拡大し続けるメタバースはようやく経済圏を獲得しつつある。Metaの躍進は言うに及ばず、中国のメガベンチャーなどが続々参入。いま記事を読んでいる読者の中にも、魅力的なVtuberの案内でメタバースを覗いてみたり、VketをはじめとするVRイベントに参加したりしたことのある人がいるかもしれない。仮想空間は日に日に私たちの暮らしと近づいている。
なかでも「VRChat」は2014年にリリースされた、最古参・最大級のメタバースプラットフォームだ。ユーザー数は500万を超えるとも言われ、常時2万〜8万ユーザーが同時接続し、思い思いのアバターで「ワールド」と呼ばれる無数のデジタルスペースを行き交う。
その中に変わった活動を見つけた。「バーチャルフォトグラファー」。アバターとワールドを被写体に写真作品を撮る「VRの写真家」たちだ。
本記事ではバーチャルフォトグラファー「rocksuch」氏に話を聞いた。インタビューの中では他の代表的なVR写真家も紹介。盛り上がりを見せはじめたVRフォトコンテスト主催者もコメントを寄せてくれた。
全天球のポリゴン世界を、あえて「フレーム」で切り取る新しい写真表現に熱中する人々の活動からは、メタバースのみずみずしい可能性とどこか根源的な人間の美意識が見えてくる。
PROFILE｜プロフィール
rocksuch（ロックサーチ）
世界を彷徨う旅人
バーチャルフォトグラファー
world：「陽光に響く風」by 桜女 幽鬼
※本記事内の写真は特記がないかぎりすべてrocksuch氏撮影／提供
ここは本当にメタバースなのか？
バーチャルフォトグラファーの活動について教えてください。
メタバースに接続し、その中で写真作品を撮ってSNSなどで発信しています。被写体はさまざまで、ファッショナブルなアバターをハントする方、イベ ントをスナップする方。私はVRChat内のワールドの風景をメインに撮ることが多いですね。月間で50〜100ヶ所のワールドに行きます。rocksuchさんの作品は異国の風景写真のようです。一瞬、ここがメタバースの中だとわからないほど自然な表現に驚きました。
VRフォトグラファーとその他のユーザーの違いをあげるなら、その表現性の部分だと思います。メタバースの中で撮影される写真のほとんどは「アバターの自撮り」ですが、VRフォトグラファーは光や空気を作品として切り撮ろうとする。現実の写真家とよく似た姿勢です。
いま、何名ほどのVRフォトグラファーが活動していますか。
メタバース内で撮られた写真は毎日アップされていますが、私の知るかぎり「フォトグラファー」を名乗っている人は日本では50名くらいじゃないかな。100名はいないと思います。なかでも著名な写真家は。
私が紹介するのであれば、まずは「えこちん」さんですね。
「えこちん」さんはアバター撮影の名手と言える方です。絵画的でポップな作風が特徴で、VRだからこそ撮れる写真です。「この人に撮ってもらいたい！」と思うユーザーも多い。
VRChat内に写真ギャラリーを持っているほどの先駆者で、ある意味で私の師匠のような方です。
もうひとりは「MANE」さん。
「MANE」さんはリアルでも写真を撮る方で、空気が伝わるでしょう。画を作り込みすぎない自然な写真で、一言で言うとものすごくうまい。
この他にもさまざまなスタイルの素晴らしい写真家さんがいますよ。
VRの旅人たち
rocksuchさんがバーチャルフォトグラファーの活動をはじめたきっかけは。
私がVRのユーザーになったのは2018年からです。旅行が趣味で、暇を見つけては国内外に出かけていました。その延長でメタバースという旅先が増えただけで「行ったことのない場所に行ってみたい」という動機は現実の旅とそう変わりませんでした。
VRChatでは毎日のようにワールドが生まれ続け、一生かけても回りきれないほど。
新しすぎる風景にすぐに夢中になり、新着のワールドに片っ端からアクセスするようになりました。
この記事をシェアする
関連記事
RELATED ARTICLES
FASHION TECH NEWSは株式会社ZOZOの登録商標です
©️ZOZO NEXT, Inc. All Rights Reserved.