2014年にスタートした「
Tomo&Co.」。エアソールが特徴的なシューズはメンズファッション界のキーマンであるニック・ウースターが履いたことで世界中にその人気が広がった。現在ではストリートブランドとのコラボモデルなどを製作し、確固たる地位を築きあげている。そんな「Tomo&Co.」がどんなコンセプトで、どんなモノづくりをしているのかを、同ブランドのデザイナー小野崎朋孝さんに直撃した。
息子の一言でブランドを改名し、再スタート
デザイナーである小野崎朋孝さんは2003年、自身が23歳の時に「ARTYZ(アーティーズ)」を立ち上げる。その「アーティーズ」が10周年を迎え、11年目に突入するときにブランド名を「Tomo&Co.」に改名した。その時の心境を小野崎さんはこう話す。「ブランドデザイナーは“デザイナー”でいられる日は数少ないんです。生地屋に行ったり、パターンなど色々な打ち合わせしたり……。多種多様な雑務に追われて頭に描いていた“デザイナー像”とは違うなぁと感じていました。息子と公園で遊んでいるときに“パパは何屋さんなの?”と聞かれて、すぐ“洋服屋さん”と答えられなかった。
11年目の企画のパターンなども終わっていたんですが、このままだと次の10年が見えないなと思って、自分の得意な企画(帽子、シャツ、シューズ)だけを残して、心機一転、ブランド名も変えて、2014年に再スタートしたのが、『Tomo&Co.』が生まれたきっかけです」
ブランド名の「& Co.」は“カンパニー”という意味ではなく、デザイナーの小野崎朋孝とその家族、友人を指しているという。いまだに何屋さんであるかはわからないと笑う小野崎さんだが、こう続けてくれた。
「実は沖縄でアロハシャツを展開する『Aloha Blossom(アロハ ブロッサム)』のデザイナーも手掛けているので、正直なところ何屋さんかはわからないのですが、位置づけとしては“シューズとシャツを作っている”という感じになっています。ただ、『アーティーズ』を運営していたときよりは、自分の中で整理された感じはありますね」
“レザーシューズとスニーカーの中間”というモノ作り
「アーティーズ」時代からシューズには定評があった「Tomo&Co.」。いい工場に巡り合えたことでカタチにすることができていると答える小野崎さんだが、どんなコンセプトやこだわりを持って作っているのだろうか。「今まではわりと元ネタありきで、いわゆるレザーシューズにエアソールがついているデザインが多かったのですが、自分が描いた線でもう少しリラックスした“レザーシューズとスニーカーの中間”という位置づけのシューズを作っています。日本人に合うようなワイズが広めの木型を使ったアジアンフィットが中心で、国内の工場で作っているのがこだわりですね」
「Tomo&Co.」といえばやはり欠かせないのはエアソール仕様のジャーマントレーナーだ。そのアイデアが生まれたきっかけも聞いてみた。
「今は違うと思いますが、ヨーロッパの人たちはアメリカ生まれの「ナイキ」のスニーカーを履かないみたいな空気が残っていると聞いたことがありました。それがずっと頭に残っていて。ヨーロッパ生まれのジャーマントレーナーに、エアソールを付けたらどうなるんだろう、という遊び心から生まれたんですよ」
そんな遊び心が反映されたジャーマントレーナーは、海外のファッショニスタであるニック・ウースター氏が日本での購入品としてinstagramに投稿したことで、国内外で人気が広がり、当時は海外からのオファーも増えたという。
そのブレイクからレザーシューズのボリュームが多くなり、スニーカータイプのシューズはあまり展開されていなかったそう。だが、2024年のコレクションからはスニーカータイプの割合も多くしているという。その中でのおすすめ商品を聞いてみた。
「今季からは『bal(バル)』を手掛ける蒲谷健太郎さんをゲストデザイナーに呼んだラインも展開しています。おすすめは蒲谷さんに手掛けていただいたモデルで、自分にはできない配色を実現してくれています。蒲谷さんはレコードとスニーカーを沢山見てきた世代なので、日本特有のサンプリング文化やデザインセンスを思い知らされました」