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2023.12.13

ベナンの伝統文化で日本に笑顔を:AFRICL

アフリカにベナンという国がある。ほとんどの日本人にとって、馴染みのない国かもしれない。アフリカと聞けば、貧しい・危険な地域といった先入観を持つ人も少なくないだろう。だからこそ、そこにある魅力に気づけていない状況がある。
そこに切り込んだのが「AFRICL(アフリクル)」だ。ベナンの伝統的な工芸に注目し、職人さんが染色する美しい布を使った衣服やアクセサリーを販売している。同ブランド代表の沖田紘子さんは、ベナンの文化や人々の心の豊かさに出会った経験から、伝統工芸を通じて日本にもその精神を伝えようとしている。
今回、ベナンに出会ったきっかけからモノを大切にする心構えまで、AFRICLが目指す生活のあり方を代表の沖田紘子さんに伺った。
PROFILE|プロフィール
沖田 紘子(おきた ひろこ)
沖田 紘子(おきた ひろこ)

大人のための纏う伝統文化 AFRICL 代表
埼玉県吉見町出身。大学時代、ベナン共和国の現地NGOでのインターンシップに従事。卒業後は生命保険会社での勤務を経て、2020年にAFRICL起業。一児の母。好きなことは、暮らすように旅すること。

ベナンでの経験・素敵な布との出会い

ベナンとの出会いについて教えてください。
私が初めてベナンに行ったのは、教育系NGOのインターンシップです。当時は国際協力に関わる仕事に就きたいと思っていたのですが、ひとことで国際協力と言っても、医療もあれば教育支援もあります。いろいろな関わり方があるなかで、自分が身を置きたいのはどこだろうと迷っていました。そこで、まずは支援先となる国に赴き、そこで何が見えるのか確かめようと考え、行動しました。
あまり馴染みがないのですが、ベナンはどのような国ですか。
ベナンは西アフリカの一国で、ヨーロッパ等との交易の拠点になる海岸線に位置しています。海沿いの地域ということもあり、布の文化が発展しているのが魅力のひとつです。また奴隷貿易の拠点となっていた場所でもあり、その歴史を伝える歴史博物館が建設されています。
とはいえ、ケニアや南アフリカのように高層ビルが立ち並ぶような町並みではありません。いわゆる発展途上国ではありますが、都市部に行けば鉄筋コンクリートの建物、スマホやパソコンを使う人の姿を見ることができます。
私が驚いたのは、町のなかで困っているとみんなが助けてくれたことです。なかには、そこまでしてくれるのかという人もいました。人としての振る舞いを見習わないといけないと思わせてくれる、素敵な国民性がありますね。
国際協力からファッションへの転換は、何がきっかけだったのでしょう。
ベナンで暮らしてみると、国際協力で「何かをしてあげよう」という上からの目線がおこがましいものだと気づかされました。ベナンの人々は笑顔に溢れていましたし、人との関わりや物事の捉え方など、私のほうが学ばせてもらうことが多かったのです。
そのような意識の変化のなかで、ベナンの伝統文化に触れたのが大きなきっかけでした。日本でもアフリカ布やアフリカンプリントと呼ばれるカラフルなプリント生地が人気ですが、現地では職人さんの手織りや手染めの伝統的な生地も数多く流通しています。
それらが市場に並んでいるのを見て感動したのと同時に、街を歩いていて、美しい伝統的な生地を纏う人の少なさに驚きました。特に若い人に纏っている人が少ない印象で、このままではすたれていってしまうのではないか、この美しい布文化を未来に繋ぎたい、と感じたのです。
そうした思いから、生地を通じて、日本の人たちにベナンという国を知ってもらい、私が感動した経験や伝統的な文化を伝えていきたいと決心したのです。
AFRICLの理念について教えてください。
ホームページでは、「凛と生きるすべての人に笑顔のきっかけを」という理念を掲げています。国際協力の世界を志していた理由の1つに、どこの世界に生まれても笑顔で生きられる世界に一歩でも近づきたいというのがあります。でも、それはどういう状態なんだろうとずっと考えていました。人によって価値観は違いますからね。
そんなときに、心の底から笑っている瞬間はどこの世界に生まれた人でも幸せなんじゃないか、という当たり前のことを思いました。それならば、その人の暮らしを変えるとか、人生を変えるといった大層なことはできないけれど、AFRICLに関わる人たちが笑顔でいる時間を1秒でも増やせる存在になりたいというのが、活動の原点になります。
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