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2023.09.01

ビール製造の副産物から誕生した、サッポロビール「黒ラベル Malt & Hops JEANS」

デニムは、ジーンズやジャケット、バッグなど、さまざまなアパレル製品で活用されている。商品によって色味や風合いが異なる上、経年変化を楽しめることから、ファンが多い素材のひとつだ。
デニムには、一般的に綿糸が用いられるが、和紙で作った糸を使用しているものも存在する。そのような珍しい素材のデニムでオリジナルジーンズ「黒ラベル Malt & Hops JEANS」を作ったのは、サッポロビール株式会社だ。
加えて、ジーンズに使われている和紙の原料は、サッポロ生ビール黒ラベルを作るときに派生するモルトフィードや、ホップの茎や葉。これらのアップサイクルを通して、サステナビリティへの貢献と黒ラベル独自のブランド力の強化に取り組んでいる。
今回は、「黒ラベル Malt & Hops JEANS」が誕生したきっかけや製作工程について、サッポロビール株式会社の荒木さんと成瀬さんに話を伺った。
PROFILE|プロフィール
荒木 進之介
荒木 進之介

サッポロビール(株) ビール&RTD事業部
黒ラベルブランド担当

PROFILE|プロフィール
成瀬 史子
成瀬 史子

サッポロビール(株) 商品・技術イノベーション部

黒ラベルだけでなく、ジーンズ本来の魅力を盛り込んだ商品を

まず、サッポログループのサステナビリティ活動についてお聞かせください。
サッポログループでは、2022年11月にサステナビリティ重点課題を全面的に見直しました。
現在は、すべての事業が提供する「時間」と「空間」で、人々と地域社会のWell-beingに貢献することを目的とし、「脱炭素社会の実現」「地域との共栄」「多様な人財の活躍」の3点を重点課題として掲げています。
各課題において具体的な指標や目標を設定し、実現に向けて取り組んでいるところです。
今回のジーンズ製作も、サステナビリティ活動の一環ですよね。製造を始めたきっかけを教えてください。
ビールを製造する過程で生じるモルトフィードや、ホップの茎や葉をアップサイクル(高付加価値化)する方法はないか、と考えていたのがきっかけです。これらは飼料や肥料として100%ダウンサイクル(再資源化)しているのですが、昨今の情勢もあり、他の活用方法を模索していました。
何かいい案がないかと考えているときに出会ったのが、沖縄県でサトウキビのアップサイクルに取り組んでいる「Curelabo社」でした。
Curelabo社は、サトウキビを圧搾したときに派生する繊維部分(バガス)を原料とした、アパレル用素材の販売や製品製造を行っている会社です。連携しているブランド「SHIMA DENIM WORKS」では、デニム製品への加工も行っていたため、その技術をもとにビールの副産物を使用したデニム製品を作ることになりました。
これが、2021年7月のことです。そこから約9ヶ月かけて、「黒ラベル Malt & Hops JEANS」の商品化に至りました。
ビールメーカーが作るジーンズとして、製作時にこだわったことはありますか。
こだわったのは、単にアップサイクルしたり、サッポロ生ビール黒ラベルのブランド色を打ち出したりするだけでなく、ジーンズ本来の魅力もきちんと追求したところです。「そもそもジーンズとしてかっこよくなければ、黒ラベルファンのお客様の期待には応えられない」という考えがありました。
ベースとなるデザインをかっこいいと思えるものにした上で、黒ラベルのロゴやビールに関わるデザインをあしらっています。
トップボタンには、黒ラベルのシンボルである星マークと、サッポロビールの原点である「開拓使麦酒醸造所」の開業年を表記。
その他にも、リベットは麦の穂をモチーフにしたり、レザーパッチには黒ラベルのロゴと、原料であるモルトフィード(Malt)とホップ(Hops)の文字を刻印したりと、細部までオリジナリティあふれるデザインで仕上げています。
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