たとえば、クローゼットの中にあるお気に入りのシャツを思い浮かべてほしい。生地の色合いや襟の形、纏ったときのシルエット。ではそのシャツに「ボタン」はいくつついているだろうか? 5個か、6個か。服を着るときに必ずと言っていいほど触れるパーツでありながら、意外なほど注意を払っていないことに気が付く。
しかし、なかにはボタンに魅了され、自らギャラリーを開いているほどのコレクターがいる。東京都台東区の住宅街にある「
谷中レッドハウスボタンギャラリー」。そこには美意識を刺激する無数のアンティークボタンが展示・販売されている。
本記事ではそのギャラリーオーナーであるドリーヴス公美さんに取材。服に必須のパーツであるボタンが記録したファッションの営みの歴史に触れてみよう。
「谷中レッドハウスボタンギャラリー」について教えてください。
2013年にオープンした、18世紀~19世紀以降の欧米のアンティークボタンを中心に所蔵・展示する私設の博物館です。ボタンにはとてもユニークな歴史があります。現在のボタンはほとんどがプラスチック製です。貝や金属や水牛製もありますが、かつてはもっと多様な素材とデザインがありました。きらびやかなガラス製や、象牙製。ベークライトやセルロイド。牛乳に含まれる成分を樹脂に使用した、柔らかな質感の「カゼインボタン」など。今ではほぼ見られない素材のボタンも一部は 販売しています。