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2023.06.05

刺激的でビートを感じる服、HYSTERIC GLAMOURの歴史を紐解く

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その「黄色いショッパー」がとても人気のあるブランドのものだと知ったのは、筆者が中学に入学した頃ぐらいだろうか。ファッションに興味を持ち始めた当時、憧れの先輩やクラスにいるオシャレで垢抜けた子が、その「黄色いショッパー」を誇らしげに肩にかけていたのをよく覚えている。
ちょっと過激でビビッドな印象がある「HYSTERIC GLAMOUR(ヒステリックグラマー)」の服は、とても価値が高く手に入れたら自慢できるものと知るのに、そう時間はかからなかった。
筆者はちょうど90年代後半のHYSTERIC GLAMOURの全盛期に青春時代を過ごしたが、このブランドに対する「憧れ」と「人気」は、同世代ならば説明不要といってもいいぐらいだろう。
それは次世代にも受け継がれ、令和に入って再び盛り上がりを見せている。今回は、Z世代からも絶大な支持を得ているHYSTERIC GLAMOURの魅力に迫りたい。

デザイナー北村信彦の誕生

HYSTERIC GLAMOURは、1984年にスタートしたブランドだ。ブランドを展開する会社を調べると、「株式会社 オゾンコミュニティ」のワードが目につくだろう。
現在、同社が運営しているのはHYSTERIC GLAMOURのみだが、かつては「OZON COMMUNITY(オゾンコミュニティ)」というブランドがあった。HYSTERIC GLAMOURの本題に入る前に、まずはOZON COMMUNITYというブランドの説明をしたい。
右がオゾンコミュニティ、左がヒステリックグラマー。当時から『 CUTiE』で度々取り上げられていた(1989年 / CUTiE別冊宝島Vol6 / JICC出��版局)
右がオゾンコミュニティ、左がヒステリックグラマー。当時から『 CUTiE』で度々取り上げられていた(1989年 / CUTiE別冊宝島Vol6 / JICC出版局)
OZON COMMUNITYは、1978年に創立したブランドだ。現在は終了しているが、HYSTERIC GLAMOURと同様に90年代を通して若者に人気を博したブランドだった。
1996年には、高級カジュアルラインの「OZONE ROCKS(オゾンロックス)」を展開し、こちらも若者を中心に絶大な人気を誇った。
「DESTRUCTION(無意味な事の破壊)」、「SUPER GENERATION(世代の超越)」、「ANDORO FUTURE(合成未来)」の3テーマがコンセプトのOZONE ROCKSは、OZON COMMUNITYと比較すると、よりクールで尖った印象が強く、多くのアーティストにも好まれた。
2002年にOZON COMMUNITYと統合され、残念ながら2008年に終了してしまったが、OZONE ROCKSの顔ともいえるインディアンのプリントや、デザイン性の高いデニム、スタイリッシュなオリジナルのステッカーやノベルティアイテムを覚えている人も多いだろう。OZON COMMUNITYもOZONE ROCKSも終了してしまったが、いまだに根強いファンは多く、現在でも古着をコレクションしている人は多い。
さて、本題のHYSTERIC GLAMOURに話を戻そう。
先程「HYSTERIC GLAMOURは、1984年にスタートした」と述べたが、正しくは北村信彦がオゾンコミュニティに入社した同年に立ち上がったブランドだ。
北村はもともと、東京モード学園に在籍の頃からオゾンコミュニティでデザイン画のアルバイトをしていた。ちょうど卒業の矢先に、社長から「カジュアルブランドを展開するからやってみないか」と誘われ、オゾンコミュニティに入社する。
入社と同年にブランドを立ち上げ、デザイナーとして抜擢されるという、アパレル業界の中ではかなり珍しいケースで「デザイナー北村信彦」が誕生した。こうして北村は天性の感覚の鋭さをHYSTERIC GLAMOURで発揮することになった。

怒涛の日々だった初期のHYSTERIC GLAMOUR

左は貴重なHYSTERIC GLAMOUR初コレクション。右はHYSTERIC GLAMOURを彩ったキャラクター達。「ヒスベア」の人気は今でも健在だ(1990年 / HYSTERIC GLAMOUR BOOK 月刊キューティー特別編集 / JICC出版局)
左は貴重なHYSTERIC GLAMOUR初コレクション。右はHYSTERIC GLAMOURを彩ったキャラクター達。「ヒスベア」の人気は今でも健在だ(1990年 / HYSTERIC GLAMOUR BOOK 月刊キューティー特別編集 / JICC出版局)
HYSTERIC GLAMOURの名を聞くと、90年代後半の印象が強いかもしれないが、実は1984年の立ち上げ当初から注目されたブランドだ。
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