえばTシャツに虎の絵を描く場合、僕だったらモチーフの指向から全体の色を黄色にした方がいいのでは、と考えますが、日本ではベーシックな色の服が人気なのでそれだと売れにくいんです。
グラニフ|Tシャツ ※Tシャツは売り切れの可能性があります/graniph(https://www.graniph.com/)  
売れないと次のコラボにも繋がらず、結果的にファンの方にも僕のアイテムを届けられなくなる。アパレルの世界で僕の認知が確固たるものになれば自由にできるかもしれないのですが、今は道半ばなので、まずはちゃんと届く色や形でアイテムを作っていきましょう、という議論を担当の方とよくしています。
そうした難しさもある一方で、新しいことを勉強できたり、自分が関わった服を多くの人が着て街に出てくれることで、いろいろな場所で自分の展覧会が開かれているような感覚になれたりするうれしさもあります。数年前まで「アパレルは絶対にやらない」と言っていたのですが、今では180度変わっていますね(笑)。
「アパレルは絶対にやらない」と考えていたのは何故ですか?
僕が望んでいたのは、手に取りやすい価格帯のアイテムだったのですが、価格を抑えると回転率を上げるために制作期間が短くなることが多く、じっくり作りたい僕の性格と合わないな、と思っていたんです。
実はグラニフさんのお仕事も当初はお断りしていたのですが、担当の方に根気強くオファーをいただくなかでブランドの思いも理解できました。またグラニフはアパレルブランドでありながら半年ほどの制作期間が担保されており、価格帯も僕が意図していたものだったこともあり、引き受けさせていただくことになりました。

女性のファッションとヘアメイクはどのように変わってきたのか?

これまで描いてきた人物像の中で、思い入れのある作品があれば教えてください。
森見登美彦さんの『四畳半神話大系』と『四畳半タイムマシンブルース』のキャラクターデザインには思い入れがありますね。
どちらの作品にも共通して登場する人物が何人かいるのですが、2000年代に出た『四畳半神話大系』と、2020年代に生まれた『四畳半タイムマシンブルース』では、特徴は受け継ぎつつ、時代に合わせて髪型やファッションの雰囲気を変えているんです。
たとえば「明石さん」という女の子のキャラクターだと、髪型は同じボブですが、2000年代は前髪が重めのふんわりした髪型で、現代は前髪をすいて、軽めでコンパクトなボブにしています。
また服装も、2000年代は膝丈のワンピースにレギンスを合わせていますが、現代はワンピースの丈を長めに、サイズ感もオーバーサイズにしています。
上:「四畳半神話大系」©四畳半主義者の会  下:「四畳半タイムマシンブルース」©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会/左から3番目の女性が「明石さん」
結果的に『四畳半タイムマシンブルース』は、『四畳半神話大系』を知らない若い層にも反響がありました。良かったなと思うと同時に、ファッションの力を実感しましたね。
また、浅田飴のパッケージデザインも、最初に担当させていただいた数年前と直近のものでは、同じショートカットでも前髪の流し方や全体的なフォルムなどを変えています。これも時代の変化によるもので、個人的にすごく面白いなと思っています。
上:浅田飴糖衣L(檸檬) 下:L(檸檬) Limited Edition 2024(指定医薬部外品)/2020年と2024年に制作されたそれぞれのパッケージでは、ショートカットのディテールが異なる
長年にわたり街中の女性を観察し、イラストに反映させてきた中村さんから見て、女性のファッションやヘアメイクはどのように変わってきていると思いますか?
20年以上注意深く見てきましたが、男性よりも女性の方が性別にとらわれずよりファッションを楽しもうとしている印象を受けます。
たとえば2004年ごろに、アジカンの「君の街まで」という曲のジャケットで初めて髪の短い女の子を書いた際は「ボーイッシュだね」と言われていましたが、今はショートカットの女性を描いてもそういうふうには言われません。昔ほど明確なカテゴリ分けがなくなってきているのかもしれません。
ASIAN KUNG-FU GENERATION『君の街まで』ジャケット 2004©Ki/oon Music
一方で、メイクは涙袋を強調したり、リップにツヤ感を出したりと、より女性性を打ち出す形がトレンドになってきているようにも思います。メイクで女性らしさを出しつつ、ファッションでバランスをとるといった組み合わせの面白さが最近は増えている印象です。
他の領域でも同じようなことが起きていて、アニメやアイドルが好きないわゆる「オタク」と呼ばれていたような人がファッションにもとても詳しかったりするといった、ある種の“ちゃんぽん感”があります。
これは新しい価値観だなと思っていますし、自分の好きなモノを表明することへの後ろめたさがジャンルを問わずなくなり始めているのは、すごくいい時代だなと感じています。

活動開始から20年以上、中村さんの作品は時代を問わず幅広い世代から支持され続けている。その「普遍性」の背景には、自身のスタイルを持ちながらも、常にトレンドを街ゆく人々から吸収し、イラストをアップデートし続ける彼の柔軟性があった。今後も中村さんの「実験」は続いていくのだろう。
『中村佑介カレンダー2025』(飛鳥新社)表紙イラスト

ヘッダーキャプション:中村佑介画集『NOW』(飛鳥新社)表紙イラスト

Text by 石塚 振

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