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2021.12.22

とびきりの1着になるために:COHINAの成長戦略

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除され、外に出かける機会も少しずつ増えてきた。せっかく外に出かけるのであれば自分のサイズに合ったとびきりの洋服を着たい。コロナ禍前にはあまり感じなかった、そんな洋服への意識にも変化が出てきたように思う。
小柄女性にとって、自分に合った洋服を見つけることはそう簡単ではない。そんな女性をターゲットにしたアパレルブランド・COHINA(コヒナ)が今注目されている。
2018年に創業したCOHINAはコロナ禍を経て、現在に至るまで売り上げを伸ばし続け2021年には月商1億円を突破した。身長155cm前後の小柄女性をターゲットにした同ブランドが成功する鍵となったのは、創業当時より着目していたライブコマースにあった。そこではどんな取り組みがあったのか。株式会社newnのCOHINA代表・ディレクターの田中絢子さんにインタビューを行った。
PROFILE|プロフィール
田中 絢子
田中 絢子

COHINA 代表、ディレクター
1994年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。Google Japanに新卒入社し、代理店広告営業に従事する。2018年1月、自身の悩みに基づき、身長155cm前後の小柄女性のためのアパレルブランド「COHINA」を共同創業。同ブランドでディレクターを務める。

コロナ禍でも人は服を必要とする

まずはCOHINA立ち上げた経緯や、155cm以下にターゲットを絞った理由について教えてください。
私自身が148cmで小柄ゆえに洋服に悩んでいたことで、身長155cm以下をターゲットに絞ったアパレルブランドは需要があるのではないかと思ったのがきっかけにあります。「155cm以下」と聞くとニッチだと思われがちですが、始める前に市場リサーチをしてみると日本人女性の大体3割ほどがターゲット範囲だと分かったんです。
実際に周りの小柄女性たちにインタビューをしてみると、みんな口を揃えて「洋服に困っている」と言っていました。たとえば、自分で買い物に出かけたとしてもかわいい洋服を見つけるのではなく、着ることができる洋服を見つける“作業”になってしまっていると。本来、ファッションは楽しむためにあるものなのに、「身長が低いというだけでなぜ制限されてしまうんだろう」という想いが、私だけではなく小柄女性全般にもあることを知りました。そこで、同じ悩みがあるのであれば自分で洋服を作ってしまおう、と思い立ち上げたことが背景にあります。
COHINAはD2Cモデルでブランド展開をされてきていますが、店舗ではなくWEBを基軸にした理由はどんなところにありますか?
起業当時は大学生だったこともあり、店舗のノウハウや資金面で店舗販売の実現は難しく、コストやスキル、知識の面からWEB一択で考えておりました。当時は今ほど国内のEC市場も拡大していませんでしたが、海外ではEC化率は伸びていく一方でした。国内ではまだ主流ではなかったですが、それでもリスクの低さに比べたら、店舗展開よりもWEBの方が可能性があると思っていましたね。
コロナ禍でさらに利用者が増えたのですよね。
そうですね。コロナ禍では「お出かけしなくなったから、洋服が売れなくなった」と言われてはいますが、私たちのなかでは「それでも人は服は買う」という学びがありました。WEBで販売していた点は大きいと思いますが、私たちは「コロナ禍でも人は服を必要とするだろう」というのを前提としてやってきたんです。
また、ブランドの個性として続けてきた365日連続のインスタライブ配信が、コロナ禍においてお客さんとの結びつきをより、強くしてくれた気がしています。以前はオフィスから配信していましたが、在宅勤務になったため、それぞれのスタッフの自宅から配信するスタイルに切り替えたんです。これが不安要素ばかりで。オフィスで配信していたときは、コーディネート用の服や小物がすべて揃っていました。しかし自宅配信となると、それぞれのスタッフの自宅にサンプルを散らばせて送るため、組み合わせアイテムも揃わないし、手元にない場合もある。これではライブのクオリティが下がってしまう、というのが私たちの懸念でした。
ところが実際にやってみると、自宅にあるもので組み合わせアイテムをつくるというのはお客さんの立場に近く、リアルな提案ができるようになったんです。買ってきた洋服に自宅にある手持ちアイテムを合わせることって、普段の生活において、とても多いですよね。リアルな声を届けられたことで、「購買することに確信が持てました」と喜んでもらえました。きれいに商品を売ることに固執しないという気づきもあり、私たちとしてもライブ配信の内容を改めて見直すきっかけとなりましたね。
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#Social Commerce
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