ファッション業界は、環境負荷が高いことで知られている。だからこそ、各メーカーやアパレルブランドは、サステナブルな社会の実現に向けて素材の改良やリサイクルに力を入れてきた。
そのようななか、台東区に鞄づくりを専門に行うブランドがある。それが
TheContainerShopだ。鞄づくりにおいて、極力生地の無駄が出ないように設計されたデザインを掲げ、まずは自分たちのできることからサステナブルに取り組もうという思いで立ち上がったようだ。
今回、代表の小林保治さんにお話を伺い、ファクトリーブランドの設立経緯や鞄づくりの理念を語っていただいた。
PROFILE|プロフィール
小林 保治(こばやし やすはる)
アパレル関係でボタンなどの服飾資材の営業を経て独立。
セレクトショップなどのOEM商品などの製造と企画に20年ほど携わる。
できるだけゴミを出さないようにデザイン設計するバッグブランド「The Container Shop」を立ち上げる。現在オンラインを中心に国内外にバッグを販売し、月に1度実店舗をオープンする。
多くの生地が無駄になっていた
これまでの経歴を教えてください。
The Container Shopを立ち上げる前は、アパレル関係でボタンなどの服飾資材を扱う会社に営業職として勤めていました。退職後にかばん袋物縫製工場(現Container Japan株式会社)を設立し、セレクトショップなどのOEM商品をはじめとしたオリジナル商品の製造と企画に20年ほど携わってきました。設立当初は各アパレルメーカーが鞄などの小物を取り扱い始めた頃でした。台東区に会社があったことから、デザイナーさんとの打ち合わせだけでなく、刺繍屋さんや加工屋さんなどの手配などもしていましたね。
どういった経緯からThe Container Shopを立ち上げたのですか。
鞄を作ってもらいたい依頼者と職人をつないでいくうちに、イメージを言葉にする難しさを感じたり、サイズ感などのやりとりがスムーズに進まなかったりすることに気づき、仲介する自分にも鞄づくりの知識が必要だと考えたんです。早速、手元にあった鞄を解体して型紙を作るなど、少しずつですが独学で鞄づくりを始めました。わからないことがあれば、営業先の職人さんや裁断屋さんに教えていただきました。
次第にお客様から鞄づくりの依頼を受けるようになり独立できましたが、アパレルブランドさんやセレクトショップのOEM商品に携わっていくなかで、先方が求める サイズやデザインで製作していくと、非常に多くの生地が無駄になっていることに驚きました。
社会もサステナブルに関心を寄せるようになり、僕ら作り手としても行動をしなければと思い立ち、なるべく無駄な生地を出さないことをコンセプトにした鞄づくりを企画しました。それがThe Container Shopの出発点です。
シンプルな鞄づくりを目指す
生地の無駄をなくすということですが、仕入れる革のサイズにも特徴はありますか。
日本では、半裁という1頭分から取れる革の半分が基本です。そこから型紙をパズルのように当てはめていき、可能な限り無駄をなくす工夫をしています。また、傷がある部分は分けておいて、小物製作に使うようにしています。傷物の場合は定価で売れないこともあり、お客様のご理解を得るために、ショールームやファミリーセールのみで提供し、実物を見て、納得してご購入いただいてます。
仕入れる革にこだわりはありますか。
カラーを指定して、オリジナルで新しい革を発注するということはしません。生地屋さんや革屋さんがストックしているサンプル帳から選ぶようにしています。サンプル帳とはいえ、紹介しきれないほどのカラー展開があります。また、通常のロット素材を業者仲間と分け合うことで、いろいろなカラーに挑戦しやすく、経済的にもコストを抑えることができます。
鞄づくりの工程にも、無駄をなくす秘密があるのでしょうか。
基本的な工程については他社さんと違いはありませんが、差別化するならば、僕らは「作りやすさ」をひとつのコンセプトに掲げています。ポケットをたくさん付けたり、特別な製法を用いたりはしません。素材の大きさや生地幅に合わせたデザインを常に考え、それに必要な裁断や型紙に意識を向けています。
極力シンプルなデザインにしている背景には、縫製工場に携わられている現場の方の高齢化や廃業の問題があります。できるだけ工程を省 き、簡単な設計を心がけることで、持続可能な生産体制を確立できると考えています。
極端な例ですが、今後の生産背景においては初心者でも3ヶ月ほど訓練すれば、ある程度は形になる仕組みづくりが必要です。