ものを作る会社から体験を作る会社へ──。
花王株式会社が大きく変革を遂げようとしている。
この、スマホで簡単に肌測定ができる「肌レコ」を中心に、目覚ましいデジタル化が進むコミュニケーションの全貌について、同社で開発を行う堀哲之介さんと手島章吾さんに話をうかがった。
PROFILE|プロフィール
堀 哲之介
2008年、グループ会社の株式会社カネボウ化粧品に新卒入社。販売会社にて営業担当を経験。2017年本社に異動、デジタルを中心としたメディアバイイング、プラニングに従事。その後、2021年「DX戦略部門」の組織発足と同時に異動。
花王のCRM基盤、自社ECモールを立ち上げ、現在は運用を担当。
PROFILE|プロフィール
手島 章吾
2016年花王株式会社に新卒入社。化粧品スキンケアブランドのマーケティング業務を5年間担当。
その後、2021年「DX戦略部門」の組織発足と同時に異動。事業経験を生かし、社内全ブランドのCXマネジメント支援や、部門内の新規プロジェクト推進に従事している。
製造業から、UX創造企業へ。花王の新たな取り組みとは?
まずは「My Kao」を立ち上げられたきっかけを教えてください。
堀花王では、2021年から事業のDX推進を本格化させてきました。社内のDXを統合し、私たちの所属するDX戦略部門は2023年に発足しました。従来の広告一辺倒なコミュニケーションだけでなく、時代に合わせた新たな何かを作りたいというのが出発点になります。
今は情報があふれていて、あらゆるものがデータ化されています。時代の潮流はクリエイターエコノミー(消費者個人がクリエイターとして発信・販売する側にもなれる双方向の経済圏)になっていて、ものづくりの主体も生活者にあるべきだと思うのです。お客様のアイデアを商品化していく、といったことも求められていると考えています。
ではそんななかで、長きにわたり製造業を営んできた花王の強みってなんだろう? と考えると、幅広い商品ラインナップと、ものづくりの知見があることです。さまざまな情報が発信され続けている今、企業が発信する情報は“信頼できるもの”として改めて見直されているのではないかとも思うのです。
「確かなアドバイスが欲しい」「こんな商品があったらいいな…」「この商品、今すぐ欲しい!」といった、生活者の方々の願いに直接応えられる場所を作り、提供したい。さらには、生活者の方々と直接つながり、うれしい暮らしを共創していきたい。
そんな構想を描いたところから、このプロジェクトは始まり、発足から約1年をかけた昨年12月、生活者と直接つながる双方向デジタルプラットフォーム「My Kao」がスタートしました。
堀現在はここを入り口に、ビューティ専門サイト「Kao Beauty Brands Play Park」の運用をしていますが、今後はビューティに限らず、花王の強みを活かした、さまざまな専門サイトを増やして進化させていく予定です。
トップ画面がとてもかわいらしく、親しみやすい雰囲気です。どのような思いが込められているのでしょうか?
堀花王の商品ランナップは洗剤、化粧品、おむつ、さらにはペット用品までと幅広く、ターゲットを絞り込むことはしていません。そのため、トップ画面はどなたにも受け入れていただけるような、多様性を感じさせるものにしました。
また、このプラットフォームを一緒に作っていくことで、生活者のみなさんがどうなっていくのか…ということを想像し、「まいにち いい顔」でいていただきたい、いい笑顔で過ごしてもらいたい、という願いを込めて。笑顔が溢れるイラストをトップ画面に採用しました。
「My Kao」のビューティ専門サイト「Kao Beauty Brands Play Park」
サイト内には、どのようなコンテンツがあるのでしょうか?
堀4つの共通キーワード「知る」「体験する」「買う」「創る」をもとにコンテンツ作りをしています。
「知る」は研究やものづくりに基づく知見、エビデンスをもとに、科学的な視点で暮らしに役立つ情報を届けていきます。コンテンツでいうと『きれいのレシピ』になります。メイク方法や悩みについて、花王ならではのエビデンスをもとに科学的な視点で情報提供しています。
「体験する」は、オンライン上にお悩みを投稿するとプロのアドバイザーから返答がもらえる「プロに聞く」と、花王独自のモニタリング技術やAIを活用した肌測定「肌レコ」があります。
「買う」は、現在では、花王の一部の化粧品を取り扱う公式オンラインショップ「My Kao Mall」です。今まで個別のブランドごとのダイレクトショップはあったのですが、花王全体をひとまとめにしたショップはありませんでした。
知って、体験して、気になるものがあればその場でお買い求めいただけますし、GPS機能でお近くの販売店舗を表示することもできるので、実際にお手に取ってご覧いただくこともできます。
「創る」に関しては2024年をめどに展開予定です。ご期待ください。
各コンテンツから得たデータを活用し、新しい商品やサービスに生かしていくことも視野に入れています。