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2023.12.12

M3 LABO®とライトオンが協業、3Dデジタル技術を活用した商品制作の裏側

2023年10月に、モリリン株式会社のデジタル研究チーム「M3 LABO®(エムスリー・ラボ)」と株式会社ライトオンが協業して、3Dデジタル技術を駆使した「エクストラサーモ3Dジャケット」と「エクストラサーモ3Dトラウザーパンツ」の販売を開始した。
3Dデジタル技術を活用することで、データを基にしたシルエットの良さや着心地を実現し、商品開発の効率化やサンプル削減の面でも貢献しているとのことだ。
このような最先端の技術が話題になることは多いが、具体的に何ができ、どのようなメリットがあるのか、疑問に感じている読者も少なからずいるのではないだろうか。
そこで今回は、株式会社ライトオンの飯合 賢太郎さんと、モリリン株式会社の松下 慶次郎さんに、3Dデジタル技術活用の背景や活用のメリット、今後の展望について話を伺った。
PROFILE|プロフィール
飯合 賢太郎(めしあい けんたろう)
飯合 賢太郎(めしあい けんたろう)

株式会社ライトオン 商品統括部 商品企画部 メンズ企画チーム企画兼バイヤー
青山学院大学を卒業後、2014年株式会社ライトオンに入社。店舗での販売を経験後、本部商品部へ。ナショナルブランドの別注や雑貨のバイイングを担当し、現在はプライベートブランドであるBACK NUMBER(バックナンバー)の企画・バイヤーを務めている。

PROFILE|プロフィール
松下 慶次郎(まつした けいじろう)
松下 慶次郎(まつした けいじろう)

モリリン株式会社 ライフイノベーショングループ2部1課
2017年モリリン株式会社に入社。ボトムスを中心としたOEM/ODMの営業。2022年よりM3 LABO®チームが発足され、3D CADを活用した営業も行う。

「企業視点」での効率化だけでなく「顧客視点」での商品開発を実施

モリリン株式会社は、2023年3月に、デジタルデータに基づいた企画、生産、素材、販売促進の提案を総合的に行う研究チームとして「M3 LABO®」を発足した。M3 LABO®では、3D CADと3Dアバターを活用し、「多様な活用方法の提案(Matching)」「素材の提案(Material)」「動作の検証(Motion)」を提供している。
「M3 LABO®では、3D CADなどを使って、今まで表現の難しかった、パターンや、着心地のよいシルエット、素材の特徴をバーチャル上で可視化し、より良いモノづくりをするために3Dデジタル技術を活用しています」と松下さんは語る。
今回の協業は、M3 LABO®による提案で実現したとのことだが、ライトオン側ではどのような目的や狙いがあって取り組みに至ったのか、株式会社ライトオンの飯合さんに伺うと以下のように答えてくれた。
「ライトオンは、商品の均質化が進むショッピングセンターの中で、幅広い顧客層をターゲットにしています。そのため、他商品との差別化を図るために3Dデジタル技術を活用し、お客様に寄り添い、お客様に感動を与えられるような商品開発を目指して、今回の企画をスタートさせました」
単に、デジタル技術を用いて商品開発の効率化を図るだけでなく、「お客様に感動を与えられるような商品開発」を目指している点がポイントで、ジャケット・パンツともにシルエットが綺麗なだけでなく、パターン設計による着心地のよさ、冬でも暖かい機能面にも優れているなど「顧客視点」での商品開発が見て取れる。

制作前にシミュレーションや3Dでの可視化が可能に

M3 LABO®は、3Dデジタル技術を活用するにあたって、ソフトウェア「CLO」を使用している。CLOとは、アパレル向けの3D CADツールのことで、衣服の制作を行う際に必要な一連の流れをバーチャル上で可能にするものだ。
CLOを利用するメリットとして「サンプル制作前にシミュレーションが可能」といった点が挙げられる。
今回協業で制作した商品を見てみると、「エクストラサーモ3Dトラウザーパンツ」は、アバターの「透過検証」を活用し、足回りの無駄な空間をなくすことによって、スタイリッシュな見た目とフィット感を追求した。また、立体設計にすることでヒップが上がって見えるシルエットになり、脚長効果が期待できる。
その他にも、座る、しゃがむなどといった日常の動作をバーチャル上でシミュレーションし、ヒップ側のウエストライン部分が下がらないように後ろ側を長く設計している。
「エクストラサーモ3Dジャケット」は、吊り革を掴む動作により負荷を感じやすい箇所を検証し、衣服にかかる着圧を軽減させることに成功した。
このように、商品制作前にさまざまなシミュレーションをバーチャル上で検証できる点は、CLOのメリットと言えるだろう。
その他のメリットとしては、制作の段階から「3Dによる可視化」ができる点にある。この点では、具体的にどのようなメリットがあるのだろうか。
「従来だと、サンプルを作成しヒアリングしながら素材やパターンを変更していきますが、CLOを活用することによって3Dによる可視化ができ、サンプルを作らずバーチャル上で表現ができます。
そのため、3Dデータを見ながら改善や意見交換ができるため、店長やバイヤーなど、制作チーム以外のメンバーともスムーズにコミュニケーションが取れて、制作プロセスの時間短縮にも繋がったと感じています」と松下さんは語ってくれた。
3Dによる可視化によって、遠方の店舗スタッフなど物理的な面で参加が難しかった社員も制作に携わることが可能となる。実際に日々店頭に立ってお客様の声を聞いているスタッフからの声を制作に反映させることができるのは、ブランドとしてもメリットと言えるではないだろうか。
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