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2022.02.04

産業構造問題を解決するサーキュラーエコノミー「コンシューマーコットンプロジェクト」

今、サステナブルは業界全体で重要なキーワードとなっているが、その多くは、プロダクトの生産や素材における環境への配慮で、生産だけではない回収や再生、再利用の方法に関しては消費者が参画しやすい取り組みは十分とはいえない。
そこで、コットンに注目し、サーキュラーエコノミーを実現するための「コンシューマーコットンプロジェクト」を立ち上げたのが、造形構想株式会社の峯村昇吾さんだ。今回、そのプロジェクトの概要と産業構造の改善に向けた課題を伺った。
PROFILE|プロフィール
峯村昇吾
峯村昇吾

サービスデザイナー
武蔵野美術大学大学院 造形構想研究科 造形構想専攻 修士二年
青山学院大学卒業後、新卒で繊維専門商社でテキスタイルの企画開発と営業に従事。2015年にFABRIC TOKYOに参画し、クリエイティブ統括後、BXデザイン、サービスデザインを担当。2020年10月1日デザインの日に造形構想株式会社を設立。

二次流通に着目したソーシャルマテリアル

まず、「コンシューマーコットンプロジェクト」について教えてください
「コンシューマーコットンプロジェクト」は、アパレル産業のサーキュラーエコノミーを促進させるソーシャルマテリアルのプロジェクトです。
具体的には、「コンシューマーコットンプロジェクト」はユーザーに対しては、コットン素材の古着を手放す際の「回収と選別」を担います。消費者が選別した上で再利用させるためのプラットフォームを生成し、消費者を循環型ルートに参画してもらえるようにします。
ブランドに対しては、消費者から回収し、不要になったコットン素材の古着を原材料とした、古着由来のサステナブルコットンを製造します。その際に、再び製品化した際には、マテリアルにNFCチップを搭載し、長く利用するためのケアや修理方法、服を手放す際の回収方法など、製品と利用者とのインタラクションを可能にします。現在はプロジェクトを設立した段階で、上記の試みを実装に向けて進めている段階です。
本プロジェクトの目的は大きく3つあります。1つめが消費者1人1人によるソーシャルイノベーション、2つめに新しい再生コットンを作り出すことで、サステナブルコットンの選択肢を拡張することです。そして最後にテクノロジーを付与してIoTのプロダクトによる利用体験によって顧客に価値を提供することです。このように、産業生態系を一巡する様なプロジェクトになっています。
コットンという素材になぜ注目されたのでしょうか?
まず、人権的な問題があります。コットンの主な生産地は、インドやエジプト、アメリカなどがありますが、たとえばインドのコットン農家の平均寿命は35歳くらいと言われています。
オーガニックコットンは1%ほどしかシェアがないので、ほとんどのコットンは農薬を使っています。農家の人たちは農薬を買うお金がないので、お金を借りなければならない。公的な機関からは借りれないので闇金からお金を借りてしまう。そこでお金を返せなくなって農薬を飲んで自殺してしまう人が後を断ちません。このような形で、コットン農家は30分に1人が自殺すると言われている産業でもあります。1次産業には、こんな闇があり、人権の面で大きな問題があります。
加えて、コットンは水をたくさん使用する素材になっています。ファッション産業の水使用料の9割はコットンです。1次産業の段階でいかに資源を使わないかという点は注目されていて、オーガニックコットンなど従来のコットンを改善する動きがありますが、より行うべきは2次流通だと思います。このような意味でも、コットンは非常に注目すべき素材です。
最後に、コットンは2次流通のルートがまだ確立されていない素材であることが大きな理由です。最近他社の再生プロジェクトが注目を浴びていますが、本来ならコットンはコットンで回収されるルートが必要です。
かといって、特定の素材を抽出するだけでは正しい循環にならないので、他の素材なら他社、コットンなら「コンシューマーコットンプロジェクト」といったように、それぞれの素材に合わせたルートがあるべきです。このような状況に向き合って、素材別にサーキュラーな仕組みがあると良いなと思ったことも、コットンを選んだ理由の1つです。
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#Sustainability
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