2022.09.21

日本市場も視野に ファッションNFTで注目を集めるTHE DEMATERIALISED

NFT(Non-Fungible Token : 非代替性トークン)という言葉は、2017年、イーサリアムブロッククチェーン上で誕生した「CryptoKitties」(クリプトキティーズ)というゲームでの成功以来、認知度を高めてきた。「偽造不可な鑑定書・所収証明書付きのデジタルデータ」にその価値を見出され、投資対象としても注目を集め、現在はアートや音楽、ファッションなど、様々な業界で市場が拡大している。

コロナ禍の2021年3月にツィッター創業者ジャック・ドーシー氏の初ツイートが約3億円で落札されたことが話題になったが、従来は資産価値の付与が困難だったデジタルデータに資産価値と売買市場を形成させたのがNFTだった。

そんなNFTブームの先を見越した女性起業家二人、Karinna Nobbs(カリーナ・ノブス)とMarjorie Hernandez(マジョリー・エルナンデス)によってロンドンで設立されたTHE DEMATERIALISED(ザ・デマテリアライズド)。2021年9月、カール・ラガーフェルドにフィーチャーしたフィギュア(トップ画像:Karl Lagerfeld, KAL BY KARL)を販売したことで一躍有名になった。

ウェブサイトやSNSだけでは情報を得にくいNFTをどのようにしてユーザーに広めていくのか。日本市場におけるファッションNFTの可能性は。創業者の一人、カリーナさんにインタビューを行った。

NFTへの注目と起業の経緯

カリーナさんは「教育学者」、マジョリーさんは「建築家」という肩書きもお持ちです。そんなお二人が一緒に起業した背景は?

2019年9月にパリで行われた会議で、マジョリーと初めて出会いました。当時の私はロンドンで「HOT:SECOND」というデジタルファッションのスタートアップのコンセプトストアをやっていて、マジョリーは建築家というキャリアとは別に「LUKSO」というブロックチェーンの会社を共同創業したところでした。

その時の私は、NFTというものが何かも知りませんでしたが、「私のデジタル資産をブロックチェーンに載せたらどうなるか」と興味を持つと、マジョリーがNFTの概念とそのメリット、そして大いなる可能性を教えてくれたのです。

私は学者、そしてファッションのビジュアルマーチャンダイザー、マーケッターという経験から、デジタルファッションの価値を高めるにはNFTが必須になると感じました。そこで彼女と連絡を取り合い、ベルリンで一緒にイベントを行った後、2020年3月にロンドンで正式に法人化したのです。

ファッションとNFTをどのように組み合わせようと考えたのですか。

私は半ば素人からのスタートですから、まず人々に私たちのNFTを見つけてもらうにはどうすべきか考えました。「OpenSea(オープンシー)」を見ていただくと、まるでAmazonのように、NFTの多さに圧倒されますよね。

そこで人々は疑問に思うのです。「それで、どうしたら良いの?」と。

まず私たちは、人々がNFTを見つけるために本当に面白いと思える空間(スペース)を作ることから始めました。暗号通貨のことをよく知らなくても、まずそのスペースに来てもらうことが必要ですから。

暗号通貨を持っていない人でも、Amazonで商品を購入するように簡単に利用できるのでしょうか?

2020年12月に最初の商品「HexJerzo(ヘックスジャゾー)」というシルバーのジャンパーを発売しました。ローンチ前に「Crypto Natives(クリプト/暗号ネイティブ)」と呼ばれる仮想通貨をよく利用する人たちやファッション業界の顧客に話を聞いたところ、多くの方が「暗号ウォレットの入手が最大の障壁である」と不安を抱えていました。

私たちが提携している「LUKSO」には、「Universal Profile(ユニバーサルプロファイル)」があり、これがチェーン上のデジタル識別子、つまり自分のNFTを保管する場所となります。銀行口座などとはリンクしておらず、人々は私たちから購入します。

もちろん「暗号ネイティブ」の人々は、私たちのウェブサイトから「Ethereum(イーサリアム)」など好きな暗号通貨で購入することもできますが、不慣れな人は、Apple Pay、Google Pay、クレジットカード、デビットカードで支払いをしてから、安全でセキュアな空間であるユニバーサルプロファイルに保持しておくことができるのです。

顧客の皆様から「こんなに簡単だとは思わなかった」「もっとストレスがたまるものだと思っていた」とポジティブな声をたくさんいただいています。

画像: 2020年12月に発売された最初の商品「HexJerzo(ヘックスジャゾー)」
2020年12月に発売された最初の商品「HexJerzo(ヘックスジャゾー)」

NFTは経済的な現象だけではない

カリーナさんがそこまでNFTに興味を持ったのは?

いったい何が起こっているのか、なぜ人々が興味を持っているか。そこにどんな感情があるのか。それらを夜な夜な詳しく調べているうちにNFTに惚れ込んでいました。作った人、売った人、買った人、集める人、何か他のことをする人、それはすべての人にとってwin-win(ウィンウィン)の状況なのです。

多くの人にとって、新しいものに参入する障壁が低くなる瞬間に立ち会えることは、歴史的にあまりないでしょう。貴方が多くのコンピューター・プログラムを使い、良いインターネット接続環境を持っているなら、自分自身の収益源を生み出す良い方法になります。普段はアクセスできないような様々なブランドを体験し、教養を身に付けることもできるのです。

私たちのアドバイザーの一人であるLady PheOnix (レディー フィーニクス)が1年半ほど前に講演をしたことがあります。メタバースとNFTによって、これまで何も所有できなかった人たちが、実際に何かを所有できるようになり、それが時間と共に価値を増していくかもしれないと言及していました。経済的な部分だけでなく、社会的・文化的な現象が大きく関わっているのです。

そんなにエキサイティングなことなら、徹底的に追究すべきと考えるのは当然でしょう。

カリーナさん自身のファッション美学について聞かせてください。それはご自身のブランドとは異なるものですか?

私は古いものと新しいものを対比させるのが好きです。レガシーブランドとデジタルネイティブブランドの共存、それはTHE DEMATERIALISEDの美学にも当てはまります。

ROBERTS WOOD(ロバーツ・ウッド)というサイバー風のスニーカーで知られるイギリスブランドと、デジタルアーカイブコレクションを作ったこともあります。

少しポストモダンで、少し意外性のあるものを並置すること。それはTHE DEAMATERIALISEDや一緒に仕事をするパートナーとの運営方法にも反映されています。

画像: SANCTUARY dress by ROBERTS WOOD
SANCTUARY dress by ROBERTS WOOD

特長は「キュレーション」と「体験」

THE DEMATERIALISEDは、他のファッション企業とどう違うのでしょうか?

2つの大きな特長があると思っています。

ひとつめは「キュレーション」という要素です。他のブランドのように毎週NFTをリリースしたりせず、間隔を空けて、私たちとブランドで長い「共創」というプロセスを踏んでいます。

ふたつめは、顧客に「体験」してもらう要素を拡充させることです。現在メインのウェブサイトには「ディスカバーページ」というものがあり、そこで3Dアセットを見ることができます。通常、私たちは一度に1つの製品/コレクション/ブランドを発表しますが、それは3D環境で発表されます。

また「PDP(Production Description Page /商品説明ページ)」には、見て遊んで楽しめる3Dアセットがあり、事前購入もできるようになっています。顧客はARで商品を見て、自分の環境に持ち込んで、その技術を見て、それを購入したいかどうか判断することができます。もちろん商品購入後には、snapchatで着用したり、さまざまなメタバースに取り込んだり、SNSで紹介したりできるのです。

現在、ウェブサイトリニューアルに向けて3Dスペースを再設計中ですが、とてもエキサイティングなものになるでしょう。

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様々なユーティリティを作り出すことがミッション

異なるプラットフォームで購入したアイテムはどうなりますか? たとえば、あるメタバースで購入したアバターを他のプラットフォームで使えるということでしょうか?

残念ながら現時点ではまだシームレスではありません。

音楽業界や映像業界と同じように、ファッション業界の誰もがユニバーサルなファイルタイプを望んでいますが、市場の大きなゲーム業界は既に十分な利益を得ているので、それを行うインセンティブがないのです。

しかしファッション業界では、そのユーザー体験として、自分が所有しているものをアップロードして、そのメタバースで身に付けることができるという機会を提供しています。

これまでにVRチャット、いくつかのアバタープラットフォーム、「IMVU(アイ・エム・ヴィ・ユー)」という靴をローンチした際のプラットフォームなど、いくつかのプラットフォームで、その体験会を実施しました。また「ROBLOX(ロブロックス)」や「 Decentraland(ディセントラランド)でも、アセットのファイル形式を利用できるようにしました。オープンな「メタバースユートピア」に向かって、ゆっくり進んでいるというところでしょうか。

洋服をアバターに着せる、AR(Augmented Reality、拡張現実)のものをIRL(In Real Life、実生活)に着せる、投資目的の購入者のプロフィールで紹介する、転売や再取引ができるようにするというように、いろんな形態のユーティリティを作り出すことが、私達のミッションでもあります。

「再販」の仕組みについて、教えてください。

将来の統合計画のひとつとして、顧客が再販できるシステムを考えています。

現在はLUKSOブロックチェーン専用で、B to Cの市場のみですが、いずれ「Polychain(ポリチェーン)」という市場に移行する予定です。チェーンによって譲渡性などが異なりますから、私たちと提携するクリエイターは、商品の発売時にどのチェーンでローンチしたいかを決めることができるようになります。

私たちの市場から購入したお客様は、どこの市場でも売ることが可能になりますが、それでも私たちのスペースで販売してもらうように、インセンティブ(販売手数料)を増やし、販売プロセスをできる限りスムーズにするように構築する必要があります。

日本市場におけるファッションNFTの可能性

現在のお客様の拠点はどこですか? 日本のマーケットはどうなっているのでしょうか?

現在は、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、この3つのグループのお客様が中心です。

私たちが最初に手がけたプロジェクトも含めて、日本のデザインにはとても影響を受けています。日本の百貨店とも2回ほど協働したのですが、その後コロナ禍になり、後回しになってしまっています。

私の知る限り、日本の消費者は、テクノロジーリテラシーのレベルが高く、革新や変化、実験的なことに意欲的なところが魅力です。日本の百貨店のプロジェクトを成功させたり、日本のデザイナーと仕事をしたりしたいですね。

日本市場における可能性は?

日本のファッション界のお客様は、アバンギャルドな外見を好む傾向があるので、NFTと相性が良いはずです。日本のファッション界のお客様は、限定品にこだわりがあって、ストリートウェアブランドの限定コレクションも、コレクターとしてわざわざ小さな場所まで行って手に入れたいと考えていることが分かりました。その排他性とコミュニティが、NFTにも活かされると思います。

私たちは常にメタバース環境やアバターのパートナーとして人気があるものを探しているので、日本の消費者がどんなブランドのNFTを欲しているのか、もっと声を聞いてみたいです。日本のブランドと共同出資してNFTを共創することにも非常に興味があります。

画像: 左から:創業者Karinna NobbsとMarjorie Hermandez
左から:創業者Karinna NobbsとMarjorie Hermandez

(以下、後編もぜひご覧ください)

Text by Max Agency Co., Ltd
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