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2023.06.09

海洋ゴミをアップサイクルする:ECOALF

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品を購入する際、プラスチック袋が必要ならば購入しなければならないのが一般的だ。ファストフード店では、ストローが紙製のものに代替され、味が変わってしまったという不満の声も聞こえてくる。
事の発端は、海洋に漂流するプラスチックゴミだ。海の生態系に与える影響の高さが問題視され、プラスチックは環境への負荷が非常に高いものとして認知されてきた。
その問題に一早く取り組んできたのが、スペイン発祥のファッションブランド「ECOALF(エコアルフ)」だ。海洋ゴミを資源として再生したファッション製品を販売している、今世界各国から注目を浴びているブランドで、日本では株式会社三陽商会が誘致し、ジョイントベンチャーとして活動を行っている。
今回、ECOALFのブランド責任者である下川雅敏さんに、同ブランドの理念と日本での環境保護活動について伺った。
PROFILE|プロフィール
下川 雅敏
下川 雅敏

三陽商会 事業本部 コーポレートブランドビジネス部エコアルフ課長
兼 エコアルフ・ジャパン取締役

ライセンスブランドでのエリアマネージャー・トレーナー職を経て、ニューヨーク支社にて海外事業を経験。その後、セレクトショップ事業とマッキントッシュ ロンドンの企画MD に携わり、2020年3月の日本でのブランドローンチ前から現職に就任。国内におけるECOALF のブランディング・運営を担う。また、業界の垣根を越えた企業や行政との合同プロジェクトの開発や、国内で活躍しているクリエイター、著名人らとのコラボレーションを重ね、エコアルフ事業を展開しながら、未来に向けた消費行動の変革を起こすきっかけを作るために活動する。

日本にも世界最先端のサステナブルブランドを

最初に、三陽商会のサステナブルへの取り組みを教えてください。
弊社は総合アパレルメーカーで、20を超えるブランドを展開しています。これまではブランドごとにサステナビリティへの取り組みを行っていましたが、2018年に発表した「今後の成長戦略」の中で、会社の目指すべき方向性として「サステナビリティを意識した事業展開により持続可能な社会を目指す」ことを掲げました。
CO排出削減のためにアップサイクルやリテールビジネスを展開してきたのですが、その一環で新しいブランドの展開を模索していました。
そこで新たな軸として、ヨーロッパ発のサステナブルファッションブランドであるECOALFと協業し、2019年からジョイントベンチャーを発足させました。
ECOALFとは、どういったブランドなのでしょうか。
ECOALFは、2009年にスペインのマドリードで誕生したサステナブルファッションブランドです。ブランド名は、創業者ハビエル・ゴジェネーチェの息子であるアルフレッドとエコを掛け合わせたものです。
この背景には、ハビエルの強い思いがあります。息子が生まれたとき、自分が関わっているファッションビジネスが世界で2番目に環境を破壊していることに心を痛めたようです。自分の息子や次世代の子どもたちが過ごす地球を守るために、ECOALFを立ち上げたとのことです。
ECOALFの活動には、大きく2つの特徴があります。
1つは、販売されている商品のすべてがリサイクル素材や環境負荷の低い天然素材で作られていることです。ペットボトルやコーヒーかすなどをアップサイクルして、ファッションプロダクトとして生まれ変わります。
もう1つは、2015年からスタートした「Upcycling The Oceans」というプロジェクトです。こちらは漁師さんの協力のもと、海底に沈む海洋ゴミや海岸に漂着したゴミを回収して、それをもとに商品を作るという取り組みになります。
すべてのプロダクトに環境配慮の理念が反映されているのは驚きですね。
今では、ほとんどの企業さんが特定の素材に対するアップサイクルに取り組まれていると思います。その中でECOALFが注目されるのは、やはり調達から素材開発、プロダクトの製造、そして販売に至るまでを一貫して行っていることだと思います。
アップサイクルが浸透しない理由のひとつに、製品の価格が高いことやオシャレではないといったネガティブなことが指摘されています。ですが、エコアルフに関しては、豊富なデザインバリエーションや非常に魅力的な商品を展開している点が評価されています。

海洋ゴミもひとつの資源として

Upcycling The Oceansはどのような経緯からスタートしたのでしょうか。
きっかけは、ハビエルさんが3人の漁師さんと共に漁に出たことだったようです。その地域では、底引き網を使用しており、魚以上に海洋ゴミが引き上げられていることが問題になっていました。
この現実を目の当たりにしたハビエルさんは、なんとか回収して現状を広く世の中の人に知ってもらおうと考えました。しかも、それらを資源として使う取り組みによって、海をきれいにすることまでを視野に入れたのです。そこから漁船や港にストッカーを置くことで、海洋ゴミを回収する仕組みができました。
現在、この活動に賛同された方は世界中にいて、すでに6,000人近くの漁師さんと協働し、各国で同様の取り組みが展開されています。
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