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2023.07.20

カウボーイのために生まれたデニム「Wrangler(ラングラー)」の歴史

アメリカのカウボーイたちに愛されたデニムブランド「Wrangler(ラングラー)」。歴史を辿ると他のデニムブランドにはない仕様とデザインが随所に見られ、Wranglerの唯一無二の個性を知ることができる。今回は株式会社エドウインの内野祥さんにブランドの歴史を伺いながら、細部までこだわり抜いた仕様とデザインについて解説していただいた。

カウボーイのために生まれたWrangler

「Wranglerは1947年、アメリカ、ノースカロライナ州、グリーンズボロで誕生しました。実はWranglerが始まるまでの歴史もまた長く、1904年に創業の『Hudson Overall Company(ハドソン オーバーオール カンパニー)』という前身の会社がありまして、1919年、『BLUE BELL(ブルーベル)』に社名変更しました。
このBLUE BELLは今でもWranglerのロゴの上にマークが入っているので、知っている方も多いかと思いますが、BLUE BELLというワークウエアブランドを展開しており、その後、同じくワークウエアブランドの『BIG BEN(ビッグベン)』と合併します。
のちにBLUE BELLは『CASEY JONES(ケーシー ジョーンズ)』という会社を買収するのですが、そのCASEY JONESがWranglerというレーベルをもっており。そこからカウボーイ市場に参入しようと、ウェスタンウエアブランドとしてWranglerが始まりました」
BLUE BELL時代の社屋
BLUE BELL時代の社屋

Wranglerのベースデザインを作ったデザイナー「ロデオ・ベン」

カウボーイ向けにスタートしたデニムブランドWranglerだが、すでに存在していた数々のデニムブランドとは明らかにデザインが違った。カウボーイのために作られた仕様と、カウボーイのかっこよさが引き出せるようなそのデザインワークについて詳しく教えていただこう。
「Wranglerの意味は“牧童(ぼくどう)”と訳されるのですが、これは牧場での労働者を指し、その名前からカウボーイ向けだということがわかります。Wranglerといえばロープロゴと呼ばれるロゴが印象的です。最初期のころはWの文字が“内巻き”になっているのですが、これは1947~1950年ぐらいのわずかな時期でしか作っておらず、その後は“外巻き”といわれる通常のみなさんがよく目にしているものになっていきます」
写真は復刻版のもの。写真、向かって左が内巻きのロープロゴ、右が外巻きのロープロゴ
写真は復刻版のもの。写真、向かって左が内巻きのロープロゴ、右が外巻きのロープロゴ
「デザイナーはロデオ・ベンという人物で、ロデオ・サーキットのカウボーイ達の衣装のデザインテーラーをしていました。彼のデザインワークは従来の5ポケットデニムパンツとは異なるアプローチのものがたくさんありました。一例をあげると、前立と股の仕様がトラウザーパンツの様な仕様になっているなどWranglerならではのものがたくさんあります。
このあとさらに詳しく説明させていただきますが、カウボーイ向けにより美しくかっこよく作るという意識があったのだと思います。それは、アメリカのカウボーイたちが馬に乗るためのタフさの他に、かっこよさというものに重きを置いていたからだと思います」
Wranglerの5ポケットデニムパンツの裏側。細部までこだわった縫製になっており前立裏にブランドネームタグがついているのも昔からの特徴だ
Wranglerの5ポケットデニムパンツの裏側。細部までこだわった縫製になっており前立裏にブランドネームタグがついているのも昔からの特徴だ

Wranglerのセブンアイコンズ

Wranglerならではの仕様の一例を見せてもらったが、Wranglerには語り継がれるセブンアイコンズというものがある。写真を見ながらその特徴を解説していただいた。
●︎ロープロゴボタン:「ロープロゴのボタン」 ●︎ロデオ・ベン ウォッチポケット:「通常はコインポケットと呼ばれるウエストの前側右下の小さなポケットは、『ウォッチポケット』といい、懐中時計を入れられるように少し大きく深めにできているというのが特徴です」  ●︎セブンベルトループス:「ベルトループは普通5本のところ、Wranglerは7本ついています。これは馬に乗っている際にずれないようにするものです」  ●︎リバースフーリーフィールドヨーク:「ライディング中の工夫で『リバースフーリーフィールドヨーク』という仕様もあります。これはヒップポケット上のステッチが通常とは逆の山高といわれる縫製でできています。ヒップポケットからずり上がってきたものが引っかかるような仕様になっていまして、とてもカウボーイ的なディテールだと思います」  ●︎ノースクラッチリベット:「ヒップポケットを止めるリベットは、馬の鞍を傷つけないようにフラットなデザインになっています」  ●︎ロープロゴパッチ:「ロープロゴのレザーパッチ」  ●︎サイレン�トWステッチ:「トレードマークであるヒップポケットWステッチです。これは『サイレントダブル』と呼ばれていましてWranglerは頭文字のWを発音しないのでこの呼び名になったそうです」
●︎ロープロゴボタン:「ロープロゴのボタン」 ●︎ロデオ・ベン ウォッチポケット:「通常はコインポケットと呼ばれるウエストの前側右下の小さなポケットは、『ウォッチポケット』といい、懐中時計を入れられるように少し大きく深めにできているというのが特徴です」 ●︎セブンベルトループス:「ベルトループは普通5本のところ、Wranglerは7本ついています。これは馬に乗っている際にずれないようにするものです」 ●︎リバースフーリーフィールドヨーク:「ライディング中の工夫で『リバースフーリーフィールドヨーク』という仕様もあります。これはヒップポケット上のステッチが通常とは逆の山高といわれる縫製でできています。ヒップポケットからずり上がってきたものが引っかかるような仕様になっていまして、とてもカウボーイ的なディテールだと思います」 ●︎ノースクラッチリベット:「ヒップポケットを止めるリベットは、馬の鞍を傷つけないようにフラットなデザインになっています」 ●︎ロープロゴパッチ:「ロープロゴのレザーパッチ」 ●︎サイレントWステッチ:「トレードマークであるヒップポケットWステッチです。これは『サイレントダブル』と呼ばれていましてWranglerは頭文字のWを発音しないのでこの呼び名になったそうです」

名品と呼ばれるアイテム「11MW」「11MWZ」「111MJ」「11MJZ」

ここからは「Wranglerといえばこのアイテム」というものを年代を追いながら紹介していただこう。
「Wranglerが始まった1947年の最初のデニムパンツが11MWです。この翌年、1948年にボタンフライからジップフライ仕様になった11MW Zというモデルが発売されます。グリッパー社の両爪ジップを採用しています。このモデルから今では一般的となっているフロントジップ仕様が、このモデルからスタートします。
両モデルともカウボーイに好まれるシルエットを追求し、ウエスタンブーツを履いてキレイに見えるように膝から下の斜行がほとんどない“フィットオーバーブーツ”というシルエットで作られています。所謂ストレートデニムはストレートといえども膝から下が裾にかけて細くなっているのですが、ここがWranglerならではのデザインワークだと考えられます」
グリッパー社の両爪ジップ
グリッパー社の両爪ジップ
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