日本の養蚕農家は、最盛期の1929(昭和4)年には221万戸も存在していたが、2022(令和4)年の時点では、わずか163戸となっている。さらに、繭の生産量も1930(昭和5)年には40万トンを記録していたが、2022年には51トンと、ともに過去最低となっている。
そのなかで、近年では新規就農する若手養蚕農家とともに、テクノロジーによって養蚕を可能にするシステムを開発した企業や、それを実際に導入して新たなシルク製品を生み出している企業が注目を集めている。
「スマート養蚕システム」が開発された背景
新菱冷熱工業株式会社は、空調衛生設備の設計・施工を行う企業として知られているが、なぜ養蚕に関わる事業を展開するこ とになったのだろうか。同社で新蚕業開発プロジェクトのプロジェクトリーダーを務める福川真史さんは次のように語る。
「弊社は、東京都庁や横浜ランドマークタワーの空調など、大規模施設の空調設備をコーディネートしている会社です。人が生活する上で快適な環境を提供することが、ビジネスの根幹です。