プロから学生まで多くの人が布を求めて行き交う、日暮里繊維街。量販店では取り扱っていない布もあり、「服作りの聖地」といった印象がある。
多くのお店がひしめくなか、一際目立つのが「
フジカケ」だ。同社は創業以来、舞台・衣装・インテリア業界を中心に、個性と派手さを兼ね備えた「衣装生地」の提供を行ってきた老舗専門メーカーであり、従来の生地にはなかった多彩な表現を可能にする素材群を生み出している。
長年、多くのクリエイターを支えてきたフジカケは、どのような軌跡をたどってきたのだろうか。今回は
藤掛株式会社社長の藤嶋千広さん、統括マネージャーの中村正美さんにお話を伺った。
創業97年、田原町から始まった“特別な生地”
フジカケの誕生は、1928年(昭和3年)にさかのぼる。創業当初のフジカケはテキスタイル商社として発足し、当時まだ希少だった輸入布地や劇場用の装飾素材を扱うことで注目を集めた。次第に舞台衣装や映画・テレビ業界からの需要に応える形で、独自の特殊加工を施した布地の開発へと歩みを進め、素材メーカーとしての地位を確立した。
1970年代から1980年代にかけては、東京・田原町に拠点を構え、舞台・イベント・ディスプレイ用の素材を求めるプロフェッショナルたちの間で“衣装生地のフジカケ”として名を広めていった。