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2021.06.21

下着がインターフェースに? Myantの考える新たなコミュニケーションとは

カナダ発のMyant(マイアント)は2010年に現CEOのTony Chahine(トニー・シャヒーン)によって設立された、世界初となるTextile Computing™(テキスタイル・コンピューティング™)開発企業である。当社の技術が採用されているスマート下着システム、Skiin Connected Health&Wellness System(Skiin・コネクテッド・ヘルス・アンド・ウェルネス・システム)は、CES2020のイノベーションアワードを受賞し注目を集めている。スマート下着のシステムは、センサが組み込まれた下着を着用することで心電図・呼吸数等のデータが検知され、接続されたスマートフォンなどのデバイス上のアプリでデータを閲覧、さらにデータを家族や医師に公開できるというものだ。今回当社のエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントであるIlaria Varoli(イリア・ヴァロリ)にインタビューを行なった。

「問題を解決するインターフェース」としての下着

MyantはTony Chahine(トニー・シャヒーン)によって2010年に創業された。当社のコア技術Textile Computing™は、シャヒーンの父が認知症と診断されたことがきっかけとなり発案されたという。当時シャヒーンの父は、まだ若いにも関わらず、初期の認知症であると判明、そこで彼は、物理的に近くにいなくとも近くで父親を守る方法を探求し始めたそうだ。そこでまず目を向けたのが、テキスタイルであったという。「テキスタイルは常に人間の身体の周りに存在するものです。だからこそ、私たちはテキスタイルで何ができるのか、さらには問題に対処するために必要なコネクティビティを提供できるのだろうかと考え始めたのです。」そうしてリサーチを続けるうちに、大学機関のマテリアル・サイエンス領域の研究や最新の技術開発の動向から、テキスタイル開発の可能性を見出したといい、その後ビジネスを開始すべくサプライチェーンを探し、小さなR&Dチームとして創業したそうだ。
左:シャヒーン氏とシャヒーン氏の父、右:トニー・シャヒーン氏
左:シャヒーン氏とシャヒーン氏の父、右:トニー・シャヒーン氏
「私たちの使命の一つは、イノベーションをより人間中心のものにすることです。私たちは、人間、特に最も不利な立場に置かれている人々が、テクノロジーの発展から取り残されないようにしたいと考えています 。」
そのようなミッションのもと生まれたMyantのTextile Computing™システムは、人体データを計測するテキスタイルとAI対応のデジタルプラットフォームを接続させ、新たな「ヒューマンコネクティビティ」を実現。このコンセプトは、日本政府の提唱するSociety 5.0を参照し形成されたそうだ。当技術の採用されたSkiinは、下着の着用時に体温・心拍数・位置情報・活動量などの一連の情報を計測し、それらの情報を接続されたデバイス上のアプリで表示するというものだ。アプリ上の表示の例として、活動量では「◯分歩いた」「◯分座っていた」という情報や、目標とする運度量の達成度の表示等が含まれる。さらに、スマートフォンから、Skiin Appというアプリを通じて、同意を得た他人のデータを閲覧することもできる。
「例えば、自分の祖母を見守っているとしましょう。もちろん事前に彼女が望んで情報を共有していることが重要ですが、彼女のデータを見ると、体温が高くなっている、いつもの時間に起きていない、転んだ、心拍数が上がっていることに気づくことができるのです。」
その他にも、情報を感知するだけでなく、解決策を提供することもできる双方向のシステムであるといい、伝熱センサ、アクチュエーターを応用した触覚フィードバックや電気筋肉刺激など、さまざまな機能も搭載が可能だという。
インタビューに応じてくれた、イリア・ヴァロリ氏
インタビューに応じてくれた、イリア・ヴァロリ氏
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#Wearable Device
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