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2022.09.12

「批判があれば大成功」車椅子ファッションから社会を変えるーーパリコレでショー開催に挑戦する「bottom’all」

私たちが普段着ている服は、だれにとっても着やすい服なのだろうか。そして、誰もがオシャレなファッションを楽しめているのだろうか。
たとえば、車椅子ユーザーの方にとっては、ボトムスを穿いたり、ワンピースを着たりする行動それ自体が負担になる。着脱が難しいがゆえに,お手洗いを利用することも難しい。つまり、流行のファッションは着脱が難しく、最初から選択肢にすらなっていないのが現状ではないかーー。
こうした気づきを得た平林景さんは、一般社団法人日本障がい者ファッション協会を立ち上げた。「福祉×オシャレで世の中の常識を変える」をモットーにファッションのデザインを根本から変えていくだけでなく、障がい者の就労支援も行い、社会の意識を変えることを目指している。
そこで今回、企業協賛やクラウドファウンディングを活用してパリコレウィーク期間中のファッションショー開催を控えている代表の平林さんにインタビューを行い、これまでの活動やファッションと社会のあるべき関係などを伺った。
PROFILE|プロフィール
平林 景(ひらばやし けい)
平林 景(ひらばやし けい)

美容師を経て 2004年、学校法人三幸学園に入社し教職に就く。その後2016年12月に起業し株式会社とっとリンクを設立し代表取締役に就任後、わずか2年で3店舗へ拡大し、現在は兵庫県尼崎市にて4つの放課後等デイサービスを経営。2019年11月には一般社団法人日本障がい者ファッション協会を設立し代表理事に就任すると、翌年2020 年にNext UD (Next Universal Design)ブランド bottom’all を展開。現在は講演活動やSNS発信を中心に啓蒙活動に励む。
近著として『先入観のタガをはずせ! ハンデがあるからうまくいく非常識な成功法則』を9/8に発売。

はじめに、日本障がい者ファッション協会を設立した経緯について教えてください。
きっかけは、知人から「パリのファッションショーで、車椅子の方がランウェイに出たのを見たことがない」と聞いたことです。実際に調べてみると、たしかに私が見た限り、その事例はすぐには見当たりませんでした。それなら、車椅子ユーザーなど障がいがある方でもショーに出られるファッションを作ったら、それが1番かっこいいのではないかと思いました。
そして、新たなファッションを生み出すとともに、「障がいがあるからできない」ではなく「障がいがあるからこそ生み出せる」というアクションが起こせたとき、世の中の価値観が大きくひっくり返るのではないかと考えました。
それなら大舞台のパリコレに、しかも車椅子で出ようと思い立ったわけです。そのためには仲間が必要なので、一般社団法人日本障がい者ファッション協会を立ち上げました。
「bottom’all(ボトモール)」を手掛けることになったきっかけと、ブランドに込めた想いについて教えてください。
車椅子ユーザーの方と話をするなかで着想を得ました。衝撃だったのは「おしゃれを諦めた」と言われたことです。実際問題として、お店に買い物に行ったとしても試着室に入ることができなかったり、着たいと思った服でも自分ひとりでは着にくいため、人の手を借りたりすることが多いと聞きました。
それならば、当事者の方が自由に着られる服を私たちが作ってしまえばいいと考えたのです。試行錯誤する日々でしたが、兵庫教育大学・小川修史研究室の学生と協力し、どのような構造なら着脱しやすく、おしゃれにみえるのかを議論していきました。そこで生まれたのが巻きスカートです。
デザインが決まると、次に問題になるのはネーミングです。男性だと「スカート」に抵抗感があると思うので、「ボトム」と「オール(全員)」を組みあわせた「bottom’all(ボトモール)」と名づけました。障がいがあってもなくても、男性でも女性でも、それこそ年齢も国籍もすべてを超えてみんなが着ることができるものという思いを込めています。
これまでの障がい者向けの衣服と比べたときの特徴を教えてください。
最初に強調しておきたい点として、私たちは「障がいがあってもおしゃれができる」という考えが好きではありません。そうではなく、逆に考えて「障がいがあるからこそかっこいい」ものが生まれると思っています。
たとえばユニバーサルデザインを考えたときに、確かに着やすい服はあります。ですが、それが本当に欲しい服なのか、着ていて楽しいと感じられるのかと問われると、正直イエスとは言いにくい。
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