2022.11.15

今、ふんどしが新しい! グッドデザイン賞を受賞した 「sharefun(しゃれふん)」が作る未来

今、日本古来の下着である“ふんどし”が再注目されている。その人気は俳優やタレントも愛用するなど、徐々にその輪が広がっている。そんななか、カラダと心をゆるめる新しいふんどし「sharefun(しゃれふん)」が爆発的に売り上げを伸ばしている。そこで今回は「sharefun」の開発者でもあり、日本ふんどし協会の会長を務める中川ケイジさんに、ふんどしの魅力や「sharefun」の人気の秘訣を伺ってきた。

紐を結ぶという行為が“ONとOFF”を切り替えるスイッチに

日本特有の文化であり、伝統的な下着といえば“ふんどし”である。

その“ふんどし”がにわかに注目を集めているのをご存じだろうか。その仕掛け人が「sharefun(しゃれふん)」や「ととのうパンツ」を手掛けた、中川ケイジさんだ。今や日本ふんどし協会の会長を務めるほど“ふんどし”の普及に力を注いでいる。

中川さんが“ふんどし”に興味を持ったのは、自身の体験がきっかけだった。
 
「僕が“ふんどし”に興味を持ったのは、2011年に自分が仕事の悩みから“うつ”になったのがきっかけでした。たまたま、自分の尊敬する先輩から“普通のパンツからふんどしに替えたら男性的にも、精神的にもすごく元気になった”と、楽しそうに話しているのを聞きまして。それで自分も試してみたいなと思いました」
 
ちょうど、その時期は日本古来の汗取り下着であるステテコが人気を集め、リラックスウェアに変換されていた時期だった。中川さんはふんどしを手に入れようとしたが、百貨店でも店員さんに言ってはじめて引き出しから出してくるぐらいしか流通していなかったそう。しかも、赤か白かの越中ふんどしのみ販売している状況だった。

画像: 中川さんが考案した「sharefun」は締め付けず、開放感があることからリラックスウェアとして女性に人気を得ている
中川さんが考案した「sharefun」は締め付けず、開放感があることからリラックスウェアとして女性に人気を得ている

「自分は赤い麻素材の越中ふんどしを購入しました。初めて穿いた時“なんでこんな快適なものを誰も知らないんだろう”と不思議に思うほど心地よくて。ふんどしを穿いた日はうつと診断されて以来、はじめてぐっすりと眠れました」
 
中川さんが後々気づいたのは、ふんどしの紐を結ぶというひと手間が、うつの改善に繋がったそうだ。
 
「日常生活の中に、パンツを穿くという行為しかなかったものが、紐を結ぶという動作でしっかりと“ONとOFF”を切り替えられるようになったのです。紐を結ぶという行為自体が、後から調べると柔道着の帯を丹田の部分で結ぶように、日本古来の所作の良さや気を引き締めるという行為に繋がったのかなと思います」
 
中川さん曰く、働きすぎてメンタルがしんどい時は、すべての行動がルーティーンになってしまい、何か新しいことを始めるということが無いそうだ。そこにふんどしを穿くという行為をプラスしたことで、うつも順調に回復していったとのこと。

「Share Fun(シェアファン)」と「2月14日(ふんどしの日)」という奇跡

 仕事でうつになり、リストラされた中川さん。何か新しいことを始めなければいけないターニングポイントとなった。そこで自分が興味のあるものは何だろうと考えたときに、偶然にも目の前に“ふんどし”があったのだ。そこで開発したのが「Sharefun(しゃれふん)」だった。

画像: もっこふんどしの形を元に生み出された「sharefun(しゃれふん)」。片側を紐で結ぶことで調節するという。「ゆるめるために、しめるふんどし」というキャッチコピーがピッタリのウエアだ。素材には国産のオーガニックコットンのガーゼ素材。そして、肌にストレスを感じさせない縫製にもこだわっている
もっこふんどしの形を元に生み出された「sharefun(しゃれふん)」。片側を紐で結ぶことで調節するという。「ゆるめるために、しめるふんどし」というキャッチコピーがピッタリのウエアだ。素材には国産のオーガニックコットンのガーゼ素材。そして、肌にストレスを感じさせない縫製にもこだわっている

「まずふんどしを広めるには、ふんどしという堅苦しいものを崩すネーミングが必要だなと思いました。お洒落なネーミングで……おしゃれなふんどし……、しゃれたふんどし……と冗談みたいな感じで人が呼びやすいような名前を思いついたのが“しゃれふん”でした(笑)。

ただ、ひらがなだとカッコ悪いので、アルファベットに替えて“sharefun”になったんです。そこから、自分でパワポで作ったロゴと企画書でスタートしたんです。
 
後々、友人から『このネーミングって“Share Fun(シェア ファン)”ってことで、ふんどしを広めたいところからのダブルミーニングやったんやね』と言われて、まぁそうやで……みたいに答えましたけど(笑)。もちろん、海外の人にも、ふんどしの快適さと楽しさを知って欲しいので、自分がダブルミーニングを思い付いたように語っていますけどね」
 
起業した中川さん、仕事を辞めたばかりだったので、とにかくお金がなかった。30万円というお金を有効活用するべく、まず行ったのがオンラインサイトの立ち上げと記念日の登録だった。
 
「当時、記念日協会に7万円(当時の登録料。現在は1件15万円)を使って登録すると、公式の記念日になります。“ふんどし”という語呂で『2月14日(ふんどし)』を公式に“ふんどしの日”として登録しました。実はメディアの方々は、記念日協会に登録された公式な記念日を見て、取材を申し込んできます。偶然にもバレンタインデーに重なったのは、そんな計算も見越してのことでしたね」
 
当時はオンラインサイトの立ち上げにもお金がかかったので、そこに20万円を投資。残りの3万円で、売れたら還元するので一緒にリスクを持ってくれないかと生産工場に頼み込んで『sharefun』を作ってもらったそうだ。
 
「『sharefun』が『Share Fun』になったのと、“2月14日”が“ふんどしの日”になったのは本当にラッキーでした。毎年バレンタインデーの日に、必ずどこかのテレビ番組などから取材が来るようになりました。

バレンタインデーはチョコの話がメインになりがちだが、変わり種として目に留まることも多く、夏にしか注目されなかったものが冬にも注目され、それが普及にもなるし、しかも時期的にギフト需要としても紹介されるように。これを日本ふんどし協会では“ふんどしの奇跡”と呼んでいます(笑)」
 
ふんどしの特徴は鼠径部を締め付けないことで、血の巡りを良くすることだと語る中川さん。「sharefun」のこだわりをこう語ってくれた。
 
「『sharefun』は“もっこふんどし”という形で、普通にパンツを穿くように足を通してもらい、ウエストはゴムが入ってないので、片方のサイドで紐を結んで調節するのがデザイン的な特徴です。またふんどしを愛用される方はアトピーなど皮膚に疾患を抱えている人も多いので、縫い目をシームレスにしたり、タグを外側に着けたり、生地の折り目の段差もなるべく肌に干渉しないような縫製を心掛けています。

もちろん生地には国産のオーガニックコットンのガーゼ素材を使用しているので、環境にも優しいんですよ。またふんどしの特徴は、鼠径部を締め付けないことでリンパや血流の流れを良くすることだったり、鼠径部がピタッとしてないことで、風通しを良くしデリケートゾーンが蒸れず、清潔に保ってくれるんです」

画像: 「sharefun」では肌にトラブルを抱える人がストレスを感じないように縫い目を内側に入れるなど、随所に工夫が散りばめられている
「sharefun」では肌にトラブルを抱える人がストレスを感じないように縫い目を内側に入れるなど、随所に工夫が散りばめられている

自身の経験から、ふんどしに挑戦する人は、何かしらトラブルを抱えている人が多いと語る中川さん。
 
「例えば、人には言えないかゆみがあるとか、生地で擦れて肌が荒れてしまったりとか、ふんどしに辿り着く人は何かしらトラブルがあるんです。だから作りの面でも生地でも妥協はできないなと思いますね」
 
そんなプロダクトへのこだわりが評価された「sharefun」。肌あたりの良いオーガニックコットンのガーゼ素材を内側に使用し、縫い代の当たりなく縫製をした構造的な面から2022年度のグッドデザイン賞を獲得。またソーシャルプロダクツアワードのソーシャルプロダクツ賞も受賞している
 
中川さん曰く、「sharefun」などのプロダクトは、製造過程や発送面なども評価されているという。

実は「sharefun」は2011年3月11日の東日本大震災で被災した福島や岩手などの工場で生産されており、商品の発送も福祉議場所を通じて、障害を持っていたり、うつで働けなくなった人に依頼しているとのこと。グッドデザイン賞やソーシャルプロダクツアワードの受賞は、そういった社会的貢献も含めての評価というところを忘れてはならない。

画像: 「sharefun」などのプロダクトの生産は、東日本大震災で被災した福島や岩手の工場に依頼している。工場で働くおばあちゃんもいい顔をしている
「sharefun」などのプロダクトの生産は、東日本大震災で被災した福島や岩手の工場に依頼している。工場で働くおばあちゃんもいい顔をしている

「自分も阪神大震災と東日本大震災、そしてうつを経験しているから、被災したり苦しんでいる方たちが、ふんどしをきっかけにもう一度頑張る! みたいなことが理想ですよね。でも、現場の話では“今、ふんどしの仕事が忙しくて……”“なにそれ、ふんどしって”みたいな感じで盛り上がっているみたいですよ(笑)」

日本ふんどし協会が見据える、ふんどしの未来

「sharefun(しゃれふん)」も継続的に人気ながら、今、爆発的人気を誇っているのが「ととのうパンツ」だ。見た目は普通のショートパンツだが、中にインナーが備え付けられており、そのインナーをふんどしのような構造にすることで鼠径部の締め付けをなくし、リラックス感を得るというものだ。

画像: サウナのあと穿くショーツとしてヒット中の「ととのうパンツ」。表地はシアサッカーで、ウエストのゴムも通常のサイズよりも、ひとサイズ大きなゴムを使用しているので、締め付けがない。タグもシンプルで潔いデザインでお洒落
サウナのあと穿くショーツとしてヒット中の「ととのうパンツ」。表地はシアサッカーで、ウエストのゴムも通常のサイズよりも、ひとサイズ大きなゴムを使用しているので、締め付けがない。タグもシンプルで潔いデザインでお洒落

「自分はパタゴニアのバギーズというショートパンツを気に入って穿いていました。ただ、インナーの構造上、少し締め付けがあるので寝るときに穿くのは快適ではなかったんです。そのインナーの構造をふんどしのような形にすることで、本当にノーパンのような履き心地のショートパンツが実現したんです」

画像: 「ととのうパンツ」は裏返したらインナーがこんな構造に。通常のスイムパンツなどはインナーがピタッとしているが「ととのうパンツ」は締め付けないので、快適なのだ
「ととのうパンツ」は裏返したらインナーがこんな構造に。通常のスイムパンツなどはインナーがピタッとしているが「ととのうパンツ」は締め付けないので、快適なのだ

コロナ禍によるテレワークが浸透したことで、家で仕事をする機会も多くなった。ところがインナーのあるショートパンツを穿いて椅子に座ると、どうしても蒸れてしまう。しかし、ふんどし構造のインナーを備えた「ととのうパンツ」なら、椅子に座っても蒸れずに快適ということから、爆発的な人気を呼んだ。そして、人気を決定的にしたのはサウナの存在だった。
 
「サウナでととのうと、本当はパンツも穿きたくなくなるぐらいの気持ちになりますが、そうもいきません。でも、これなら歩くだけで風が通るので、外にいるのにノーパンみたいな感覚になるんです。今、SNSで『#実はノーパンです』というハッシュタグを盛り上げるキャンペーンを行っています。『ととのうパンツ』を穿いてくれている人がSNSにたくさんアップしてくれているので、かなり盛り上がっていますよ」

画像: 「ととのうパンツ」のインナーの股部分は、ふんどしを穿いたときのような構造に。鼠径部を圧迫せず、血流と風通しを良くしてくれる。パンツの愛用者が投稿した「#実はノーパンです」というハッシュタグもSNSで盛り上がっている
「ととのうパンツ」のインナーの股部分は、ふんどしを穿いたときのような構造に。鼠径部を圧迫せず、血流と風通しを良くしてくれる。パンツの愛用者が投稿した「#実はノーパンです」というハッシュタグもSNSで盛り上がっている

この盛り上がりは、芸能界にも波及している。伊勢丹のポップアップショップで購入してくれた阿部サダヲさんが、ラジオや情報番組でおすすめしてくれたとか。
 
「そこから赤江珠緒さんと博多大吉さんがパーソナリティを務めるTBSラジオ『たまむすび』やバナナマンの設楽さんやメイン司会を務めるフジテレビの『ノンストップ! NONSTOP!』でも紹介してもらえて、そこから阿部さんファンやバナナマンファンの方々はもちろん、徐々に芸能界へ広がってきましたね」
 
中川さんのふんどしへのこだわりは尽きることはない。

現在は、全国各地にあるふんどしブランドに声をかけ、「日本ふんどし協会」の会長としても、中立的な立場から普及活動に取り組んでいる。そして、ふんどしを盛り上げるため、毎年普及活動に貢献した著名人に「ベストフンドシストアワード」を贈っているそうだ。現に、2017年度には菅田将暉さん、2019年度には斎藤工さんが受賞している。
 
「日本ふんどし協会として普及活動への貢献は本当にありがたいことです。僕自身が、色々調べて、盛り上げた方の事務所へ連絡し“ベストフンドシストアワード”を受賞しましたが、受けますか、受けませんか、どうしますか……というやり取りをさせてもらっています(笑)。先方からしたらびっくりするでしょうね」
 
また会長としては、日本を代表する精神科医が集う「日本うつ学会」の講演会にゲストで参加し、自身のふんどし着用の体験から“就寝時、股間の体温の低下が熟睡に繋がる”と発表し、着用のデモンストレーションも行ったという。
 
そんな中川さんに「sharefun」や「ととのうパンツ」、そして、ふんどしの未来を伺ってみた。
 
「今『ととのうパンツ』への反応が非常にいい感じです。実はパジャマになるようにパンツとセットアップでシャツなども販売しているので、下着だけでなくライフスタイルのブランドになりつつあります。

ロングパンツの販売も始まると夏だけでなく秋冬も穿けるようになるので24時間のうちにほとんどの時間がノーパンになる時間が増えていくのは面白いですよね。来年はキッズ用の『ととのうパンツ』も計画中なので、ふんどし体験をすることが、年齢や性別を超えた“新たな価値”になってもらえればなと思っています。

画像: 締め付けない解放感はそのままに、今度はロングパンツも登場。現在、クラウドファンディングサービス『makuake』に挑戦中で、初日にいきなり600万円も協賛金が集まるほどの人気ぶり。2022年12月30日まで挑戦中だ
締め付けない解放感はそのままに、今度はロングパンツも登場。現在、クラウドファンディングサービス『makuake』に挑戦中で、初日にいきなり600万円も協賛金が集まるほどの人気ぶり。2022年12月30日まで挑戦中だ

これからインバウンドも増えてくると思います。そこで、ふんどしはメイド・イン・ジャパンの商品なので日本のお土産として、海外から来た方たちに見せられるようなヴィジュアルなどを作ってく必要があるなと考えています。
 
ふんどしを日本のリラックスウェアとして打ち出して、彼ら(海外からの旅行者)がどんな反応をするのかをテストしてみたいですね。ただきっと受け入れてくれる可能性はあると思います。だってふんどしは、本当に心地よいものだから」

PROFILE|プロフィール
中川ケイジ(なかがわ けいじ)
中川ケイジ(なかがわ けいじ)

一般社団法人日本ふんどし協会会長。有限会社プラスチャーミング代表取締役。1976年、兵庫県生まれ。大学卒業後、美容師に。その後コンサル会社に転職するも、営業成績が悪く思い悩み、うつ病に。その時たまたま出会った「ふんどし」の快適さに感動。そこからふんどしで日本を元気にするという使命感が芽生え独立し、ふんどしブランド「sharefun(しゃれふん)」をスタート。同時に「日本ふんどし協会」設立。2月14日を「ふんどしの日」と制定したり、ベストフンドシスト賞を発表するなど、斬新で体当たりな普及活動が話題。

Text by Yasuyuki Ushijima

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