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服と人

優里──ヴィンテージがくれた、音楽と人生の新しい景色

2025.11.19
人気ヴィンテージショップ『ベルベルジン』のディレクター・藤原裕さんをホストに迎え、藤原さんとゆかりのあるゲストが“服と人”との関わりを深く語り合うスペシャルコンテンツが、ついにスタート。記念すべき初回のゲストは、シンガーソングライターの優里さん。

PROFILE

優里(ゆうり)

シンガーソングライター。
2020年にリリースした『ドライフラワー』では、男性ソロアーティストとしては異例のストリーミング再生数を記録し、数々のヒット曲を生み出してきた。11月14日には新曲『最低な君に贈る歌』をリリースし、現在は自身初となるアジアツアーを開催しており、その人気は日本国内にとどまらず、アジア各国でも大きな支持を集めている。

PROFILE

藤原 裕(ふじはら ゆたか)

ベルベルジン・ディレクター

原宿のヴィンテージショップ『ベルベルジン』店長。ヴィンテージデニムマイスターとしても認知されている一方、多くのブランドでデニムをプロデュースするなど、現在のデニム人気を担っている。

ファッションにまったく興味がなかった10代

藤原「服と人」1発目のゲストは優里くん。今日はよろしくお願いします!
優里はい、よろしくお願いします。最初のゲストという大役に、正直ちょっと戸惑っています……(笑)。
藤原いえいえ、オファーを受けてくれてうれしいです。優里くんとはまだ出会って3〜4ヶ月くらいで決して深い間柄ではないけれど、僕がお店を不在にしているときも何度か来てくれていたようで。お店のスタッフから古着愛が溢れる方だと聞いていたので、僕の中では勝手に“飲み仲間リスト”に入れさせてもらっています(笑)。
優里それはありがたいです(笑)!
藤原連載のテーマが「服と人」ということで、今回は優里くんにとっての「服と人」についてお話を伺えたらと思います。では、まずファッションに興味を持ったきっかけから教えていただけますか?
直接会ってちゃんと話すのは2回目とは思えないほど、会話が弾んでいた
優里お恥ずかしい話、じつは昔からファッションに興味がなかったうえに、お金もなかったので生活することに精一杯でした。ファッションのことは二の次だったといいますか、何も考えていなかったです。とりあえず、自分の中でダサくはなくて、かつ安ければいいという考えでした。あとは友達が着なくなった服をもらったりもしていましたね。
藤原ある意味、古着を着ていたっていうことですね(笑)。
優里あ、確かに(笑)。
藤原ということは、やっぱり音楽が最優先だったということですか?
優里さんの思い出の詰まった服と、最近仲間入りしたヴィンテージウエアはお宝揃い
優里そうですね。20代前半は、今後どうやって飯を食っていくかを考えていましたし、ずっとバンド活動や路上ライブをやっていただけでした。なので今思うと、毎日歌ったり音楽を聴いたりするばかりで。たまにお金が入っても、美味しいものを食べに行くくらいでしたね。
藤原音楽が好きということと、それを自分でやるというのはまた別の話ですよね。優里くんが音楽をやろうと思ったきっかけは、どんなことだったんですか?
優里子どもの頃からずっとピアノを習わせてもらっていたり、親がボン・ジョヴィやガンズ・アンド・ローゼズなどアメリカンロックが好きだったりと、環境的に音楽が身近だったことが大きいですね。自然と、「やるなら音楽かな」と思ったんです。
それに、高校も中退して、自分に何ができるんだろうって考えたときに、カラオケで歌えば友達から褒められるくらい歌はうまい方だった自負もあったので、「とりあえずバンドでもやってみるか」という軽い気持ちもありました。
17歳から始めたんですけど、25歳までに売れなかったらやめることを親と約束していたんです。そうしたら、ギリギリ25歳のときに、『かくれんぼ』でようやく世の中の人に少しだけ聴いてもらえるようになりました。
藤原そんな下積み時代に着ていたのが、このアヴィレックスのジャケットなんですね。
デビュー前、苦楽を共にした優里さんにとっての相棒的存在。優里さんのアーティストとしての原点がここに詰まっている
優里そうです。7〜8年前まで着ていました。とにかく目立つし、立っている場所がわかりやすいんです。それに暖かい。先ほど話した通り、とにかくお金がなかったので、誕生日プレゼントとして親に買ってもらったものだったと思います。
藤原偶然かもしれないけどアメリカンブランドですね。
優里そうですね(笑)。あとトム・クルーズが好きで、映画『トップガン』で着ていたようなデザインが気に入っていました。

「セットアップは絶対に似合うと初見から感じていました」(藤原)

藤原世の中に知られるようになってから、ファッションに対する意識って変わりましたか?
優里変わりましたね。いろいろ着てみようと思って、ルイ・ヴィトンやグッチ、セリーヌなど、表参道にあるハイブランドの服を着ていました。特にこだわりがなかったのと、ファッションに疎かったこともあって、「とりあえずそういう服を着ていればオシャレなのかな」と思っていたんです(苦笑)。
いろんなタイプの服を着るのが好きで、ひと通り満足したら友達にあげたりもしていました。でも、『ベルベルジン』と出会ってからは、それもガラッと変わりました。
藤原初めてお店に来てくれたときは、確か友達に同行してきただけでしたよね?
後付けパーカについてレクチャーを受ける優里さん。「やばい、またハマりそう!」とうれしい(?)悲鳴が!
優里そうです。その人が古着が大好きで。でも、僕は古着にはまったく興味がなかったんです……。知っていたのは、ヴィンテージデニムが高額なものだということくらいでした。
その時は藤原さんは不在で、友達はけっこう長い時間、別のスタッフさんに接客してもらっていたんですが、結局何も買わなかったんです。その申し訳なさもあって、僕はすすめられるがままにジーンズを1本買ってみることにしました。
ところが、レジでお会計を見てびっくり! 桁をひとつ間違って見ていたんです(笑)。
藤原それはやばいですね(笑)。
優里最初は「高い買い物をしてしまったな」と思って、少し落ち込みました。
でも、実際に穿いてみたり、接客のときに聞いた話を参考にしながら自分なりに調べたりしながら、時にはChatGPTに聞いたり(笑)なんかしていくうちに、少しずつデニムの価値を実感するようになっていきました。
そして気づけば、ものすごく愛着が湧いていました。今では、本当に買ってよかったと思っています。それからというもの、地方に行ったときなど、ちょっと時間が空くと古着屋さんをのぞいてみるようになったりして、楽しみがひとつ増えました。
右はリーバイス506XX、いわゆるセカンドと呼ばれるGジャン。左はリーバイス501XX
藤原最初に買ってくれたのが50年代製のリーバイス501XXで、いわゆる“片面タブ”と呼ばれる、赤タブの片側にだけ「LEVIS」の刺繍を施しているタイプで、とても貴重なものです。メリハリの効いた色落ちの仕方も最高で、僕がお店にいてもすすめていたと思います。そのくらいお似合いでした。
そして2回目に来てくれたときに、やっと会えたんですよね。キャップをかぶっていたので最初は全然わからなかったです(笑)。その時はジーンズを穿いていて、「やっぱりアメカジ好きなんだなあ」と思いました。
優里そうでしたね。僕はYouTubeを拝見していたので、実際に藤原さんとお会いした瞬間は「わ、本物だ!」って思いました(笑)。
その時に、このセカンドを買わせてもらったんですよね。セットアップは自分にはまだ早いかなとも思いましたが、藤原さんからセカンドの魅力を聞くうちについ……。もちろん、このときは希少性や市場価格も知ったうえで買わせていただきました(笑)。
藤原最初に買ってくれた501XXと色味も合っていて、サイズも「40」くらいで、優里くんがゆったりめに着るにはちょうどいいと思いました。
それに、僕自身セカンドを使ったセットアップが大好きで、どうしても着てもらいたいという気持ちもありました。
優里ありがとうございます。今ではヴィンテージが大好きすぎて、ジーンズもGジャンもライブで着ています。私服のまま会場に入ってステージで歌って、そのまま帰る──そんな自然体のスタイルです。
ライブ中は走り回ることもあって、ジーンズの膝が裂けてリペアもしたのですが、それがまた味になって気に入っています。
藤原あとバンドTシャツも好きでしたよね? 今日持ってきてくれたTシャツは、2枚ともプリントがかっこいい。特にエアロスミスのバックに施した「STAFF」は、なかなか珍しいですよ。
右が90年代のエアロスミス、左がローリング・ストーンズで、プリントから89年製とわかる
藤原さんを唸らせたエアロスミスの「STAFF」ロゴ。左のストーンズはツアーで訪れた地名がプリントされている
優里藤原さんにそうおっしゃっていただけるとうれしいです。先ほど話した通り、80〜90年代のアメリカンロックが大好きで、古着にハマったときから集めていて、ボン・ジョヴィやガンズ・アンド・ローゼズ、あとはオーストラリア発のACDCなどのTシャツも持っています。
世の中的にはニルヴァーナを筆頭に、バンドTシャツ市場はかなり盛り上がっていますが、僕が好きなバンドは運がいいことに(!?)そこまで値上がってはいないみたいで、心置きなく買い物をさせていただいています(笑)。最近は私服もステージ衣装も、バンドT×ヴィンテージデニムが定着しています。
藤原ヴィンテージスタイルでライブをやるようになって、気持ち的に変わったことはありますか?
優里正直、歌い方は変わらないですね(笑)。ただ、僕のライブで一緒に演奏してくれているドラマーの方が、すごく古着が好きなんです。ドラムを叩かない弾き語りの曲の最中に、後ろから僕のパフォーマンスを見ているらしいんです。
そのとき、ヴィンテージを着てアコースティックギター(以下アコギ)を抱えて歌う姿がすごくかっこいいって、言ってくれました。
バンドメンバーも見惚れる優里さんのヴィンテージスタイル
藤原本当だ! すごくかっこいい!
優里ありがとうございます。昔、自分が思い描いていた理想のミュージシャン像が、まさにこういうスタイルなんです。奇抜な衣装よりも、デニムにお気に入りのバンドTシャツ、アコギを抱えてシンプルに歌で勝負する──そんな姿が一番かっこいいなと思っているんです。
これからもこのスタイルを貫いていきます。古着と出会ったことで、好きな自分がまたひとつ増えた気がします。
藤原そんな優里くんのワードローブに、今日新たな仲間が加わりましたね!
優里そうですね、こちらのオーバーオールは先ほど買わせていただいて、早く着たくてうずうずしています。
「ハウスマーク」タグのリーは、ヴィンテージマニアも血眼になって探す人気アイテム
藤原リーのオーバーオールで、タグのデザインから「ハウスマーク」と呼ばれるモデルです。この個体は40年代のもので、リーの中でも特に人気が高いタイプ。優里くんにぴったりのサイズ感で、しかも濃色で出てきたので、「これはぜひ着てほしい!」と思っていました。
優里ありがとうございます! 超テンション上がっています(笑)。ヴィンテージのオーバーオールを着るのは初めてなので楽しみです。さっそくツアーで着させていただきます!

「ヴィンテージって、その魅力が自分にしかわからないというのがいい」(優里さん)

藤原 優里くんは今、ちょうどヴィンテージに一番興味が湧いてきている時期かなと思っていました。なので、ジーンズだけでなく、新しいアイテムにもどんどんチャレンジしていってもらえたらうれしいです。
これからは、服に限らず家具や雑貨など、古いものの魅力にも触れていってもらえたらと勝手に思っています。
優里ファッション以外でいうと、アコギはヴィンテージのものを愛用しています。
藤原やっぱり新品とヴィンテージでは音色は違うものですか?
優里全然違いますね。ヴィンテージの方が、立体的で乾いた音がするといいますか。そもそも使っている木材の種類から違います。昔はローズウッドが使われていたのですが過度な伐採で減少したことから、ワシントン条約で規制されていて、今は同じものが作れないんです。
藤原そういう意味では、ヴィンテージデニムも同じですね。特にデニムは、今でも多くのブランドが試行錯誤を重ねて501XXの生地を再現しようとしています。技術的には、ほぼ同じものができていると感じます。
僕も何本か所有して実際に穿いていますが、クオリティは本当に素晴らしいと思います。でも、やっぱり60〜70年前の新品と今の新品とでは違うんです。その違いは何かといえば、空気に触れているかどうか。当時のデニムは、新品のまま何十年も置かれていたことで、素材が少し変化している。それが色落ちにも、きちんと表れているんです。
優里あとヴィンテージって、その魅力が自分にしかわからないというのがいいなと思います。
藤原本当にその通りですよね。僕なんか自分しかわからないと思って集めていたら、いっぱい増えてしまったけど(笑)。古着の魅力を徐々に知るようになって、今後どんなスタイルに挑戦したいとかはありますか?
優里最初の頃は全身古着にしたいと思っていたのですが、いざ着てみるとコスプレみたいになってしまう気がして、最近は新品と混ぜるのがかっこいいのかなと思っています。
もともと誰かに憧れて古着を始めたわけではなく、ただ純粋に「かっこいいな」と思ったのがきっかけだったので。
藤原いや、でもその“なんとなく”は大事だと思います。
この日の優里さんはショットのレザージャケットに、ヴィンテージのネルシャツ、リーバイス501XX、ホワイツのブーツというアメカジ全開のコーディネート
優里そうですよね。自分のスタイルが何なのかはわかりませんが、自分が着たいものを着て、それが自分っぽいと思えればそれでいいかな。年代とかブランドにこだわらず、自分の感覚で選びたいです。あ、でもいつか僕も、タグとかステッチにまでこだわるようになるのかな……。
藤原まあそうなったら、それはそれでいいと思いますよ。ちなみに、優里くんが「自分っぽい」と思うものの共通点とは何ですか?
優里自分でもわからなかったのですが、友達と一緒に買い物に行くとたまに「それ、優里っぽいね」って言われることがあるんです。そうやって言われるものは、たいていはTシャツでもブーツでも、使い続けて味が出ているものばかりで。確かにズタボロになっているくらい、ハードダメージなものが好きかもなと思います。
藤原そういう意味ではこのライダースも、着込みがいがありますね。
今春、展示会でオーダーしたというショットのレザージャケット。毎日のように着込んで、最近ようやくいい感じにクタってきたという
優里確かにそうですね。今冬から本格的に着込んで、自分なりの味を楽しみたいです。
藤原ちなみに『ベルベルジン』系列店『フェイクアルファ』には、優里くん好みの味のあるレザージャケットがたくさんあるので、今度案内させてくださいね。
優里ぜひお願いします!
──服を通して見えてくるのは、優里という人間の“素の魅力”そのものだった。ステージでも日常でも、どこにいても変わらない「自分らしさ」。流行ではなく“心が動くもの”を選び続ける姿勢は、彼の音楽とも深くつながっていた。

Photo by Akinori Kawanishi
Text by Kei Osawa 

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