伝統工芸のDX化に取り組む空の目テクノロジーズ株式会社は7月1日、日本初の着物・工芸の流通プラットフォーム「ITOGUCHI(糸口)」 を7月1日にグランドオープンさせた。 「ITOGUCHI」はメーカー、問屋、小売店がブランド・バイヤーとしてオンラインで24時間365日売買したり、展示会を開催できるプラットフォームである。伝統ある商品をオンラインで流通させる取り組みの展開に至るまで、どのような経緯があったのか。着物の制作・販売を手がけており、同サービスがスタートするきっかけとなった株式会社岡野の代表取締役・岡野博一さんに話を聞いた。 伝統文化を未来へ
岡野さんは26歳の時、本家が営んでいた1897年創業(創業126年)の博多織の織元を継ぎ、株式会社岡野として着物の制作・販売を手がけてきた。父も博多織の職人だったこともあり、「良いものを作って、伝統文化を未来へ、世界へつなぎたい」との一念からだったという。そこで痛感したのは、着物業界の「流通形態の古さ」だった。たとえ ば、問屋は在庫を積極的に持たず、メーカーから委託で商品を借りて小売店に貸す方式が主流である。メーカーは小売店で商品が売れるまで代金を手にすることができないため、新しい発想で消費者ニーズを取り込んだ商品の開発に挑戦することが難しい状況にあった。着物の流通在庫は3〜4兆円とされており、換金を促進するためにも「デジタルの力で流通形態を改革したい」との思いを抱いてきたそうだ。