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2022.12.27

アイスブレイカーの【メリノウール】が長年愛され続ける理由とは?

ニュージーランド産の高品質なメリノウール製品で有名な、アウトドアウェアブランド「アイスブレーカー」。過酷な状況下でのパフォーマンスが求められるアウトドア業界において、天然素材の製品を主力としている稀有な存在なだけあり、彼らの独自の取り組みには常に注目が集まっている。
2022年秋には、ブランド史上最も細くてソフトな15.5μm(マイクロメートル)[1]の“スーパーファインメリノ 300ウェイト”素材を使用した新作インナーも発売し、テックウェアというものは何も化学繊維のものだけを指すものではない、ということを改めて示してくれた。
今回は株式会社ゴールドウインのアイスブレーカー事業部マネージャー・幸村大悟さんにお話をうかがい、アイスブレーカーというブランドを掘り下げながら、あらためてメリノウールの魅力について教えていただいた。

アウトドア大国からやってきたアイスブレーカー

日本と同様に海に囲まれ、起伏に富んだ雄大な大地を抱くニュージーランド。自然の宝庫として知られるこの国は、世界で愛されるアウトドアブランドをいくつも生み出し、世のアウトドア好きたちを魅了してきた。
「アイスブレーカー」もその数あるNZブランドのうちのひとつ。日本ではゴールドウインがディストリビューターを務めていることで、私たちも国内の至る所で商品を手に取ることができるわけだが、そもそもアイスブレーカーとはどんな背景を持つブランドなのか? 幸村さんに、まずはブランドの成り立ちについてうかがった。
「アイスブレーカーは1995年創業。グローバルで展開しているアウトドアブランドとしては、比較的新しいブランドだと言えます。
私たちの旗艦事業である『ザ・ノース・フェイス』はそれよりも倍近くの長い歴史を持ち、1960年代以降のバックパッキングブームで生まれたブランドです。特に1980年代から1990年代にかけてアウトドアのマーケットも成長してきたこともあり、常に繊維の開発によって高いパフォーマンスを求めて来ました。
その点アイスブレーカーは、最新の技術開発がアウトドア業界のベーシックであった時代に誕生した、自然素材を主としたブランド。そこに時代の差が現れているようで面白いですよね。
創業者であるジェレミームーンは、偶然メリノステーション(メリノウールの牧場)でメリノウールの魅力を知ることになり、日常からアウトドアまで快適な着心地を生む天然素材に将来性を感じてアウトドアウェアの事業を起こしたんです」
今では多くの人がメリノウールのインナーを着用しているが、当時は登山では化学繊維の速乾素材が最良の選択肢とされていたはず。それにも関わらず、メリノウールのインナーからスタートして世界で知られるブランドになったのは、先見の明がある、のひと言では片付けられないだろう。

メリノウールに見出した、自然由来のテクノロジー

そもそも“メリノウール”とはメリノ種の羊から採取されるウールのことで、繊維が太くて重い普通のウールと比べて繊維が細く、軽量なのが特徴。そのため細い糸を紡ぐことができ、結果としてウールなのに素肌に着てもチクチクすることなくしなやかな生地に仕上げることができる。
「メリノウールの性能は、アウトドアはもちろん日常着としても魅力的です。熱伝導率が低くて吸湿性も高いので汗冷えしにくいという特性もあり、高温多湿な日本の夏でもドライな状態をキープしてくれます。さらに、吸着熱が快適なコンデションを整えてくれる性質があるので、寒い冬では逆に保温機能を発揮します。
また、抗菌性があって汗の臭いを防いでくれるという点や、長く着続けていても不快感が少なく、結果として荷物の量をコンパクトにできるというのもアウトドアウェアとしては大きなメリットになっています」
何種類もの異なる細胞から成るウールの構造は、いわば自然のナノテクノロジー。化学繊維では再現不可能という話を聞くと、神様が与えてくれたギフトなのかとも思えてくる。
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