2021.11.03

プリ機から女子高生のトレンドを探求:フリューの“盛れ感”の研究

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ゲームセンターに必ず置いてあるプリントシール機(以下、プリ機)は、1995年の登場から現在まで人気は衰えず、若者文化の中心にあった。しかしながら、そのプリ機の機能自体は時代の変化とともに進化しつづけている。

プリ機を企画開発・製造・販売するフリュー株式会社も、その時代の変化に対応してきた。同社ではこれまでさまざまなプリ機を開発しているが、近年ではテクノロジー技術を活用した「未来のプリ機」の検証も行っている。そのプリ機はそれぞれのユーザーに対して「自分をわかってくれる」と思わせる“盛れ感”を提案するという、新たな体験価値を提供するものになっている。

そんな“盛り”をめぐる最先端の研究開発、またアプリでの写真加工やSNSでのフィルター機能が登場する今日のプリ機と”盛り”のシーンについて、フリュー株式会社・広報部の白石夏海さん、同社・ガールズ総合研究所の神野貴代さんに話を聞いていく。

PROFILE|プロフィール
神野貴代・白石夏海
神野貴代・白石夏海

白石夏海(右)
フリュー株式会社/広報部 
2012年にフリュー株式会社に新卒で入社。プリントシール機の広報に7年間従事し現在はコーポレート広報として自社のブランディング活動に携わる。

神野貴代(左)
フリュー株式会社/ガールズ総合研究所 
2015年にフリュー株式会社に新卒で入社。プリントシール機のソフトウェア開発、カメラアプリ開発を経て、現在はガールズ総合研究所にて5G通信やAI画像認識を用い、"未来のプリ"の研究を行っている。

個人認証で好みの盛り感を再提供する未来のプリ機”

御社では1997年にプリ機事業に参入して以降、さまざまなプリ機を開発しています。最近ではテクノロジー技術を活用した「未来のプリ機」があるとのことですが、こちらについて詳しく教えてください。
神野:

「未来のプリ機」は株式会社NTTドコモ様と提携した共同実証実験によって誕生した、5G通信とAI顔認証機能を搭載したプリ機です。

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神野:

こちらは『CAOLABO2』という元々あった機種の特別バージョンになります。通常の『CAOLABO2』ではデフォルトの機能として1枚目の写真から被写体の輪郭の形を読み取り提案する「おすすめのパーツバランス」と、自分好みの「肌の質感・仕上がりの雰囲気」を組み合わせた「盛れ感設定」で撮影ができる機能が搭載されています。

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神野:

『CAOLABO2』の特別バージョンとなる「未来のプリ機」では2回目の撮影時に個人認証を行うことで、撮影したことのあるユーザーかどうかを判定します。すでに撮影したことのあるユーザーであれば「また撮ってくれてありがとう」というテキストと、1回目の撮影で設定した「盛れ感設定」を反映するかどうかの選択ボタンを表示します。

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個人認証の仕組みはどのようになっているのでしょうか。
神野:

『CAOLABO2』特別バージョン機に5G通信を搭載しておりまして、1枚目の撮影画像をクラウド上のAI顔認証ソフトウェア「SAFR」に送信し、初回撮影かすでに撮影したことのあるユーザーかを識別するというものになります。

白石:

プリ機は一眼レフカメラで撮影を行い、その画像をパソコンで加工することによって盛ることができるのですが、その加工前の写真はどうしてもデータが重くなってしまうんですよね。なので、重たい元画像を5G通信によって外部出力しまして、クラウド上で個人認証し結果をすぐにプリ機で表示できるようしたのが今回の実験の内容となります。

この「未来のプリ機」を体験できるイベントも行われたんですよね。
神野:

はい。『CAOLABO2』特別バージョンを、弊社が運営するプリ機専門店『girls mignon(ガールズミニョン)名古屋オアシス21店』に設置し、実際にユーザーの皆様に撮影していただきました。2回以上撮影してくれた来場者の方からは「また撮ってくれてありがとう」というテキストと、前回の「盛れ感設定」を反映するかどうかの選択ボタンが表示されます。来場者の子達からも「覚えていてくれて嬉しい」「おもしろい」などの声をいただきました。これまでのプリ機になかった愛着や親しみが湧いてリピートに繋がると思っております。

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今回の共同実証実験は第2弾目になるようですね。第1弾も5G通信を活用した実験を行ったそうですが、どのような内容だったのでしょうか。
神野:

第1弾ではプリの携帯送信画像を高画質のまま届けるという実験を行いました。通常はプリ機の画像データをユーザーへ届ける際に、ユーザーの4Gスマートフォンのディスプレイの解像度にあわせて画像サイズを縮小したり、ユーザーの手元に短時間でお届けするために、画像を圧縮してデータサイズを小さくしたりと、さまざまな理由で画像の画質を落としてお送りしています。今後ユーザーのスマホが5G対応していく未来を見据え、プリントシール機に5G通信を搭載し、5Gスマホで携帯送信画像を見てもらうという実証実験を行いました。

そもそも、どのような経緯からNTTドコモとの共同実証実験に至ったのでしょうか。
神野:

まず前提として、フリューのプリ機ではNTTドコモ様の回線を長年使っておりまして、ビジネスパートナーとして共に若年層の思い出作りに貢献してきた経緯があります。

白石:

共同実証実験に至った経緯につきましては、それぞれの理由があります。NTTドコモ様の場合は5G通信というものがあるのに認知があまり拡がっておらず、どう普及させていくかが課題にあったようです。弊社の場合は5G通信の導入によって、現在プリ機の本体内で行っている処理の一部をクラウドにて行い本体の負荷を軽減したり、新たな処理・機能を追加できる期待がありました。ただ従来の限られたリソースに比べると、5G通信の導入には通信費やクラウド費用といったものが純増しますので、今回の共同実証実験では、どれだけの方が利用してくれそうか(利用してほしいという期待も含めて)費用対効果検証を検証するに至りました。

女子高生に寄り添い続けてきた“盛りの研究”

テクノロジー開発に並行して盛りの研究を一貫して行っているそうですが、具体的にどんなことを行っているのでしょうか?
白石:

プリ機の制作に携わる企画者や写り担当者が週に1度以上、開発中の写りや機能、最新トレンドについて女子高生と直接話す機会を設けています。プリ機を制作する際は企画者がコンセプトを考え、その企画を写り担当者が盛れ感に落とし込むのような流れになっています。企画者と写り担当者は女子高生の感覚や感性がわからないと彼女たちに寄り添った商品開発ができないので、定期的に女子高生からヒアリングを行い盛りの研究を行っています。

女子高生からのヒアリングはいつ頃から行っているのでしょうか?
白石:

弊社の参入時期となる1997年頃ですね。参入当時に作った機種が大失敗したことがあったんです。当時、女子高生から「こんな機種はいらない」なんて言われてしまい、大量の在庫を抱えてどうしたらどう直したらいいのかという状況のときにとあるお取引先様から「女子高生の意見を聞いたらどうですか」というアドバイスをいただき、そこからヒアリングを実施するようになりました。

企画者たちは元々かわいいものやトレンドを追いかけたりするのが得意なんですが、女子高生と週1回のペースで対話することで今の女子高生の気持ちにさらに近づけるみたいで、女子高生たちが好きなものがなんとなくわかってきますし、「次はこれがきそう」と思うものが予測できるようになるらしいんです。そんな担当者たちのことを社内では“マインドJK”と呼んでいます。プリ機は約1年かけて開発されるので、1年後のトレンドを常に予想しているんですよね。その結果大人になった今でも女子高生たちの心に響く商品を生み出せちゃうので、これはある意味すごい素質だと思っています。

常にその時々の最新トレンドを先読みしてきたなかで、盛りの意識や時代ごとの変化はありましたか?
白石:

かなりありましたね。今思うと加工がかなり強い2010年頃ですと顔が平面的、どこか少女漫画のような盛れ感になっています。それが2011年になると立体感が出てくるんです。弊社でいうと、ここが“盛れの転換期”といっています。2010年までは肌は白く・目は大きく・アイラインは黒ければいいという感じだったのですが、2011年からはナチュラルに自分らしく盛りたいという意識に変わった結果、顔に立体感を出すことによって盛るようになりました。

2013年になると肌の色味が変わってきます。それまでは黄色っぽい肌の方が安定して盛れるというのが主流だったのですが、この辺りになってくると青みっぽい、いわゆるブルベ肌が人気になってきました。

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白石:

2015年を超えると目が大きくなってくるんですよね。この辺りは画像加工アプリが非常に流行り始めた時期で、極端に顔を変えるというのが女子高生の間で流行っていました。そのため、プリ機に求める盛れ感も今までより強い加工を求めるようになりました。

2016-17年になってくると目鼻など顔のパーツはくっきりさせて、あとはふんわりさせる質感が求められるようになりました。近年はこれに加えて涙袋や瞳の潤い感などより細かな部分にまでこだわった盛れ感を提供するようになっています。

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白石:

プリは身近な人に自分を紹介するもの、可愛く見せるものだったのが、SNSの進化によって自分の世界観を表現するものに変わってきていると思います。InstagramやTikTokはありのままの自分を撮影するものではなく、ある程度演出して伝えるツールに変わってきていますよね。それによってプリ機も画像全体の雰囲気を盛れるように演出してあげる、というのがトレンドになっているんです。

近年スマートフォンでのカメラアプリやSNSのフィルター機能が発達していますが、プリ機やアプリに求めるものはそれぞれ違うということでしょうか。
神野:

盛れるという部分はどちらも変わらないとは思いますが、スマホでの撮影は背景を含めてその瞬間を収めるものだと思っていて、プリはあのフォトスタジオのような撮影空間を含めて楽しんでもらえるものだと思っています。また、加工アプリはライバルというより、盛り文化を一緒に高めあっていくものだと考えていますね。

これまでに加工アプリから影響された機能などはあったりするのでしょうか。
神野:

いま最も人気の機種『97%』では全体的にラベンダーテイストの仕上がりを推しているのですが、この画像全体に色がつくのはカメラアプリのトレンドを取り入れています。

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神野:

また、SNSへの投稿を見据えた機能を搭載した最新プリ機『猫と彼女。』という機種もあります。本機種では動画にプリ加工を施した『ネコカノ動画』をフリューとして初搭載しておりまして、“盛れ感”を動画で残したままインスタグラムのストーリーに投稿できるという待望の新機能となっています。

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広がるプリ機の可能性

最近ではプリ機の使い方も広がってきて、証明写真の撮影もできるようになっていると聞きました。
白石:

はい。証明プリというサービスも展開しておりまして、ストロボがついた写真館のような環境で一眼レフカメラで撮影した画像をほんの少し整えて印刷できるものになっています。『PURi BOX more』という機種では、人物の位置や大きさを調整したり、加工のレベルを2段階から選んで仕上がりを整えたりできます。印字サイズも数種類ご用意しておりまして、履歴書などで使うことも可能です。大体はプリ機と同じ金額で撮影できることが多いので、特に大人の方にはおすすめのサービスですね。

画像: 『PURi BOX more』で撮影した証明プリ
『PURi BOX more』で撮影した証明プリ
証明プリでもレベルに合わせた盛れ感を提供しているように、さまざまなサービスを展開されるなかで盛れ感をもっとも重視されていますよね。
白石:

プリ機でいうと、どの企業よりもその時代の女の子が求める盛れ感が提供できていることが弊社の一番の強みだと思っています。それができるのは1997年から女子高生の声に寄り添ってきたこと、あとは技術面を含めてお客様からいただいた声を実現できる体制が社内に整っている点も強みと考えています。

過去には女子高生から意見に「メイク機能のリップがズレてしまう」という声があったんです。顔の位置を自動認証してリップが付けられる機能なんですが、数年前は少し顔が横を向くなどしているとリップもずれてしまうケースがありまして。弊社のAIの画像認識を研究している部隊の努力の結果、今ではズレがほぼなくなり綺麗にリップがつけられるようになった事例があります。カラコンやアイブロウなどのメイク機能は2000年代から取り入れていますが日々進化していて肌馴染みも良くなっており、本当にメイクしているような加工ができるようになっているんです。

メイク機能のお話がでましたが、こういったARを活用したメイク機能は現在、コスメの販売での活用が進んでいますね。このような状況を踏まえると、EC連携のような展開も親和性があるように思えるのですが、そういったサービス展開は検討されていたりするのでしょうか?
白石:

お問い合わせいただくこともあり、弊社内でもチャンスがあるという認識はあるのですが、先ほどお話したように現状のプリ機内PCでは本来の機能にプラスした情報の処理が難しく、チャレンジできておりません。しかし関係各社様からもプリ機やマーケティングデータを活用した新しい展開に期待いただいておりますので、今後検討していけたらと思っております。

では最後に、今後の展望もお聞かせください。
白石:

これまでのプリ機はユーザーを特定することなく、その場での画像処理技術で盛れる写りを実現してきました。今回の実証実験のようにユーザーを特定することで、“未来のプリ”では過去のプリ機の利用履歴や操作履歴に基づき、より使いやすくユーザー本位なサービス・機能を提供することが可能となると考えています。

“未来のプリ”の実用化においては5G通信のエリア拡大および通信の安定性が必須であり、さらにはユーザーのお手元に5Gスマホが行き渡ることにより、プリントシール機とユーザーとの関係も変化するものと考えています。その広がりをみつつ、いつでもサービスインできるように実証実験などを繰り返し、可能性を広げておくことが必要だと考えております。

Text by Aya Hino

#BeautyTech
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