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2022.07.01

「女性を知る。社会を知る。自分を知る」ーー arca代表の辻愛沙子が伝えたい日本の社会課題

クリエイティブ・アクティビズムを掲げ、「社会性とパーパスを軸にしたコミュニケーション」と「世界観に拘るブランディング」の2つの軸で企業の課題解決を行う株式会社arca。2022年4月10日より、女性の健康や社会課題を明らかにし、その解決を目指す「Ladyknowsを自社事業の一環として再スタートさせた。
前回は2019年に実施した同プロジェクト。その後の約3年間で社会を取り巻く現状は大きく変わり、コロナ禍を経た現在も様々な課題や問題が日々議論されている。今回は株式会社arcaのCEO・辻 愛沙子さんに、再始動した「Ladyknows」の取り組みや女性の健康にまつわる社会課題の現状と未来について伺った。
PROFILE|プロフィール
辻 愛沙子
辻 愛沙子

株式会社arca CEO
「クリエイティブ・アクティビズム」を掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の2つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。
リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。
2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年秋より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

社会・事実を知ること

まず、株式会社arcaで展開されているLadyknowsはどのような経緯で立ち上がったのでしょうか。
元々のルーツを辿ると、その名の通り女性にまつわるknowsを社会に届けたかったことからスタートしました。それで、「女性を知る。社会を知る。自分を知る。」というキャッチコピーを掲げています。Ladyknowsには大きく分けてDataとVoice、Eventの3つのカテゴリがあり、それぞれキャッチコピーに基づいた活動をしています。
Ladyknowsは、女性のエンパワメントだけでなく、ジェンダーギャップに関する課題提起に力を入れています。ここ最近、相次ぐ企業炎上やフェムテックの台頭、選択的夫婦別姓の議論など、ビジネスから政治まで様々な領域で女性が抱える課題や女性蔑視から来る問題発言などが注目されています。しかしその一方で、広く取り上げられる話題にもかかわらず、ジェンダー差別の問題はそれぞれの主観で話をされがちです。たとえば「私は大丈夫」「僕は見たことがないから差別はない」というように、議論の中で不可視化されてしまう痛みや課題が存在するように思います。
このようにジェンダーのトピックは、立っている場所や視点で見える課題がまったく異なるため、男性と女性、家庭に入っている女性・働いている女性、生理が重い人・そうでない人といった不必要な対立構造が生まれてしまうことがとても多い。でも、実際に起こっている課題は二項対立ではなく、"社会の構造"自体に目を向けないと解決し得ない。どちらかが悪いのではなく、ステレオタイプを前提に成り立ってしまっている社会構造そのものをまず紐解いていく必要があると思うんです。ですから、まず一度、問題を俯瞰してみることが大切です。
そこで「社会・事実を知る」を伝えるところから始めるのが良いと考え、様々なジェンダーギャップにまつわるデータをまとめた「Data」のページを作りました。また、その一方で"データ"にしてしまうことで透明化されてしまう個々人の思いや人それぞれ形の違う痛みがあるのではと考え、より多様でリアルな「声」に重きをおいた「Voice」のページも同時に立ち上げました。そのように、寄りと引きの両方の目線で女性・社会を知るということをLadyknowsで挑戦しています。
Ladyknowsのサイトには様々な課題についてのデータが可視化されています。
データを元に現状を“引き”の目線で見るために、国税庁が出している民間の給与のグラフなどのファクトをまとめています。官公庁が出すデータは見づらかったり、読むのに時間がかかったりしますよね。私たちは普段クリエイティブの領域で仕事をしているチームなので、データを分かりやすくリデザインするのが、Ladyknowsの役割でもあるんです。一つひとつのデータを分かりやすくすることで社会全体の構造が「見える化」されると思っています。
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