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2020.09.30

アパレル特化SaaS「AYATORI」が起こす生産流通改革(前編)

いまなおアナログな業務が多いアパレル業界。特に、アパレル生産流通の原点であるものづくりの現場に関してはテクノロジーの活用事例は少なく、他業界と比べても大きく遅れてると言わざるを得ない。
アパレル特化型SaaS「AYATORI」を開発・提供する株式会社DeepValleyは、そんなアナログなサプライチェーンから脱却するべく挑戦を続けている企業の1つだ。
AYATORIは、生産管理業務に必須のデータと社内外とのコミュニケーションを一元管理できるプラットフォームサービス。AYATORI上にアップロードした縫製仕様書などを社内外の関係者に共有でき、チャット機能を使ったコミュニケーションが可能となっているため、従来の生産業務で頻発していたミスコミュニケーションや情報・進捗の共有漏れなどを未然に防ぐことができる。
アパレルとIT、2つの業界をバックグラウンドに持つDeepValley創業者・深谷玲人さんの経験と気づきから生まれたこのサービスは、凝り固まったアパレル業界の構造を解きほぐす可能性を秘めている。
さまざまなブランドの立ち上げに携わった深谷さんは、なぜIT業界に飛び込んだのか。2つの領域を渡ることで見えてきたアパレル業界の抱える課題とは何なのか。そして、AYATORIのサービスで実現したいこととは。深谷さんにお話を伺った。

アパレル業界を効率化する“アパレルものづくりのためのGitHub”

DeepValleyを創業されてから、アパレル生産管理プラットフォーム「AYATORI」のサービスを展開されています。改めてアパレル業界のデジタル化を目指す上で、生産管理にフォーカスした理由をお聞かせ下さい。
AYATORIは、一言で言うとアパレルものづくりのためのGitHub、あるいはものづくり用のLINEのような、業者間のコミュニケーションや情報の一元管理を支援するコラボレーションツールです。
この業界のサプライチェーンの図を見たことがある人はわかると思いますが、アパレル業界の構造は複雑に入り組んでしまっています。そのこんがらがった線を解きほぐして繋ぎ直して再構築したいという思いを込めて、AYATORIという名前にしました。
創業当時は、テクノロジーの力を使って効率的に売り上げをつくりだせるブランドを創出する支援事業などを行なっていたのですが、アパレル業界全体の効率化を図らなくてはならないという課題に直面しました。
この業界の効率化を阻んでいる最大の要因はものづくりの現場です。消費者も売り手もECを活用することを当たり前だと感じはじめている中、製造の現場だけがデジタル化に対応できておらず、旧態依然とした構造のままになってしまっています。他の企業で勤めていたときも、指示書の情報がデジタル化されていなかったために無駄な作業が多く発生していました。アナログになってしまっているものづくりの始点をデータ化できない限り、いずれこの業界は破綻しかねません。
この課題に取り組むことが、ものづくりとITの知識を併せ持つ我々の使命だと思っています。本当はブランドの創業支援をやりたいのですが、どうしてもここがボトルネックになってしまうので、ものづくりの効率化を実現するためのサポートシステムの開発を最優先に考えました。
これまでのAYATORIの導入実績を教えてください。
AYATORIは現在、無料プランと有料プランの2種類のプランを用意しており、それぞれあわせて約200のユーザーに利用していただいています。傾向としては、社員数の少ない少数精鋭の企業や他の業界からアパレル領域に参入された企業から問い合わせをいただくケースが最も多いですね。特にD2C系ブランドの方からは、アナログな製造工程の効率化についての相談をよくいただきます。ほかにも1社で複数のブランドを保有している大手企業などから各ブランドの管理ツールとして利用したいとお声かけいただいています。
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