2022.03.14

ファッションテックの領域のヴェールを取り払う:ZOZO NEXTによるSXSWへの挑戦

2022年3月にアメリカ・テキサス州で開催される世界最大級のテクノロジーの祭典「SXSW 2020」。今回、ZOZOグループにて新規事業創出やテクノロジーの研究開発を担う組織ZOZO NEXTがグループ初の試みとしてSXSWクリエイティブ・インダストリーズ・エキスポに出展する。「UNVEIL THE FUTURE OF FASHION TECHNOLOGY」をコンセプトに、テクノロジーが導くファッションの未来を紐解く本展示。そこで投げかけられるファッションをめぐる新たな体験や価値とは?

今回は、SXSWの出展プロジェクトを牽引したZOZO NEXT担当者による座談会を実施。ZOZOグループ初の海外展示への期待やブースに込めたコンセプトや想いを、ZOZO NEXT・MATRIXの田島 康太郎、玉村 雄大、中丸 啓、権 美愛にインタビューを行った。(2022年2月25日収録)

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田島 康太郎

ソニー株式会社にて半導体事業部を経て、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントに出向。日本並びに欧米、欧州市場においてPlayStationⓇVRを用いた新規事業開発業務に従事。2019年よりZOZOテクノロジーズに入社し、素材やデバイスを活用したスマートテキスタイル開発ならびにファッションテックを取り扱うオウンドメディアを統括。2021年10月より新規技術開発とその事業化を行うMATRIX部門のdirectorを務める。

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玉村 雄大

IT系メガベンチャーにてゲーム関連の映像制作や3DCG分野の業務に従事した後、2020年にZOZOテクノロジーズに入社。XR / AIチームにて主にバーチャルファッション領域のプロジェクトを推進。自身もCG制作を行い、メインツールとしてHoudiniやUnreal Engineなどを使用する。

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中丸 啓

研究者、ZOZOテクノロジーズ新規技術開発とその事業化を行うMATRIX部門に所属。博士(政策・メディア)。柔らかな機能性素材やデバイスの開発と、それらを活用したインタラクション・UX設計を専門とする。論文や特許など技術領域を軸に、Ars Electronica Festival等での作品展示も展開する。ACM DIS 2019 Best Paperなどを受賞。

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権 美愛

制作会社を経て株式会社VASILYに入社後、自社事業であるファッションアプリIQONに関するデザイン制作、ディレクションを担当。会社の合併・分割により、現在は株式会社ZOZO NEXTへ転籍。AppやWebのUXやUI設計、Graphicなど、社内プロダクトに関わるデザインを統括。

ZOZO NEXTの取り組みを総披露

今回、どのような経緯でSXSWの出展に挑戦することになったのでしょうか?
田島:

元々、株式会社 細尾様と東京大学様とスマートテキスタイルの研究開発プロジェクトを中丸と私で行なっており、その成果展示として昨年4月から9月にかけて京都で成果展示を開催しました。それが大きな反響をいただき、そこから海外に出展をする運びとなりました。数ある海外展示会の中でもSXSWはどうかというのは、代表の金山からの提案です。それが昨年の10月頃ですね。

SXSWは2007年からTwitter社、2011年にはAirbnb社やPinterest社といった海外の著名なベンチャー企業が展示を行っていて非常に面白いと思いました。また、私たちのチームであるMATRIXは、メディア、テキスタイル、XRと多様なプロジェクトを有しているので、SXSWのカラーにすごく合うと感じて出展に踏み切りました。

みなさんは、出展にはどのような印象を持ちましたか?
玉村:

SXSWの名前は知っていましたが、僕のなかでは音楽フェスというイメージが強く、エンタメ寄りな印象でした。テック系のブースを出していることを今回初めて知り、映画や音楽など多様な分野が混ざり合っているところが、普通のテックイベントよりも面白いんじゃないかなと思いました。来場者も多様な領域の方々が来るだろうし、様々な反応を得られることを期待しています。

中丸:

MATRIXは普段、チームごと別々にプロジェクトに取り組んでいるため、スマートテキスタイルとXRのプロジェクトなど複数のプロジェクトが一緒にプロダクトを披露するのは初めての試みです。10月から新たに生まれたZOZO NEXTという会社(※)が、どんな新しいことをやっているのかをひとつのコンセプトとしてまとめて、音楽とイノベーションの祭典に持っていくということは、とてもチャレンジングだなと思いながら取り組み始めました。

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初めに出展を聞いたときは、すごく驚きました。この規模のチームで、あの大きな展示をできるのかという不安はありましたね。でも、他のチームがやっていることに触れていない部分も多かったので、そういう意味で連携を取りながら同じところに向かってつくり上げていく経験ができて、すごく良かったと思っています。

画像: (左から:MATRIXディレクター・田島 康太郎、デザイナー・権 美愛、XRリーダー・玉村 雄大、Textileリーダー・中丸 啓)
(左から:MATRIXディレクター・田島 康太郎、デザイナー・権 美愛、XRリーダー・玉村 雄大、Textileリーダー・中丸 啓)
実際に、準備はどうですか?
田島:

ZOZO NEXTはすごく人数が少ない組織ですが、SXSWクリエイティブ・インダストリーズ・エキスポのブースで最も大きなブースを出展します。ブースのコンテンツの準備だけでなく、それ以外のノベルティの準備や輸送まで、すべてをやっていますので、とてもじゃないけどこの人数で対応することではないです(笑)

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次から次へと、タスクが出てきましたよね。

田島:

今のコロナ禍の状況だからこそ、どうやって入国するのか、滞在期間中のガイドライン策定なども含めて、色々なことを自分たちのチーム主導で解決しなければいけません。大変なことは多いですが、やりがいを感じます。

ファッションとテクノロジーのヴェールを剥がす

では、今回のブースの概要やコンセプトについて教えてください。
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ファッションとテクノロジーを掛け合わせたプロジェクトを披露する展示ということですが、実際のところ、ファッションという分野はテクノロジーの活用にはまだまだ多くの可能性をもった分野であると思います。

そんなヴェールに覆われた未知の領域を私たちが切り拓いていくというコンセプトで「UNVEIL THE FUTURE OF FASHION TECHNOLOGY」と設定しました。ブースは黒いボックスがたくさんブースの周りを覆っていて、ディゾルブでどんどんと解像度が高くなっていくイメージのデザインとなっています。

ファッションとテクノロジーの世界の解像度を、私たちが高めて見せていくという想いをコンセプトで表現したいと進めてきたものです。

中丸:

そのコンセプトに至るまでにも、色々な紆余曲折がありました。最初は日本のカラーを出したいとか議論もありましたが、権さんを中心にZOZO NEXTらしいものをみんなでつくっていったのが懐かしいですね。

田島:

最初はブースに和室を置くという案もありましたよね。もともと白を基調としたデザインで、真っ白な中に茶室を置いて、そこにテキスタイル作品を同居させようと。

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海外での展示ということで、日本らしさを押し出したものにしようかという意見もありましたが、最終的には会社としてのメッセージ性に沿ったものとなりました。

今回はブースの中に異なるプロジェクトが複数同居するので、テキスタイル作品が暗転したスペースに展示するものが多いということで、暗めで統一しました。また、黒は私たちのZOZO NEXTのカラーでもありますね。

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XRやテキスタイルのブースは、どういったものが展示されているのでしょうか?
玉村:

XRのブースでは、いわゆるバーチャルな体験ができるようなものとなっています。来場した方がタッチディスプレイ上で自分そっくりのアバターをつくれて、服も着せられるというものです。それを自分のSNSアカウントでシェアも可能というような、インタラクティブに楽しめるコンテンツとなっています。

中丸:

テキスタイルのブースでは、株式会社 細尾様と東京大学様のチームと行っている、美しさを技術によって拡張するという取り組みの成果を披露しています。この座組みが面白いということもあって、つくる過程がわかるプロトタイプの展示や、プロジェクトの背景も説明しています。

展示する作品全体のコンセプトとしては、空間の環境から織物が影響を受ける、織物自体をメディアと見立てた作品となっています。たとえば、光への意識を強調したいものであれば暗くした空間で陰影が強調されるように空間を設計したりと、プロダクトの魅力が際立つように展示することを目指しています。

ブース全体の工夫、見てほしいポイントがあれば教えてください。
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今回は、SXSW用のWebサイトやリーフレットも用意していて、ブースだけではなくWebでも雰囲気を味わえるようになっています。QRコードを読み込んでサイトを閲覧したり、その場での体験に加えてスマートフォンやPC上でもインタラクティブに体験できるというのが良い点かなと思っています。

また、ブース自体が回廊できるようになっていて、コンセプトムービーから始まりXRの体験、次にスマートテキスタイルの暗いブースがあり、最後に計測のZOZOSUITS、ZOZOMAT、ZOZOGLASSと一周できるようになっています。
最初に私たちの描いている未来がどうなっているか、世界観を知ってもらい色々体験をしていくというという構成にこだわっています。

未来の生活を描くコンセプトムービー

コロナ禍で実際に現地に行けない方も多いかと思いますが、日本にいる方々にも楽しんでもらえるコンテンツとしてコンセプトムービーが発表されますね。この概要を教えてください。
玉村:

このコンセプトムービーは、ZOZO NEXTのプロモーションビデオをつくりたいということで企画がはじまったものです。ZOZOテクノロジーズからZOZO NEXTになってからまだ日が浅いこともあり、ファッション+テクノロジー=ZOZO NEXTという印象もまだまだこれから広めていく必要があるなかで、ZOZO NEXTがファッションテックの未来をつくっていくということを提示できる映像にしたいと思い、チームで何回もブレストや議論を繰り返して形にしていきました。

内容としては、サステナビリティやXRだったり、あとは計測やテキスタイルなど、キーとなるテクノロジーを4つに絞って紹介しています。3人の主人公のそれぞれの1日を通して、現在は「先端テクノロジー」と呼ばれている技術が、未来ではどのように生活に溶け込んでいるのかを見せている映像になっています。制作の時間が限られているなかでしたが、何とかつくり上げることができました。

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他のみなさんは、映像を見てどんな感想を持ちましたか?
田島:

ZOZO NEXTが持つ色々な技術、XRやテキスタイルもそうですが、ファッション業界として取り組まなくてはならないサステナビリティをめぐる技術に対してどう考えていくか、自分たちがどのような未来を描いているか。すごく短い映像ですが、ある程度「こういう未来像だ」というのを語れるものになっていると思います。

会社として、その方向性にいくというよりはひとつの答えとして、自分たちの考えをアピールする面白いものができたと思います。

中丸:

未来に対するコンセプトは描く人によって色々なものが出てくると思いますが、具体的な開発品が出てこないと、僕らもどういうものかを理解できないし、お客様にもメッセージを伝えづらい。今回の映像では、様々な技術に対して3人の主人公の生活を通じてストーリーに見立てたことで、開発した技術がどのように未来で使われているか、これだったら受け入れられるかも、といった僕らの想像の解像度を上げてくれたと思います。そこから逆に世の中からどういうリアクションがでてくるかも含めて、大きな意味があると思います。

玉村:

映像のなかでのバーチャルの技術は、今取り組んでいることの延長線上にあるのかなとも思っています。僕らが制作をしたというのもありますが、実際に映像で登場した技術は、個人的には将来実現するものだろうなとは思ってます。

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私は1ユーザーとして見ていてワクワクしました。テクノロジーがすごく生活に溶け込んでいて、そういった未来が早く来てほしいなと。

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次なる一歩へ進むための契機に

では、SXSWへの挑戦を契機に、今後のプロジェクトをどのように進めていきたいと考えていますか?出展後の展望を聞かせてください。
中丸:

今回、対外的に自分たちのアイデアを示す機会ということで、世界からどんなリアクションが返ってくるかを楽しみにしています。彼ら彼女らの驚きが次の商品に対する大きなヒントとなるので、今後の開発に活かしていきたいというのがひとつです。

テキスタイルに関しては、本当にそれが良い反響を得られるかは予想が難しいです。具体的な課題や目的に対して技術を開発するのと並行して、「こういう技術があるんだけれど、あなただったらどう使いますか?」みたいな問いかけの両方を進めていかないと仲間が増えない領域だと思います。なので、SXSWで自分たちの考えを披露して、「自分たちだったら、こういう考えで一緒に取り組みたい」とか「こういう材料があるので使ってみませんか?」といった形で、新たなパートナーと繋がれる機会になればと。

また、ECの会社がこれだけ新規事業を行っているのは珍しく、おそらくファッションテックのチーム自体が世間的にも稀だと思います。そういった試みができる企業風土や、多様なデータが集まっているというのを、今回の挑戦で伝えられるといいなと思っています。

玉村:

XRのブースに関しては、実際に来場者が体験できるものとなっています。なので、まず一般のユーザーがどういう反応を示すのか?その体験が良いと思ってくれるだろうか?といったフィードバックが得られることが、楽しみでもあり不安でもあります。

また、私たちも開発していくなかで常に新しいパートナーを探しつづけているので、この世に出すタイミングで、もっと多くのパートナーと結びつければ嬉しいなと思います。

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ZOZO NEXTは去年から発足したので、まだまだスタートだと思っています。今回の出展というのも、第一歩だと思っているんですね。私たちが思い描いている未来や提示している価値が、世間ではどうみられているか、その答え合わせの場にもなるのかなと。

その反応から方向を修正するなり、さらに進むなり、次の一歩を踏み出して行けたらなと思います。

田島:

僕らが扱っている技術や開発している内容が、ユーザーにどう思われるかのフィードバックを得ることはSXSW出展の大きな目的ですし、同時に開発しているメンバーが現地に行くので、実際現場の声を聞くことに大きな意味があると思っています。また、SXSWには色々な国の企業が参加しているので、彼ら彼女らが何を考えているのかを直接知る良い機会になると思っています。

コンセプトムービーで我々が描く未来のファッションテックを示しましたが、そこに色々なスパイスを入れる貴重な機会だと思っています。今回の出展を皮切りに、僕らのロードマップをどう変えるか、この考えでよかったのか、吸収できる機会だなと。

ZOZO NEXTの我々の組織は、とても特殊であまり他の企業にはない形態だと思うので、今後も色々な方向性に取り組むという僕らの強みを、色々な人と対話しながらより強固にして、仲間を集めながら、新しいものをお客様に届けられるよう開発を続けたいと思っています。

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※2021年10月に株式会社ZOZOテクノロジーズが吸収分割を行い、株式会社ZOZO NEXTに商号変更し、一部を株式会社ZOZOに統合しました。

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