建築とテキスタイルの関係は、美学と機能性の完璧な融合を示す魅力的な世界です。
環境への配慮、美しさ、機能性の完璧な結びつきを探求し、建築の新たな可能性を開拓するMaud Caubet氏。今回、彼女が建築の世界でどのように革新的なアプローチを追求しているのか、語っていただいた。
PROFILE|プロフィール
Maud Caubet(モード・コーベ)
パリ生まれ。2003年国立建築学校Paris-La Villette大学院修了。2006年Maud Caubet Architectes事務所設立。Origine(ナンテール市):G20 Iconic Sustainable Buildingsを受賞。Les SHEDS(パンタン市): 文化部門でRethinking The Future Awards 2023を受賞。Rachine(パリ12区):現在進行中プロジェクト部門でNuit de l’immo 2023を受賞。2022年よりフランス建築アカデミー会員。
どのような建築スタイルやアプローチを取られているのですか。
プロジェクトを立ち上げる際に、明確なガイドラインを持つことは非常に重要です。それらのガイドラインは、私たち自身の価値観と信念に根差しています。私の信念はシンプルです。プロジェクトがその場所の本質や特性に調和することを想像することです。リノベーションが必要な建物や場所は、それぞれ独自の歴史や文脈を持っています。地域に存在する資材、日々の習慣、そして誰がその場所を利用するのか、将来的な変遷に対する洞察を大切にします。どの要素を保持し、どの部分を進化に適応させるかを検討します。
私のアプローチは「スタイル」にとらわれず、むしろ心構えに焦点を当てています。それは、地理学者が気候や地形、自然環境を分析し、生物学者が生態系や相互作用を研究する方法に似ています。そして、私たちは芸術家のように全体を飛躍させ、美しさを追求します。これは完全に包括的なアプローチであり、ホリスティックな方法です。
過去のプロジェクトで特に印象的だったものはありますか。
私が15年以上前に設立した事務所では、さまざまな規模やテーマのプロジェクトに取り組んでいます。住宅、オフィス、都市型高齢者施設、文化施設など、多岐にわたります。これらのプロジェクトの多くは、人口密度の高い都市部で展開されており、一方でゆったりとした田舎の環境にも関わっています。私はクライアントに対して、それらが夢や創造性、躍動感を提供する限り、どんなプロジェクトでも興味深いものだと伝えています。その中でも特に印象的だったのは、「Origine」というオフィスと住宅の複合施設です。このプロジェクトは、パリのオフィス街であるラデファンス地区に位置し、世界中から集まった40以上の競合プロジェクトの中から選ばれました。当時、私たちは若手事務所であり、新規参入者として参加しましたが、信念と情熱を持ってこのプロジェクトに挑みました。
「Origine」は、自然からのインスピレーションを受け、一部の木造を含み、全体的にオーガニックなデザインが特徴です。この大規模なプロジェクトには、託児所、住宅、オフィスが含まれており、都市の中に真の都会的なコミュニティを形成しています。建物は広大な中庭を取り囲むように配置され、誰もがアクセスできる開放的な中庭が魅力のひとつです。エントランスは、 安心感のある空間として演出し、自然光がガラスレンズによって彫刻を照らし出すように工夫されています。
「Origine」は環境に配慮したデザインとして多くの賞を獲得し、G20でもっとも持続可能なプロジェクトとして認知されました。このプロジェクトは4年の歳月をかけて完成し、素晴らしい成果をもたらしたチームに誇りを感じています。
建築分野におけるテキスタイルの存在についてお考えをお聞かせください。
テキスタイルは建築分野において不可欠な要素のひとつです。建築とテキスタイルは切っても切り離せない関係にあり、テキスタイルの存在は私たちの生活に深く根付いています。テキスタイルは避難所としても使用され、人々を守り、安心感を提供します。その家庭的な温かさと包容力は、私たちの生活に欠かせないものです。私たちは、アコースティックパネルから景観のデザイン、日除け、間仕切りなど、さまざまな用途でテキスタイルを活用しています。個人的に、私はこの素材に魅了されています。テキスタイルは動線や用途、陽光の動きに柔軟に対応し、その繊細さは空間に品格と魅力をもたらします。テキスタイルは建築の一部ではなく、建築と共に調和する不可欠な要素であり、その美しさと実用性は私たちの空間に深い意味を与えています。