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2021.08.04

自分でいるための装い: faleが描く現代のファッション

ファッションブランドによるバーチャル施策の事例も数多く登場しているなか、フィジカル/バーチャルを越境するファッションの在り方を提示するプロジェクトが始動した。2021年7月にデビューしたファッションブランド・faleは、これまで数多くのバーチャルファッションのプロジェクトを手がけてきたawai氏による新たな試みだ。
今回は、このfaleの背景にある思想について、ディレクターのawai氏とイラストレーターのBALANCE氏にインタビューを行った。
PROFILE|プロフィール
awai

文化ファッション大学院大学/ここのがっこうを卒業後、awaiとしてファッションブランドやVTuberの運営企業などへ、XRを中心としたデザインとエンジニアリングを提供する事業を開始。XRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」を運営するPsychic VR Labにも所属。2020年 デジタルファッションコレクティブ「Augmented Fashion Research」を立ち上げ。

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PROFILE|プロフィール
BALANCE

イラストレーター・キャラクターデザイナー
スマートフォンゲーム『白夜極光』キャラクター「ダイナ」をはじめ、様々なゲームやバーチャルYouTuberなどのキャラクターデザインやゲーム内イラストなどを手がける。

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フィジカル、デジタル、バーチャルを越境

まず、faleの概要について教えてください。
awaifaleはブランドであり、プロジェクトとも言えます。僕はもともと、個人でバーチャルファッション系のプロトタイピングを行ってきましたが、2020年にAFR(Augmented Fashion Research)というコレクティブを立ち上げました。そのコレクティブのメンバーを中心に作ったブランドであり、プロジェクトがfaleになります。
ブランドコンセプトには、「dividual」というキーワードに掲げています。多層化していく社会で「何者かになる」ためではなく、「自分でいる」ための装いをデザインする。それを実現する手段として、フィジカル(Physical)、デジタル(Digital)、バーチャル(Virtual) を越境的に活動することで、様々な人が自身の装い = 在り方を選択可能な状態にすることを目標としています。
「自分でいる」というコンセプトを表現していくとき、具体的には「フィジカルとバーチャルの越境」、「作り手と使い手の越境」という2つの表現方法を考えています。アバターやアイコンを選べることもファッションと定義できるし、作り手と使い手という境界を超えて、着用者が自身でカスタマイズしたり、リメイクをしたりという楽しさもファッションにはある。そのためにただ着るだけでなくカスタマイズできる洋服を届けたり、組み合わせることのできるアイテムの種類を増やすみたいなことをしています。
ユーザーが楽しむためのプラットフォームを提供する、それがリアルな服であると同時に、アバターに向けてのバーチャルファッションも提供していくんですね。
awaiそうですね。最初から全てをやるわけではないですが、アバター自体や、アバターに向けてのバーチャルファッションも見据えています。
現時点でもfaleのサイトでは、洋服のCLOファイルを無償で公開しているので、ダウンロードしていただければ、自身でアバターに合わせて改変していただくことも可能です。
今回、特にフィジカルに着用できる服からスタートしたのは、今までの僕の活動はバーチャルの印象が強いと思うのですが、僕らはそれだけがやりたいわけじゃなく、フィジカルも大事だし、好きで。その両方をやっていくというのが、今後に向けて大事なんじゃないかなと思ったところがあります。最も僕らがやりたくて、楽しいことは、両方が混ざってる状態だなと。そのために、まずはリアルな服をしっかり作る必要があったという感じです。

バーチャルファッションをニュートラルに

バーチャルファッションでの活動を積み重ねてきた経験が反映されていると感じる部分はありますか?
awaiコロナ禍以降、バーチャルファッションの事例は増えていますが、ゲームっぽさだったり、SF感やサイバー感だったりCGの質感を強調する方向性が多いなと感じています。普段 XR×ファションに興味のあるクライアントさんと話す際も、「既にXRを活用しているブランドさんは、SF・サイバー的な雰囲気と相性がいいけど、自分たちは相性が良くないのではないか」と懸念されることが多くて。だからこそ、バーチャルファッションをサイバーやSFのイメージから切り離して、何かニュートラルな状態でやりたいなと思っていました。そのために自分がコントロールできるブランドを立ち上げ、ユースケースを作っていきたいと考えていました。
また、XRも含めてIT業界に属して、実際にエンジニアリングやデザインをして見えたソフトウェアの思想も表現しています。コンポーネントごとに分けて組み合わせて作るとか、リリースした後に改善していく体制、アップデートし続けられる概念みたいなところです。
それに加えて、Vtuberなどののアパレルやグッズのデザインにも関わっていた経験から、いわゆるポップカルチャーでの二次創作の在り方にも強く影響を受けています。ソフトウェア的な発想、二次創作的な在り方は、ファッションではほとんどないんですよね。
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#Augmented Reality
#Virtual Reality
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