2021.12.06

バーチャルヒューマン「Drip」が纏う、HATRAの2021AWコレクション

#Project Drip

ZOZO NEXTによるバーチャルヒューマンユニット「Drip」。ファッション分野へのバーチャル技術の導入を目指し、アメリカを拠点とするPinscreen社とともに開発を実施、低コストで質の高いバーチャルアバターの生成が可能となっている。

今回、日本のファッションブランドHATRA(ハトラ)とのコラボレーションとして、2021年秋冬コレクション「Rapid Eye Movement」の3Dデータを作成、バーチャルヒューマン「Drip」のRinoが着用した。今回は、このコラボレーションの経緯や完成画像について、HATRA・デザイナーの長見佳祐氏、ZOZO NEXT担当者の池上夕貴氏のコメントを交えて紹介したい。

バーチャルヒューマンの活用の場を広げるために

プロジェクト「Drip」は、ファッション産業でのバーチャルヒューマンやバーチャルクロージング(衣服)の導入を目指し、開発を進めている。特にバーチャルヒューマンの活用の場としては、ブランドのイメージビジュアルでの活用が想定される。池上氏は、ブランドがバーチャルヒューマンを使用することでモデルの手配やロケ撮影が不要になり、コストや時間の削減に繋がると説明する。また、3DCG技術を使用することで現実世界で撮影・制作することが困難なイメージビジュアルも作成可能となり、ブランドの世界観の表現に寄与することが期待されるという。

このようなブランドによる活用も探究するなかで、今回初めてのファッションブランドとのコラボレーションとして、HATRAから提供を受けた2DのパターンデータからZOZO NEXTのチームが3Dデータを作成、長見氏が構成や表現の部分でアドバイスを行うかたちで制作が行われた。
HATRAは3DクロスシミュレーションやAI技術といったテクノロジーを先駆けてクリエイティブ制作に取り入れ、ファッションの新しい表現や制作方法に挑んでいる。今回のコラボレーションは、こういったHATRAの取り組みをみたZOZO NEXTからの打診によって始まり、特に「Drip」の衣装の部分を中心とした高い技術力を活用できるよう進められた。

3Dならではの違和感

3Dモデル化は、2021年秋冬コレクション「Rapid Eye Movement」から3ルックを選び、制作された。3Dにし易い/難しいデザインがあるなかで、初めてのコラボレーションということで、少しずつ難易度の違うものが選ばれたという。

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ポージングや背景などはZOZO NEXTから提案する形で進められたが、ブランドの世界観の表現とのすり合わせが難しかったという。今回は、試作画像に対して長見氏から「全身の動きと服が連動している“一瞬”という空気感」、「3Dならではの良い違和感」といったキーワードがあがり、それが全体のクリエイションの土台となった。
これに対して長見氏は、フォトリアルな表現の難しさも感じたそうだ。衣装の解像度が上がりすぎてスーパーリアルになっていったとき、アバターや背景と衣装のズレ、絵としての破綻をどう扱うか、そういった部分もスタンスを問われてくる要素だと話してくれた。また、こういったブランドとのコラボレーションは新しい形のセッションであるため、お互いのスキルセット、相互に提供し合うデータの扱いなどの議論から始めなければならなかったという。特にパターンデータはブランドにとって核なるものなので、3Dのコラボレーションは今後も増えていくなか、容易に複製可能なデジタルデータをめぐる取り扱いに関して整理も必要となるのだろう。

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バーチャルヒューマンの活用をめぐる多様性の問題

バーチャルヒューマンの活用シーンを広げる試みとなった、今回のコラボレーション。長見氏はバーチャルヒューマンの活用について、ますます身近なものとなっていく期待と共に、「個人的には人の似姿を煮詰めていく過程で、私達が感じる人間らしさ、知性とはといった問いが深まっていくことに期待しています。」と述べてくれた。その一方で、誰でも自由に姿を選べるときに、その表象が似通ってしまう、多様性の収束について関心をもっているという。これはバーチャルヒューマンの広告などへの起用が増えていくなかで、非常に重要な視点であろう。「偶然性の弱いバーチャルな世界が暮らしのレベルにまで浸透したとき、それが寛容さを押し拡げるものであってほしいなと思います。」と、長見氏は話す。

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今後も様々なコラボレーションが積み重ねられることで、技術的な部分だけではなく、こういった表現をめぐる思想の部分も探究がされていくと期待したい。

HATRA
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