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2024.01.13

オリンピックを今夏に控えたパリ装飾芸術美術館で、ファッションとスポーツの特別展を巡る

今年7月26日に開幕するパリ・オリンピック開会式で、フランス代表選手団が着るオフィシャルユニフォームがベルルッティに決まった。イタリア人靴職人アレッサンドロ・ベルルッティが1895年にパリで創業したフランスの高級紳士靴ブランドである。
史上初となるスタジアム外での開会式、そしてセーヌ川を使った船のパレードにおいて、フランス代表選手団をきらびやかに飾るはずだ。
ファッションとスポーツは、現代においては切っても切れない間柄だが、2つの事柄を比べてみると、異なる世界にあるように思える。
一方はエレガンスで、一方はパフォーマンスを求める。しかし両者は、現在に至るまで互いに影響し合ってきた。
その変遷を展示した特別展「ファッションとスポーツ 表彰台から別の表彰台へ(MODE ET SPORT, D'UN PODIUM À L'AUTRE)」が、オリンピックを今夏に控えたパリ装飾芸術博物館(2023年9月20日〜2024年4月7日)で開かれている。同展では、各時代を作ってきた代表的なスポーツを紹介しつつ、スポーツウエアが私たちのワードローブに「当然のように」並ぶまでを追っている。

19世紀に生まれたスポーツという概念

特別展の入り口をくぐると、まず古代ギリシャの壺絵に描かれたたくましい体の男性像が出迎えてくれる。スポーツが、まだ今のような「スポーツ」ではなかった時代だ。
同展によると「sport(スポーツ)」という言葉は、19世紀前半に英語において用いられ始めたそうである。フランス語で「気晴らし」や「娯楽」を意味する「desport(デスポール)」から英語に取り入れられた。
もちろん、それ以前からも、多くの競技においては身体的な鍛錬の必要や、ルールは定められていた。しかしそれらは、たとえば古代オリンピックや神事である相撲のように、宗教的性格を帯びた儀式の側面も持っていた。
同展の展示品である、出土した壺に描かれた古代ギリシャの競技風景に、再び目を移してみよう。人々は引き締まった理想的なアスリート体型で描かれており、日に焼け、多くの場合で全裸だ。
解説によると、「体操」という意味である英語の「ジムナスティックス(gymnastics)」は、ギリシャ語の「gymnos(ギムノス)」に由来し、「裸」という意味だそうだ。
そこから、人々の身体的アクティビティが次第にスポーツとして競技が整えられていくに従って、体を覆うファッションとの接点も広がっていった。

スポーツの発達が衣服にも影響を与えた

現代のスポーツにつながるさまざまなアクティビティは、元は実用的な鍛錬だったものも多い。乗馬、ハンティング、アーチェリー、フェンシングなどがそれだ。それらが最終的にはスポーツ、そして実用的なものから競技会の種目になった。まず、それらの展示が展開されている。
18世紀および19世紀において、乗馬などのアクティビティは、装いに一つのパラドックスを抱えたそうだ。エレガントでありつつも、汚れに強く、より動きに適したものが求められたからだ。素材は、それまでの絹からウールや綿に代わった。19世紀にはハンティング用に防水加工のツイードが用いられるようになったが、これは大きな流行になったという。
服装にも、各アクティビティに特化した工夫が施された。たとえば、女性用の乗馬服であるアマゾーヌ。かつて女性は、乗馬に際して男性のように馬をまたいで乗ることが良しとされず、横乗り(サイドサドル)とされた。そのために裾が長く乗馬の際にも足が隠れる乗馬服が考案された。
19世紀のスポーツ萌芽期に、主導的な役割を担ったのがイングランドである。イングランドのパブリックスクール(良家の子弟が通う私立学校)において、サッカーやラグビーなどのスポーツが教育の一環として生まれ、取り入れられていた。それらスポーツを行う上で、フィールド上でチーム・スピリットを高めるものとして、ジャージーが着用された。
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