2021.11.15

ライブコマースで求められる新たな販売スキル:配信特化型の販売員「Tig LIVER」の活用

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リアルタイムでの配信機能を用いたライブコマースは、Instagram上や専門プラットフォームのなかで盛り上がりを見せている。特にコロナ禍においては、店舗での接客の代替としても注目を集めた。

その一方で、ライブコマースは従来の店舗での接客とは異なるスキルが必要で、こういった専門性のある販売人材が求められる。また、ライブ後の購買導線の設計など、プラットフォーム設計の課題も大きい。こういった課題に対し、人材面、そして配信面でもライブ配信に特化した包括的な施策として登場したのが、ファッション・ビューティー業界でクライアントのニーズに応じて人材の紹介や派遣を20年以上続けてきた株式会社iDAと、インタラクティブ動画「Tig」を提供してきたパロニム株式会社だ。

今回、両社の強みを生かした「Tig LIVER」というライブ配信に特化したチームを結成、リアル店舗でのコミュニケーションに近いオンライン購買を提供する。またパッケージプランとして、ライブ配信に特化した販売員の派遣や分析のサポートなども行うという。

ますます注目が高まるライブコマースにて、求められる人材やサポートはどのようなものなのだろうか?また、ライブコマースは今後、どのように普及していくのだろうか?今回は株式会社iDA オンライン接客事業部の中村正樹さんと、パロニム株式会社 ドメスティック事業部の海老子秀人さんにそれぞれお話を伺った。

PROFILE|プロフィール
中村 正樹
中村 正樹

株式会社iDA
オンライン接客事業部 マネージャー
大学在学中にファッションへの道を志し、外資系ファストファッションブランドにて販売員としてのキャリアをスタート。店長として売上管理やスタッフマネジメント、新規出店、ストアイベント企画などを経験後、国内レディースブランドのSV・営業として全国10店舗程度を管轄し、百貨店・ディベロッパーとの折衝、マネジメントを担当。インポートブランドの卸営業を経験した後、2017年2月に株式会社iDA入社。2020年6月よりオンライン接客事業部にて販売員の地位向上および新たな働き方の実現をミッションに掲げ、日々邁進中。
https://studio.ida-mode.com/onlinediv

PROFILE|プロフィール
海老子 秀人
海老子 秀人

パロニム株式会社 
ドメスティック事業部 営業部 部長
イー・アクセス、ソフトバンクの代理店/法人営業を経て、2018年パロニム株式会社へ入社。自社サービス「Tig」(ティグ)のサービスリリース時より、セールスチームの販売戦略立案~実行まで幅広く担当。マーケットトレンドを見据えながらの企画立案を得意とし、業種業界問わず、多くのクライアントと対峙。

プラットフォームと販売人材を融合した提供

今回結成された「Tig LIVER」とは、どのようなスキルをもつ人材なのでしょうか?結成の経緯や概要について、教えてください。
中村:

「Tig LIVER」とは、ライブ配信やSNSの利用においても高度な接客スキルをシームレスに発揮できる販売員たちのチームです。

iDAはこれまで、ファッションやビューティー業界における販売員を中心に、人材派遣や人材紹介のビジネスを行ってきました。しかしながら昨年のコロナ禍では、弊社の5000人近い派遣スタッフの90%が休業を余儀なくされ、仕事のできない状態となりました。
また、消費動向においてもデジタル化が進むなかで、これまでの店頭に特化して行ってきた販売員の接客に加えて、ライブ配信やSNSを利用した新しいスキルが求められていることに気づきました。
そこで販売員の活躍の場を守るべく、昨年の6月にオンライン接客事業部を立ち上げました。オンラインとオフラインをシームレスに活躍できるようなOMO販売員の人材供給を行っていくため、人材の発掘と育成を行っています。これまでは特に、事業会社や協力会社と連携をして、インスタグラムの運用やビデオ接客、チャット接客の研修トレーニングを実施してきました。今回の「Tig LIVER」も、その一環で生まれたものです。販売経験のあるスタッフのなかでも特にインフルエンス力がある方や専門知識を持ってらっしゃる方、ブランドのイメージに合うようなビジュアルの方を募り、ご要望に応じて人材の供給を行っています。

パロニム様とのライブ配信に関する取り組みを進めるなかで感じたことが、ライブ配信における人材については、自社のリソースを使って行っているところが比較的多いということです。ですがライブ配信のノウハウがなかったり、まずはライブ配信に慣れているスタッフを起用したいというニーズもあり、また各ブランドで様々な取り組みをするなかでも、消費者の方もオンライン配信に慣れくる状況下で、その効果はまちまちです。全体として、オンライン接客は発展途上なのかなという風に感じています。

そのため、こういった専門スキルをもつ人材や専門的なサポートによる取り組みを経て、各社での将来的な自社運用に繋げていただけるようにしていきたいとも考えています。ライブ配信の初期段階でのスタートアップとして活用いただいたり、継続的にやっていくうえでスポット的にご利用いただくケースに適しているのかなと思っています。

海老子:

我々は去年の秋に「Tig LIVE」というサービスをリリースしました。最初の配信は大手靴小売企業さんのもので、ショップからおすすめのスニーカーを紹介するというコンテンツで、インフルエンサーの方に店内の商品を紹介していただきました。

当初は大手靴小売企業のスタッフさんにも出演してもらおうと考えていたのですが、なかなか経験のないことなので躊躇される方も多く、結果的にインフルエンサーの方をアサインした形です。そのような経験を経てiDAさんとお話する機会があり、中村さんのほうからご提案をいただいて、我々のシステムとソフトと組み合わせたサービスの提供に動き始めた次第です。

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この「Tig LIVER」を活用したパッケージプランを提供されるとのことですが、その概要を教えてください。
海老子:

基本的には企画を考えて当日のディレクションを行い、配信後の分析まで行うというのが全体的な流れです。iDAさんには、企画と現場ディレクションのときに同行していただき、配信後の分析においてもアドバイスいただいております。

まず企画ですが、ライブ配信をするにあたってどんなコンテンツにするか、どんな商品の紹介をするかを決めるところから始まります。続いてキャスティングですが、iDAさんにコンテンツに合わせたキャストをアサインいただいたり、契約するスタッフの方々にご出演いただきます。こういった内容を決めたうえで、現場でのディレクションや配信後の分析などは、主に弊社で行います。

この配信後の分析というのは、どういった内容になるのでしょうか?
海老子:

商品を売ることも重要なのですが、ブランドとお客様のエンゲージメントを高めることも、ライブ配信を行ううえでの重要な側面となりますので、そういった部分へのフィードバックを行います。配信を通じて、ユーザーの方々から商品に対してのコメントが届きます。あとは出演する方へのコメント、ブランドに対してのコメントもありますが、我々は基本的には(配信中に)コメントを返すということを大事にするようにしています。なので、配信後のレポーティングとして、コメントへの対応のフィードバック、コメントの種類に対して適切な回答などをお話ししています。

継続して配信する重要性

ライブ配信を行ううえでの課題は、どのようなところにあるのでしょうか?


海老子:

まず、配信を担うスタッフがライブ慣れをしていないというところです。これに関しては数をこなさないと仕方がないと考えていますが、ある程度、配信の回数を重ねてエンゲージメントを高める、売り上げを高めるうえで重要なことは、ユーザーを楽しませるコンテンツであること、商品の良さをちゃんと伝えられることだと思います。

大前提として、なぜライブコマースをおすすめするかというと、店舗とECの課題を補い合えるものであるからです。今までは店舗での購入かECサイトでの購入しかありませんでしたが、それぞれの課題がコロナ禍をきっかけに顕在化しました。コロナで店舗に行けなくなった消費者も多いですが、みんながECで買うかというと、ECでは補えない部分がある。
それが、双方向性(インタラクティブさ)や商品ディテールの精度、コミュニケーション濃度といったものです。こういったものを補えるのが、ライブコマースに求められるものです。

ただ従来のライブコマースだと、なかなかユーザーのかゆいところに手が届かない状況もいまだにあるとも思っています。それが、「テレビショッピングと何が違うの?」というところだと思います。
決められた商品をシナリオ通りに説明し、品揃えも1時間のライブ配信のなかでせいぜい10商品〜20商品くらいしか紹介できない。それでお客様の好みに合わせて紹介できているかというと、決してそうではない。そういった課題を各社で感じていらっしゃるかと思います。

こういった点に対して、適切なスタッフのアサイン、商品の良さやコンテンツの面白さを最大限にするため演出が重要になると考えています。

中村:

アパレル企業様も、ライブ配信にコストを捻出することが難しいという背景があると思います。ライブ慣れしていない社員の方も出演したくない場合もあると思うんですが、コストの関係上、なんとか自社のスタッフで賄おうという場合が多いですね。

そのあたりがもっと変わってくると、ライブ配信の幅も広がると思っています。

ライブコマースの普及や活用をめぐって、業界全体の変化として感じるところはありますか?
中村:

何をもって成功とするかは難しいですが、やり切っているところは、ちゃんとやり切っていると思います。たとえばベイクルーズさんは、インスタライブでの配信がしっかりと売り上げに繋がっているようです。

定期的に配信し続けるというところが、やり切れるかというところでの差になってくると思います。一過性の取り組みとして、とりあえずやってみようと1回きりで終わってしまうようなケースも数多く見受けられます。結果が出ているところはやはり、継続的にされている、積み重ねていくことが大事です。

海老子:

中村さんがおっしゃったように、継続は非常に重要だと思います。ユーザー学習というのは、固定客を増やすという面でとても大事です。定期的に同じ時間帯での配信を行うことで、固定客を増やしていったクライアントもいらっしゃいます。正直、最初の2、3ヶ月は目に見える成果として感じにくいところはありましたが、ある時、セールの商品をライブコマースで紹介したところ、300〜400万円の売り上げがありました。

過去の配信の活用事例は、SSの商品の紹介など単発でのライブコマースが多かったんです。しかし、このように継続によって成果を出しているブランドも登場していますので、今後はそのような事例も増えていくのではないかと思います。弊社としても、サブスクプランの提供などを通じて、固定配信を行うことのサポートをしていきたいと考えています。

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インフルエンサー×コマーサー

今後、ショップスタッフやインフルエンサーに求められるスキルは、どのように変わっていくのでしょうか?
中村:

店頭の販売員は間違いなく、これまでとは異なるスキルが求められています。ブランドやエリアによって異なりますが、全体的には来店客数が少なくなっています。これまでは店頭のお客様の対応をすることが販売員の役割だったと思いますが、それがSNSやライブ配信といったオンラインでの取り組みを通じて、逆に販売員から発信していくスキルがないと、なかなかお店に来てもらえなくなりました。
オンラインでの試みは、店頭への来店を促す手段として非常に良い結果をもたらしていると思います。出演している販売員の方であったり、店頭のスタッフの魅力を発信することで、店舗に行く期待が高まります。ファッションやビューティー分野は特に、実際に商品を試したいというニーズが大きくあるので、ECと店舗のどちらにも活用できると思います。

たとえば、ECサイトの有人チャット機能がありますよね。ああいったものも、ECサイトという店舗のなかをお客様が回遊するうえで、サイズ感やコーディネートに関する相談に販売員が対応する接客だと思います。ライブ配信やSNSで発信していくことも、お客さんに対する働きかけという点では店舗での接客と親和性もあるので、どちらも重要になっていくと思います。

海老子:

我々としては、インフルエンサー的な要素も重要ですが、販売スキルのあるコマーサーとしての役割を重要視しています。iDAさんと目指したいのは、コマーサーの育成です。コマーサーとしての活動からフォロワーの増加に繋がり、結果的にインフルエンサーとしての役割も持つようになると鬼に金棒だと思います。

役割は違いますが、コマーサーも継続によってインフルエンサー兼コマーサーになることも期待できます。そういった将来像が描けるといいなと思っています。

中村:

我々の理想として販売員の価値向上を掲げており、特にオンライン接客事業は、販売員の新しい働き方を実現することを目指していきたいと思っています。例えば、店舗の販売員が自身のSNSを使ってライブ配信をしたら、その売り上げの一部をご本人に還元してあげるようなことが実現すれば、自身のアクションが売り上げにつながることを実感でき、モチベーションに繋がると思います。

販売職を希望される方は年々減少しており、また、ライフステージの変化や給与面など理由はさまざまですが、販売の仕事から離れていかれる方もいらっしゃいます。そういったなかで、販売員の多様な働き方を支援していくことを通じて、より業界を盛り上げ、販売員の地位向上を実現していきたいと思います。

最後に、今後の展望があれば教えてください。
中村:

コマーサーの育成とプランニングは、より強化して続けていきたいと考えております。販売員の新しい働き方の創造、店頭でのスキルを生かしてライブ配信やオンライン接客を行って販売員が活躍できる環境の整備は、我々だけではなく、各企業様と連携によってなし得ることだと思います。なかなか高い壁はあると思いますが、継続して取り組んでいきたいです。

海老子:

スタッフの売り上げの可視化について、開発を進めていくロードマップがございます。ライブ配信も、売上が可視化されスタッフのモチベーションが上がる、結果が出るからやるということが重要です。

さらには、売り上げの可視化はスタッフさんだけではなく、お客様にも可視化できるような形になればとも思っています。例えばライブコマースを見て二次元バーコードを読み取り、店舗で見せれば10%オフになる、そうすると店舗で購入したこともわかるようになる。購入する人数に応じて商品が値引きされていくような、エンターテインメント性を取り入れたサービスもできるかと思います。中国では、「共同買い」みたいな仕組みが定着していますね。このようにみんなで買い物して、それがエンターテイメントになるような試みも導入していきたいです。

また、店舗に行き、販売員と接することは楽しい体験であると思います。ライブ配信を見て面白いだけではなくて、楽しみながら購入する仕組みづくりにもチャレンジしたいです。

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