スニーカー好きなら誰もがその存在を知っているエアジョーダン1。1985年に、バスケの神様、マ イケル・ジョーダンのシグネチャーモデルとして登場したモデルだが、数々の伝説を作ってきたスニーカーとしても有名だ。今回は、スニーカーヘッズの聖地としても名高い「スニーカーショップSKIT」の代表、鎌本勝茂さんにエアジョーダン1の歴史をはじめ、その逸話や魅力まで伺ってきた。
1984年、バスケ界のスーパースター、マイケル・ジョーダンのNBAデビューの翌年に誕生したシグネチャーモデル「エア ジョーダン1」。競争率の激しいスニーカー業界において、現在も確固としたその地位を確立している。エア ジョーダン1について鎌本さんはこう語る。
「自分がエア ジョーダン1の存在を知ったのは、1994年。最初に復刻モデルがリリースされた時です。最初に手にしたのは1998年ぐらいで、白×黒×赤カラーの通称「シカゴ」でした」。
鎌本さんにしては何とも意外な意見で拍子抜けしたのだが、話を聞いていくと、そこから流れが変わってきたのだという。
「ジョーダンの2度目の引退直前のマディソンスクエアガーデンで行われた最後の試合で、ジョーダンが、エア ジョーダン1を履いたんです。それを観てカッコいいなと思ったんですよ。そこからエア ジョーダン1熱が高まっていきました」。
現在でも支持されているエア ジョーダン1だからこそ、その逸話もたくさん残っている。当時のNBAの規定では「白の面積が一定以上あるシューズを着用する」というルールがあった。ジョーダンは黒×赤カラーの通称「ブレッド」を履き、NBAから着用を禁じられたため、ナイキがその罰金5000ドルを試合ごとに肩代わりしていたのは有名な話。その罰金の件を逆手にとったナイキの巧みなCM戦略も、当時としてはセンセーショナルな出来事だった。
「赤×黒の配色「ブレッド」のカラーリングにもたくさん逸話があって、当初、エア ジョーダン1の配色を見たマイケル・ジョーダンが「これは履けない。悪魔の色だ」と言い張って、履くのを拒否したそうなんです。なんでも大学時代のライバルチームのカラーだったということらしいのですが…」。
カラーリングの話は盛り上がり、エアジョーダン1のオリジナルカラーの話題へ発展。そこで鎌本さんはエア ジョーダン1のオリジナルのカラーリングについてこう語ってくれた。
「エア ジョーダン1は公式でオリジナルカラーは18色リリース(一般販売)されたという話があります。ジョーダンの背番号にちなんで23色リリースされたという都市伝説もありますが、一般販売されなかったモデルを含めると、実は30後半ぐらいのカラーリングがあるんじゃないかと思います。もちろん自分も見たことがない白×緑や、黒×パープルなんてカラーもあるようで……。とにかく、一般販売された18色はオリジナルモデルで確保しています」。
せっかくなので、オリジナルモデルと復刻モデルの違いを「シカゴ」で検証していきたい。
「エア ジョーダンシリーズはマイケル・ジョーダンが引退するまで、過去のモデルをリリースしないという正式なルールがあったらしいです。そのため、マイケル・ジョーダンが1993年に一度目の引退を表明した翌年、1994年に復刻がリリースされましたが、オリジナルと比べて、やや全体のシェイプや革の質感が違うんです。この微妙な差はマニアにしかわからないほどです」。
一番、目に見えてわかりやすいのは、ウィングロゴの大きさとサイズなどの表記の違い。素人目にはわずかな違いしか分からないほど、復刻モデルは精巧に再現されているのだ。
スニーカーは現在、腕時計と同じように投資の商材としても取りざたされている。その人気ぶりは、コラボモデルや新カラーが発売されるとショップに並びができたり、ネットでの抽選販売などで争奪戦が繰り広げられている。もちろん、エア ジョーダン1も例外ではない。
「NBA選手や、海外のアーティストやハリウッドセレブはお金を持っているので、みんなと違うものが履きたいということで、スニーカーを高額で買い漁っているようです。買う側はお金に糸目をつけないだけで、本当はそのスニーカーに、その価格に見合う価値がないのかもしれないのですが、情報が出てしまうとそれがスタンダードになってしまう場合もあるんですよ」。
スニーカーが本当にその価値や金額に見合っているのかの判断がつきにくくなっている時代だからこそ、鎌本さんはこの状況を危惧しているのだ。
数々の伝説を残してきたエア ジョーダン1。今年の10月にはヴィンテージ加工の「シカゴ」が復刻されるらしい。今回はエア ジョーダン1をフィーチャーしてきたが、今後も誰もが知る名作とともにスニーカーの歴史を紐解いていきたい。
1978年青森県生まれ。高校卒業と同時に上京し、スニーカーショップでの販売を経て、2001年にSKIT一号店を吉祥寺にオープン。スニーカーに関する豊富な知識と、業界屈指の目利き力でショップには多くのスニーカーファンが訪れる人気店に。そして映画『スニーカーヘッズ』にも出演するなど、その動向は海外のスニーカーヘッズからも注目されている。現在は吉祥寺の他、大阪、仙台、福岡にも出店する。
スニーカーショップSKIT 東京・吉祥寺店
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Photo by Hiroyuki “Lily” Suzuki(StudioLog)
Text by Yasuyuki Ushijima(NO-TECH)