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2023.07.06

ファッションを語る上で決して外せない「1997」を扱った特別展がパリで開催

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「1997」という数字は特別だ。なぜか。それは1997年前後に、現在の私たちが何気なく消費している、流行の鍵となる出来事がさまざまに起きたからだ。パリ市立モード美術館で7月16日まで開かれている「1997ファッション・ビッグバン」は、ファッション史における1997年の重要性をあらためて示した特別展だ。
まず、服飾業界において、1997年春夏シーズンは一つの転換点だった。ジバンシィにいたジョン・ガリアーノが、ジャンフランコ・フェレの後継としてクリスチャン・ディオールのデザイナーに就き、これまでのディオールのイメージを刷新した。
一方で、若干27歳のアレキサンダー・マックイーンが、ジバンシィのデザイナーに抜擢され、その独創性に世界の注目が集まった。
ジャン・ポール・ゴルチェは自身初のオートクチュールのコレクションを展開し、コム・デ・ギャルソンは「こぶドレス」と呼ばれた「Body Meets Dress, Dress Meets Body」を発表した。
コム・デ・ギャルソンのこぶドレス
コム・デ・ギャルソンのこぶドレス
さらに1997年は、悲しみが突如訪れた年でもあった。ジャンニ・ヴェルサーチがフロリダのマイアミビーチの別荘で射殺され、パリを訪れていたダイアナ元妃が、マスコミを巻こうとスピードを出した結果、交通事故で亡くなった。
スティーブ・ジョブズがアップルの暫定CEOに就任したのも1997年だ。1998年に売り出され、当時一世を風靡した、カラフルで半透明の外観が印象的なパーソナルコンピューター「iMac」のコンセプトは前年に生まれている。パリの伝説的セレクトショップ「コレット」のオープンも1997年。有名デザイナーやセレブリティがこぞって買い物に訪れた。
映画館ではレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが紡ぐ『タイタニック』の物語に全世界が涙を流し、イギリスではJ・K・ローリングが小説『ハリー・ポッターと賢者の石』を発表した。アイスランドのビョークは、奇抜な衣装を身にまとい歌声を奏でた。これから来る新しい時代への胎動が、世界各地で起きていた。

パリを盛り上げたイギリスのセンス

今回パリ市立モード美術館が開いている「1997ファッション・ビッグバン」は、1997年を中心に、その前後1996年から1998年にかけてのトレンドを、服飾面を中心にして紹介している。
特別展の入り口をくぐると、まず出迎えてくれるのが1996年10月のパリコレで発表された、1997年春夏プレタポルテのコレクションだ。
1997年春夏コレクションとして発表されたマルタン・マルジェラ「ストックマン」(中央)とヨウジ・ヤマモト「オマージュ」(右)
1997年春夏コレクションとして発表されたマルタン・マルジェラ「ストックマン」(中央)とヨウジ・ヤマモト「オマージュ」(右)
トム・フォード期のグッチが、1997年春夏のコレクションで発表した「Gストリング」を筆頭に、コム・デ・ギャルソンの「こぶドレス」、マルタン・マルジェラの「ストックマン」といった服が並び、当時のランウェイの映像が映し出されている。
ジャン・ポール・ゴルチェによる1997年春夏のオートクチュール
ジャン・ポール・ゴルチェによる1997年春夏のオートクチュール
続いて、1997年1月に披露された1997年春夏のオートクチュール。アレキサンダー・マックイーンによるジバンシィ、ジョン・ガリアーノによるディオール、ジャン・ポール・ゴルチェといったブランドがずらりと並ぶ。
ジャン・ポール・ゴルチェによる映画『フィフス・エレメント』の衣装(中央3体)
ジャン・ポール・ゴルチェによる映画『フィフス・エレメント』の衣装(中央3体)
その奥の展示スペースには、リーボックの「インスタポンプフューリー」、カシオの「G-SHOCK」、アップルの「iMac」など、1997年前後を取り巻くポップ・カルチャーの紹介がされている。
ハイテクスニーカー(インスタントポンプフューリー)も博物館へ入る時代に
ハイテクスニーカー(インスタントポンプフューリー)も博物館へ入る時代に
同年3月にはフェンディから「バゲット」という名のバッグが出た。脇に抱えている姿がパンのバゲットを思わせることからそう名付けられた。
コレットのオープンも同じく3月。翌4月にはベルギーのウォルター・ヴァン・ベイレンドンクが、アイルランドのロックバンドU2のステージ衣装をデザインし、5月にはジャン・ポール・ゴルチェがリュック・ベッソンの映画『フィフス・エレメント』の衣装を担当している。
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