2020年代、メタバースに出現した「アバターを着る」カルチャーは、ファッションの自由と美意識が爆発する面白いシーンだ。性別転換、巨大化、動物化、人間とは異なる姿での活動を謳歌するアバター文化は、ファッションをかつてないほどアップデートする可能性を秘めている。
それに伴い「いま、私たちがふだん着ている現実の服」の意味も問い直されるはずだ。だからVRでは"リアルクローズ=リアクロ"が新しい。もちろん既存アパレルブランドにとっては大きなビジネスチャンスになる。
本記事ではVRChatのリアルクローズ愛好家が集まるイベント「リアクロ集会」に取材を実施。2020年よりメタバースに参入したBEAMSが昨夏・今夏とコラボイベントをオファーするほどの「リアクロ勢」のホームと呼べる場所だ。 主催者JONER(ジョネ)氏へのインタビュー、歴代「リアクロ集会」で披露された見事なスタイリングや人気ブランドを紹介。さらに「現実とVRで同じ服を 着る=リンクコーデ」など、ユニークな楽しみ方を聞いた。
PROFILE|プロフィール
JONER(ジョネ)
2022年3月より「リアルクローズ集会」通称「リアクロ集会」をスタートし、月イチ開催イベントとして継続中。クリスタルシェーダーで透き通った髪がトレードマーク。2023年9月デジタルフットウエアブランド「RALLY FOOT」をローンチした。
リアクロ集会について教えてください。
VRChatでのリアルクローズ(現実寄りのファッション)愛好家向けの集会です。参加は無料で、主催者の私やスタッフにフレンド申請し、開催時刻になったらjoinしてもらう形式で、毎回20〜30名が集まって交流しています。2022年3月に第1回を行い、2023年10月で20回目を迎えることができました。
参加者のコーデはまさに街角で見かけそうなスタイリングです。
リアクロは現実のトレンドと特にリンクしやすいジャンルです。だからこそバリエーションが豊富で季節ごとの着こなしもあります。各回のテーマごとに着飾って集まっています。
イベント中はどんなことが行われるのでしょうか。
基本はスタイリングを見せあいながら、趣味が合う参加者同士での交流です。参加者は友人の紹介だったり、Xで告知や過去回の写真を見たりして来る人も。おしゃれな「改変(編集部注:アバターに服を着せるなどしてオリジナルな姿に調整すること)」をする人たちが集まってくれるので、それぞれ改変の参考にしたり写真を撮りあったりしています。
好きなものを素敵だと感じる気持ちを共有して友達が増えたり、ユーザー間のコミュニケーションだけで何時間でも話せたりするほど楽しいですね。
会場となるワールドの一角にスペースを設けてブランドの服を展示することもあります。
アイテムの販売などもされているのでしょうか。
マネタイズができれば正直うれしいことですが、純粋にユーザーがリスペクトしあう場として立ち上げたので、参加者からお金を集めるといった負担を求めるようなことはしたくないですね。私自身はVRでの服作りに興味があるし、ブランドも立ち上げています。でも服を売ったり収益をあげるためにこの集会を主催しているわけではありません。ですからこれからも参加無料で続けていこうと。
ただ、リアクロをもっと楽しむためのお手伝いはしたいと思っています。そ うした考えでBEAMSさんとコラボもさせていただきました。
いつか機会があれば現実空間とVRが連動したリアルイベントをするのもすごく楽しそうですね。
たしかにリアクロの特徴のひとつは現実との同期ができることですね。
そうですね。特にアバターと同じ服を着ることができる「リンクコーデ」はリアクロならではの面白いアプローチです。リアルもVRの服も同じように好きになれる。リンクコーデを積極的に楽しむ動きが増えれば、リアクロはメタバースと現実がファッションで繋がるという大きな意義を持つと思います。