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2024.02.13

ニューヨーク生まれのワークウエアブランド「SMITH'S AMERICAN(スミス アメリカン)」の歴史を紐解く

1906年アメリカ ニューヨーク州 ブルックリンで生まれた「SMITH'S AMERICAN(スミス アメリカン)」。この頃のニューヨークでは建築ラッシュが始まり、ワークウエアの需要が高まった時代だったと予想される。
そんな時代に生まれたSmith's Americanの代表的なアイテム、オーバーオールやペインターパンツが、時の流れと共にファッションアイテムに移り変わっていったお話をMINOYA CO.,LTD Product & Design Developmentの太田雄介さんに伺った。
「当時のアメリカはルーズベルト大統領がノーベル平和賞を獲得した頃で、当時の社名は『BROOKLYN OVERALL COMPANY(ブルックリン オーバーオール カンパニー)』といい、同社のワークウエアブランドのひとつとしてSMITH'S AMERICANはスタートしました。
“Smith's”というアメリカではポピュラーな印象の人名を採用し、広くアメリカ全土に広がるようにと付けられたブランド名だったのではないかと考えられます。その頃の主力のアイテムはオーバーオールだったようで、ニューヨークの街を建築している昔の写真や資料を見るとオーバーオール姿が目につくことから推測できます。
現在のSMITH'S AMERICANのオーナー、レニー氏は3代目なのですが、彼が現役時代の1960年代~1980年代にワークウエアからファッションシーンのフィールドを開拓していったそうです。
たとえばロサンゼルスの有名セレクトショップ『Fred Segal(フレッド シーガル)』がまだ小さな規模でやっていたときから、SMITH'S AMERICANのパンツが取り扱われていたというエピソードが残っています。こうしてワークウエアとしても、ファッションアイテムとしても、東海岸から西海岸、そして全米へとブランドが広がっていきました」
SMITH'S AMERICANに残る古い写真
SMITH'S AMERICANに残る古い写真
MINOYA CO.,LTDに保管されている1940年代、1960年代のSMITH'S AMERICANのオーバーオール、どれも保存状態がよくデッドストックのものもある
MINOYA CO.,LTDに保管されている1940年代、1960年代のSMITH'S AMERICANのオーバーオール、どれも保存状態がよくデッドストックのものもある

1970年代ワークウエアからファッションへ

1970年代にはアメリカだけでなくフランスやイギリスでもSMITH'S AMERICANの販売が始まる。このアメリカ以外への進出が現代のブランド展開に大きく関係することとなる。引き続きお話を伺っていこう。
「フランス、パリ発の『Upla(ウプラ)』というバッグブランドがその昔、セレクトショップだった時代、オーナーがアメリカを訪れ、SMITH'S AMERICANのペインターパンツを製品染めしてカラフルなものを作ってほしいという依頼がありました。
その頃のアメリカにもファッションとしてワークウエアを取り入れたものはあったと思うのですが、このカラーペインターは当時としてはかなり画期的でヨーロッパで人気のアイテムになっていったといいます」
1978年に描かれたカラーペインターのデザイン画
1978年に描かれたカラーペインターのデザイン画
1970年代のSMITH'S AMERICANの広告
1970年代のSMITH'S AMERICANの広告

4つのコンセプトを持つ日本のSMITH'S AMERICAN

ここからは日本でのSMITH'S AMERICANの展開について伺っていこう。日本に入ってきてからもかなり長い年月が経つが、今季2024年春夏シーズンからコンセプトも新たにリブランディングされたという。これからのもの作りはどんなコンセプトで行われていくのか引き続きお話しいただこう。
「2024年春夏シーズンでは、4つの軸をテーマとして立て、それにそった形でアイテム展開していきます。
1つ目は『LES HALLES(レアール)』といい、先程のフランス別注で生まれたカラーペインターパンツもそのひとつで、東海岸のアメリカらしさ+フレンチの空気感をカラフルでエレガントなワークカジュアルに仕立てるというコンセプトです。
そしてブランドルーツでもある『BROOKLYN(ブルックリン)』。さまざまな文化、歴史、人種が入り交じる“MELTING POT(メルティング ポット)”を2つ目のコンセプトとしています。
3つ目は『VENICE(ヴェニス)』。先程のロサンゼルスの有名セレクトショップFred Segalとの関係を意味し、お店が成長してもその長きにわたる信頼関係は変わることなく、ローカルズに向けたリラックスしたムードやライフスタイルを提案するコンセプトです。
最後に『PORTBELLO(ポートベロー)』というコンセプトを立てたのですが、これはイギリスストリートで生まれた音楽やアート、スポーツなどが組み合わさった、ミックスカルチャーの側面を持っているものとなります。
この4つコンセプトを感じられるアイテムをランダムに作り毎シーズンのラインナップにしていこうと思います」
LES HALLESのコンセプトのなかから生まれたカラーペインターパンツはブランドのアイコン的な存在となっている
LES HALLESのコンセプトのなかから生まれたカラーペインターパンツはブランドのアイコン的な存在となっている
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