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2022.12.28

多様な身体のためのファッションを諦めないSOLITの挑戦

ファッションと身体は切り離せない関係にある。しかし、世の中に溢れているファッションは果たして全ての身体に適応できているだろうか?本当に、S、M、Lなど規定のサイズで事足りるのだろうか?
そんな問題に根本から取り組むのが、ファッションブランド「SOLIT!」を運営するSOLIT株式会社だ。SOLITはオール・インクルーシブな社会の実現を目指し、多様な身体を持つ人々に完全受注生産のファッションプロダクトを提供している。
そこで今回、SOLIT代表取締役の田中美咲さんに、多様な身体のためのファッションを可能にするための工夫や課題についてインタビューを行った。
PROFILE|プロフィール
田中美咲
田中美咲

SOLIT株式会社 代表取締役
1988年奈良県生まれ。2018年2月より社会課題解決に特化したPR会社である株式会社morning after cutting my hair創設、代表取締役。2020年9月より「オール・インクルーシブ経済圏」を実現すべくSOLIT株式会社を創設、代表取締役CEO。世界3大デザインアワード「iF DESIGN AWARD 2022」にて最優秀賞GOLDを受賞。

ファッションを楽しむために

SOLITを立ち上げた経緯について教えてください
原体験として、自分自身が日本におけるプラスサイズの体型だったことがあります。私は「本当はかわいい服が着たいけれど自分の体で着られない」など、試着室に持って着ようとしたときにコンプレックスを感じてしまっていました。
この時は「この服を着るために私は痩せなければならない」「可愛くならなければならない」といった社会的なプレッシャーを感じていたと思います。つまり、ファッションを楽しんだ経験があまりなかったのです。
そんな中で、最近まで大学院に通い直していたのですが、同級生には元車椅子バスケの選手や、信仰上着られない服がある方がいらっしゃいました。このように、障害や宗教、セクシュアリティといった、自分の性格や好み、自己表現ではない理由でファッションの選択肢が制限されている人々がいることを知りました。
それと同時に、私は気候変動や自然災害に関する非営利団体を運営していたこともあり、ファッション産業が大量生産大量消費、人権問題などの課題を多く抱えていることも知っていました。
一方ではある地域では服が大量にあることによって困っている人たちがいて、また一方ではある地域では着られる服がなくて困っている人々がいらっしゃったんです。この問題意識が立ち上げに繋がっていきました。
これまでは環境系の非営利団体にいらっしゃったとのことですが、ファッションに関する試みはどのように始められたのですか?
当初は、ファッションに関することを何も知りませんでした。そこで、友人の中からファッションに携わっている人を探して、そこから生産管理やパターンができる方を紹介してもらいました。途中からSNSなどを活用して共感いただいた人々を募り、徐々に人が集まるようになり、今はほぼ全員プロボノで40名ほどの組織になっています。
現時点でどういった方がご利用になられたのでしょうか?
サービスを始めた当初は、身体に障害のある方や、セクシュアルマイノリティの方などが利用してくださっていました。このような方々は、今まさに課題を感じている方であることが多かったです。 たとえば、脊髄損傷で指が動きにくい方がいらっしゃいます。そういう方はボタンの着脱という行為がしにくいことがあります。なので、彼らにとってボタンのある服は選択肢から無くなってしまいます。
セクシュアルマイノリティの方で生物学的には女性ですが、胸を目立たせたくないとか、ヒラヒラしたかわいらしい服やピンク色の服を着たくないという方がいらっしゃいます。そういう方にとって、ウェストがシェイプされていたり、胸元が大きくなっている従来の”女性向け”の服は価値観の押し付けや、違和感を助長させます。SOLIT!をご利用いただくみなさんは、既存のファッションの仕組みに苦しさを感じています。そのような方々の課題解決のためにもSOLIT!の服はあります。
設立してして2年経ちますが、徐々にスペシャルニーズの方だけではなくて、「実はゴルフをやっていて左腕だけ筋肉質なんです」とか、「実は下半身が太り始めているからウェストがゴムでかっこいい服がほしい」など、ちょっと気になることがある方にもSOLIT!を求めていただいています。
SOLITが独自開発したマグネットボタン、指に麻痺があったり、四肢欠損している人でもボタンの着脱がしやすくなっている
SOLITが独自開発したマグネットボタン、指に麻痺があったり、四肢欠損している人でもボタンの着脱がしやすくなっている
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#Sustainability
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