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2023.10.30

エンターテインメントとテクノロジーの複雑な融合:スタイリスト・三田真一が探求する挑戦と可能性

スタイリストとして、ファッション誌や広告から、最新テクノロジーを用いたアーティストの衣装など、さまざまなメディアでスタイリングとディレクションを手がける一方で、自身の制作作品も積極的に発表している三田真一
今回、三田さんにインタビューを行い、最近特に挑戦的な分野だと感じているファッションとテクノロジーについて詳しくお話を伺った。
PROFILE|プロフィール
三田 真一(みた しんいち)
三田 真一(みた しんいち)

1997年よりスタイリストとして活動開始。1998年渡英、2001年帰国。
現在はファッション誌、広告、ライブ、映画、ドラマ等のスタイリング、衣装デザインを手掛け、サカナクション山口一郎氏が率いるNFではクリエイティブディレクターを務める。
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エンターテインメント領域で、テクノロジーを結びつけることの難しさ

三田さんはスタイリストでありながら、ファッションテックに関してさまざまな取り組みをされています。最近はどのような活動をなさっていますか?
最近は、ファッション×テクノロジーの難しさをより実感していますね。ライゾマティクスと一緒にテキスタイルの素材開発に取り組んでいますが、結局それを実際の服に実装できないと意味がありません。
新しいテキスタイルが開発されることは素晴らしいことですが、最終的な目標は、そのアイディアが実際に人々の生活に生かされることであり、具体的にどのように応用されるかが私たちにとっては重要となります。
ファブリックでアイディアが表現されることも大切ですが、それが現実世界で実際に使用されなければ意味はありませんから。結局、自分たち以外の人間が使っても、ある程度の同じ機能が使えて、それ自体が普及できるレベルまで持っていく必要があるんです。
たとえば、実際に三田さんがスタイリストとして携わられているアーティストの衣装などでも、テクノロジーの融合は難しさがあるといいます。衣装にすると、どのような難しさがあるのでしょうか。
難しい点はいくつかあります。衣装なので着心地のよさや、動きやすさなども重要な要素だと思います。しかし、テクノロジーが取り入れられた生地の場合は着ると痛かったり、硬かったりもしますし、配線がある場合だと動いたときに引っかかることも。あとは汗との相性が悪いなども挙げられます。そのような課題ばかり出てくるんですよね(笑)。
要は誰もやっていない状態で、どうそれを進化させて、アップデートさせるのかという。衣装もそうで、まずはやってみて、そこからどれだけアップデートできるかが重要になってくるんですよね。
たとえば、光る服を作るとなったときに、私たちは光る服をどのようにアップデートするかについて考えます。しかし、クライアントは光る服を応用して、その先の何かについてあまりイメージできていないかもしれません。つまり、私たちとクライアントの目線は違うと言えるでしょう。
また、光る服を作れたとしても、そのテクノロジーの要素を最大限発揮するには、さまざまな課題や問題に対処する必要があります。たとえば、先ほどお伝えした配線の問題の他にも、外で活動中に雨が降ってくるなど、天候による新たな課題も発生する可能性があります。
その課題を解決するためには、人の皮膚に近い特性を持つ素材や、気候、柔らかさなどのさまざまな要素を考慮する必要があるのかもしれません。しかし、それらの要素を考慮しながら設計していくと、結局はそれを満たすものは永遠に見つからずに終わってしまうような気がしています。
また、実際にやってみて初めてわかることも多くあります。素材から開発し、アイディアとしてうまくいく可能性があると感じても、実際に生地を動かしてみると、均等な力が必要であったり、布が動かなかったりすることもあります。
横方向に伸ばしてみると生地が元に戻らなかったり、特定の動作で動きづらさが生じたりすることもあります。制作工程がもっとも重要であり、最終的な出来上がりが思ったほど感動的ではないこともあるかもしれません。
私たちはテキスタイルを開発するだけでなく、実装に取り組むところがメインなので、そのアイディアを実現するためにどのように進めるか、みんなで考えることが増えていますね。
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