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2023.03.03

サブ4を目指すために開発された、アシックスの最新シューズ「S4(エスフォー)」

Speed、Stability、Safety、Sub4の4つのSをとって名付けられたという「S4(エスフォー)」は、フルマラソンで4時間を切る、いわゆるサブ4を目指すランナーのために開発されたモデルだという。

METASPEED(メタスピード)」シリーズのエッセンスを取り入れたカーボンプレート搭載シューズは、どのような機能を有しているのだろうか。そして「メタスピード」シリーズや、同じくカーボンプレートを搭載している「MAGIC SPEED(マジックスピード)」との違いはどこにあるのだろうか。
 
十分な準備期間を設け、しっかりとトレーニングを積んで挑まなければ達成が難しいサブ4。レーシング志向の強い日本ではサブ4を目指して練習に励むランナーが多いようなのだが、「S4」はズバリその目標達成をサポートするためのシューズだ。

熱心なランナーでもあるアシックスの廣田康人社長CEO兼COOが、開発陣に「サブ4用のシューズを作ってくれ」と依頼し、開発がスタートしたことからも、いかに“サブ4”にこだわって作られたものなのかが窺える。

画像: サブ4を目指すランナーのために開発されたS4。22,000円(税込)
サブ4を目指すランナーのために開発されたS4。22,000円(税込)

サブ4達成のために必要な機能を搭載

サブ4を達成するためには、スタートからゴールまでイーブンペースで走ったとして、1kmをおよそ5分40秒で走り続けなければならない。それなりのスピードが必要となるのだが、それを支えてくれるのが、カーボンプレートと反発性に優れたフォーム素材だ。
 
「2層構造のミッドソールの上層部にはメタスピード シリーズにも使われている、軽量で反発性に優れたFF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)を採用しています。

また、METASPEED EDGE+(メタスピード エッジ プラス)と同様のV字形状で、剛性をサブ4仕様に調整したカーボンプレートを搭載しています。レース後半まで着地から蹴り出しまでの動作が安定して行え、体が前進するのをサポートしてくれるはずです」と、開発を担当した谷垣雄飛さんは言う。
 
エリートランナーほどの筋力がないサブ4レベルのランナーでも、カーボンプレートの恩恵が受けれるように剛性が調整されているので、プレートのしなりによる助力を感じられるはずだ。
 
4時間ものランニングを支えるためには、安定性も重要な要素のひとつ。「S4」では、「メタスピード」シリーズと比較すると前足部、踵部ともにソールの底面が広くなっている。その分、接地面積が増え、安定した足運びが可能となる。

また、踵部のラバーを前足部より厚くすることで、接地時の耐摩耗性も高めている。そして、ミッドソール下層部に採用されているFLYTEFOAM(フライトフォーム)も安定性向上の一助となっている。

画像: ミッドソールのトップにFF BLAST TURBO、カーボンプレートを挟んでボトムにFLYTEFOAMを採用。サブ4ランナーに適したライド感を実現している
ミッドソールのトップにFF BLAST TURBO、カーボンプレートを挟んでボトムにFLYTEFOAMを採用。サブ4ランナーに適したライド感を実現している
画像: アウトソールにはさまざまな路面コンディションで高いグリップ力を発揮するASICSGRIP(アシックスグリップ)を採用
アウトソールにはさまざまな路面コンディションで高いグリップ力を発揮するASICSGRIP(アシックスグリップ)を採用

「テスト履きを見ると、サブ4を目指すレベルのランナーは、踵部分がすり減っているケースが多いことが確認できたことから、後半は踵着地になりやすいと推測し、踵から着地しても安定し、かつスムーズに前方に抜けていけるような構造に至りました。30km以降、疲れてきた場面でも、足を前に出しやすいと感じて頂けると思います」
 
アッパーに採用されているのは、「メタスピード」シリーズと同じく、軽量で通気性に優れたモーションラップアッパー。シューレースも「メタスピード」シリーズと同様に、走行時に緩みにくいよう両端に凹凸のあるものが採用されている。細部までしっかりとレーシング仕様となっているのだ。

画像: モーションラップアッパーは、伸びると素早く縮むキックバック特性を備えているため、走行時も常に高いフィット感が得られる
モーションラップアッパーは、伸びると素早く縮むキックバック特性を備えているため、走行時も常に高いフィット感が得られる

「マジックスピード 2」とはどう違う?

「メタスピード」シリーズの機能とデザインを引き継ぎつつ、より多くのランナーが活用できる厚底カーボンシューズとして登場したのが、「マジックスピード」シリーズだ。

新たにカーボンシューズを試したいランナーのレース&トレーニング、レースで「メタスピード」シリーズを活用しているランナーのトレーニングに推奨される「マジックスピード 2」も、サブ4を目指すレースに適しているように思える。その違いはどこにあるのだろうか。

「ミッドソールが2層でフルレングスのカーボンプレートを搭載しているという構造自体は似ているのですが、プレートの形状も違いますし、ミッドソールの上層に使用している素材も違います。素材の持つ反発性はS4の方が高く、また踵で着地した際にも反発を得やすい構造になっています。ソール底面の面積もS4の方が広いので、より安定性を感じてもらえるかと思います」

「S4」派か、「マジックスピード 2」派か。履き心地の好みは分かれそうだが、目標がはっきりとサブ4ということならば、「S4」を選んでおけば間違いないということなのだろう。

画像: S4とマジックスピード 2のスペック比較。ミッドソールの厚さにも違いがある
S4とマジックスピード 2のスペック比較。ミッドソールの厚さにも違いがある

42.195kmを安心して走りきることができそうな着用感

足を入れて、まず感じたのがモチッとした弾力感。これはおそらく、ミッドソールの上部に使われているFF BLAST TURBOによるものだろう。モーションラップアッパーは薄く、軽量感があり、「ザ・レースシューズ」といった印象。踵周辺はしっかりとホールド感がある。
 
実際に走ってみると、マイルドで心地よい反発感と、適度なクッション感が得られる。厚底ではあるものの大きなブレはなく、安定性が高い。これならゴールまで足を任せられそうだと思える安心感があった。
 
「マジックスピード 2」とも比べてみたが、弾力感を強く感じるのは「S4」の方だ。一方「マジックスピード 2」の方が接地感も反発感もシャープな印象で、おそらくサブ4よりも速いペースで走るランナーには「マジックスピード 2」の方が好まれるのではないかと感じた。
 
筆者は「マジックスピード 2」を初めて履いたときにレースで試してみたいと思ったのだが、実際にフルマラソンを走らなければならないとなったら「S4」を選択しそうだなと感じた。その前にもっと走行距離を増やさなければいけないが……。
 
サブ4達成を目標にしているランナーには、ぜひ試してもらいたい一足だ。

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PROFILE|プロフィール
谷垣雄飛(たにがきゆうひ)
谷垣雄飛(たにがきゆうひ)

株式会社アシックス パフォーマンスランニングフットウェア統括部 開発部

 主にロードやトレイルランニング用シューズの開発に携わる。自身の担当するシューズが、お客様にとって大切な一足となるよう試行錯誤する日々を送る。休日はランニングやテニスなどを楽しみ、公私ともにスポーツでいっぱいの生活を長く続けたいと願っている。 

Text by Fumihito Kouzu

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