Fashion Tech News symbol
Fashion Tech News logo

自社養蚕やバイオ研究で日本のシルク産業の再興を目指す、NEXT NEW WORLDの挑戦

日本のシルク産業を再興し、サステナブルな社会を実現するために、新たなシルク製品を生み出そうとしているのが、株式会社NEXT NEW WORLDだ。
同社は、高嶋耕太郎さんが2021年に創業したベンチャー企業。2022年には本社を群馬県桐生市に移転し、かつて「西の西陣、東の桐生」と謳われた織物の町で、事業を展開している。
さらに、新規就農した養蚕農家に繭の生産を委託しており、原料から自社で調達することを目指している。
養蚕に取り組んでいるのは、桐生市で活動しているまちづくり会社UNIT KIRYU代表の川村徳佐さん。まったくの素人から養蚕に挑戦し、繭の生産を行っている。
そこで特集「養蚕と製糸」の最後となる第4回は、養蚕から製品の研究開発までを手がけ、新しい産業を生み出そうとしている高嶋さんと、新規就農の養蚕農家として活動を開始した川村さんに、現状と課題、今後について伺った。

シルクの主成分「タンパク質」の可能性

高嶋さんは、Amazon Japanでメンズアパレル部門や販売コンサルティング部門の部長、さらにTOKYO BASEでは取締役を6年務めるなど、ファッション分野で数多くの実績を積んできた。
そのなかで、コロナ禍をきっかけに社会に貢献できる企業を作りたいと思い、会社設立に至ったという。
「さまざまな自然原料を調べるなかでも、特にシルクに含まれるタンパク質は今後ものすごい可能性を秘めていると思い、コミットしたいと考えました。シルクは、自然界の中でも生体親和性の高いタンパク質と言われていて、人の肌に近いという特徴があります。シルクのタンパク質にしかできないものはたくさんありますので、その研究と開発を進めています。
桐生市に移転したのは、シルクの街として有名だったことや、戦前に日本製の生糸の品質向上と輸出拡大などに貢献した、星野長太郎と新井領一郎兄弟の出身地が、現在の桐生市黒保根町であったからです。日本のシルク産業をもう一度ここから再興させるという意思で、桐生市を拠点に決めました」
同社は、これまでシルク由来の石鹸やフェイスパックなどを商品化しているが、今後シルクの可能性をどのように展開しようと考えているのだろうか。
同社が販売している「シルク石鹸」
同社が販売している「シルク石鹸」
同社が販発売している「フェイスパック」
同社が販発売している「フェイスパック」
「引き続き石鹸や化粧品などの販売は続けながらも、ベッドルーム、バスルームを中心としたライフスタイルブランドとして確立するためのプロダクト群を、今年中にローンチします。
また、動物の腎臓病に効くシルクサプリメントの独占特許をとり、展開します。併せて犬猫用のシルクグッズも発売予定です。
人間用のシルクサプリメントも有用性の確認ができているので、こちらも展開します。他にも、青果の腐食スピードを1.5倍から2倍遅らせるシルク防腐剤も販売予定です。
それ以降については、再生医療、薬、代替プラスティック、シルクタンパク質のバイオ量産などにフォーカスしており、いろいろな研究機関と協力して、研究・開発をスタートしております」

「特許」によるビジネスを展開したい

今後のビジネスモデルについては、「特許」が課題であるとしている。
「われわれが目指すのは、繭(シルク)のフィブロイン(タンパク質)のバイオ研究を進めて、いろいろな特許をとり、プロダクト生産と、その特許を企業様に貸すというモデルです。
グローバルでビジネスを展開させるためには、やはり特許を取得することで参入障壁を高め、世界での競争力を持った商品を作らなけらばならないことが必須なので、研究を継続し世界一のシルクのトータルブランドを作ります。
この無限大の可能性を秘めているシルクですが、実は今その量は世界的に足りていません。そこで、安定的な供給ができるよう量産方法についても研究を進めます」
同社にとって、シルク産業は初めての試みだったことから、サプライチェーンを知るため、そして国産シルクを守るために、まずは原料を自分たちで作ろうという意思で養蚕をスタートしたという。
では、実際に同社と協力して新規就農したUNIT KIRYUの川村さんは、養蚕においてどのような課題と向き合い、そこにどんな可能性を感じているのだろうか。
1 / 3 ページ
この記事をシェアする