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2023.07.07

ファッション界の環境意識を加速させる! 東レの100%植物由来のナイロン繊維 「エコディアⓇN510」

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2022年1月、日本の大手化学企業の東レ株式会社(以下:東レ)が、バイオ由来ポリマー素材・製品の総合ブ「エコディア」の新たなラインナップとして、原料のポリマーをすべて植物由来にしたナイロン繊維「エコディアN510」の開発・販売を発表。このニュースは世界中のメディアで報道され、ファッション業界を中心に大きな注目を集めた。
地球環境に配慮するサステナブルへの意識が高まっている今、その実現に大きく貢献するであろう新素材として登場した「エコディアN510」は、登場から約1年で実際どれだけの影響や反響があったのだろうか。
今回は東レ株式会社 スポーツ・衣料資材事業部長の大塚 潤さんにインタビューを行い、「エコディアN510」が開発された経緯やこれまでの反響、さらにはこの素材を通じて東レが目指すその先の未来について、詳しく話をうかがった。

日本の「ナイロン繊維の進化」における長い歴史を持つ化学企業・東レ

植物由来のセバシン酸(原料:ヒマ)とペンタメチレンジアミン(原料:トウモロコシ)を重合・紡糸して作るという、100%植物由来のナイロン繊維「エコディアN510」を開発した東レは、日本におけるナイロン繊維開発のパイオニアとしても知られる化学企業。大企業ゆえ、その名前こそよく耳にするが同社だが、そもそもどのような背景を持つ企業なのだろうか。
「私たち東レは、もともと太平洋戦争前後からナイロン繊維(ナイロン6)の研究・開発と少量生産・販売を行っていました。戦後、ナイロン事業を円滑に拡大するために米・デュポン社と特許実施権契約を締結し、ナイロン製品の本格生産と販売を始めたのが1950年代初頭のこと。
最初は漁網などの産業製品の生産からスタートし、その後、衣料用のナイロン製品を作っていくようになるのですが、衣料用といってもたとえばスキーウエアとか水着、女性用ストッキングなど、それぞれ特性が異なり、天然繊維ではなかなか実現できない機能性が求められるものに対して、デュポン社の特許やノウハウを活用し、どんどん素材を進化させ用途開拓をして採用されてきた、という歴史があります」
商品特性に合わせてナイロン素材を進化させてきたことで、現在ではライフスタイルシーンをはじめ、ファッション、スポーツの分野においてもシェアを拡大した東レ。そんな同社が、バイオ由来ポリマー素材・製品の総合ブランド「エコディア」という、環境に配慮したブランドを始めた理由とは?
「『エコディア』は東レのバイオマス原料を使用した合成繊維の総合ブランドで、ナイロンだけでなくポリエステルも製造しています。ナイロンなどの合成繊維は石化原料を由来とするものが中心ですが、社会全体でサステナブルへの意識が高まっているなかで、それらの原料に依存しないナイロンやポリエステルの開発を進めてきました。
そして、100%植物由来で、さらに従来のナイロンと変わらない機能性や発色性、寸法安定性を持つという課題をクリアして2022年1月にリリースできたのが、この『エコディアN510』です」
「エコディアⓇN510」で出来た服を着る東レキャンペーンガール 間瀬遥花
「エコディアⓇN510」で出来た服を着る東レキャンペーンガール 間瀬遥花
バイオ由来ポリマー素材・製品の総合ブランドとして「エコディア」を世界展開し始めたのが2013年のこと。そこから約10年もの間、研究と開発を繰り返し「エコディアN510」は完成した。
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