Fashion Tech News symbol
Fashion Tech News logo
2021.08.30

「バーチャルマーケット」の現時点:新技術とファッションとの交差

ファッション業界によるバーチャルコンテンツの提供事例は、日に日に増えている。 特にコロナ禍以降で注目が高まったバーチャルファッションであるが、この盛り上がりに先立ち、2018年からバーチャルコンテンツを提供し、プラットフォームとして展開してきたのが、業界最大級のマーケットフェスティバル「バーチャルマーケット」だ。
バーチャルコンテンツが着目される今、バーチャルコンテンツの取り組みを先んじて行ってきたバーチャルマーケットは現在、どのような変化や期待の高まりを感じているのだろうか?バーチャルマーケットを運営する株式会社HIKKY広報チーフの大河原あゆみさんにお話を伺った。

バーチャル文化圏の創造と歩み

バーチャルマーケットは、企業も一般問わず出店でき、3Dアバターや3Dモデルなどを自由に試着、鑑賞、購入できる、バーチャル空間最大のマーケットフェスティバルだ。販売できるものとしてはリアル商品と、3Dモデル商品の2パターンが存在する。大河原さんによれば、もともとはクリエイターが自分たちの3D作品を世界に見てもらい、バーチャル空間に現実に比する生活圏・経済圏・文化圏を作りたいという意図から始まったのだという。
2018年のスタートから徐々に来場者を集め、前回2020年12月に開催された「バーチャルマーケット5」では74社・1100サークルの出展があり、114万人以上が来場した。開始当初は企業の出展はなかったが、第2回からニュースなどを通して出展希望の声が集まり、これまでにウォルト・ディズニー・ジャパン、アウディ ジャパン、トヨタ自動車、Google、FaceBook、マイクロソフト、ソフトバンク、KDDI、セブン&アイ・ホールディングス、パナソニック、東宝、Netflixなどの世界的な企業からの出展がある。
第4回の開催時は新型コロナウイルスの影響が拡大するなかでの開催とあって、問い合わせ件数は増加し、1000件以上の企業問い合わせが集まった。この背景には、バーチャルショップが可能にする「体験の提供」に対する期待があると大河原さんは語る。
「ユーザーはジュースを買いたい時、『ジュース』で検索して色々なメーカーのジュースを比較して購入するものを決めるわけです。でも、バーチャルマーケットでは街があり、他企業も多数参加していることから「ジュースを買うつもりはなかったけど、街を歩いていたらおいしそうなジュースがあったからつい買ってしまった」という買い物の出会いによる体験を提供できます。また、バーチャルショップであればジュースはどうやって作られるのかというストーリーをブースで体験できるようにしたり、ジュースの噴水の上にのって空高く飛び上がるような楽しい体験をできるようにしたりすることで、製品自体に「楽しい体験という付加価値を付けて提供する」ことができます」

ユーザーとクリエイターの「きっかけ」

バーチャルマーケットの提供において主催であるHIKKYが重要視しているのが「きっかけ」としての役割だ。クリエイターにとっては、バーチャルマーケットへの出店は「〆切を得る」ことによる、作品発表のきっかけになる。ユーザーにとっては、「今まで知らなかった推しクリエイターとの出会いのきっかけを得る」ことができる。企業にとっては「バーチャルという未開の地に対して、百万人規模の来場者ベースがあるバーチャルマーケットに出展をすることにより、次世代の空間のインターネットで自社がどのような価値を提供できるかの実験を行うきっかけ」になるという。
このようなさまざまな「きっかけ」を提供できる場となることで、バーチャル世界に触れる人々が増え、バーチャルが当たり前になる時代がくることをHIKKYとしては目指していると大河原さんは語ってくれた。この「きっかけ」作りのサポートとして、HIKKYでは、営業、企画、制作、運営、PR、ユーザーコミュニティーによるバズ生成まで広いサポートを行っている。
1 / 2 ページ
#Virtual Reality
この記事をシェアする