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2022.08.01

女子中高生にとっての「制服らしさ×かわいさ」とは? カンコー学生工学研究所が見いだす学校制服の価値

1854年に創業し、全国で「カンコー学生服」を展開する菅公学生服株式会社の独自研究機関であるカンコー学生工学研究所のかわいい制服研究室が、「かわいい研究」の第一人者である大阪大学大学院人間科学研究科の入戸野 宏教授の助言のもと、『学校制服における「制服らしさ×かわいさ」の価値』と題した研究結果を発表した。
現代の女子中高生たちが考えている制服のかわいさや価値とはどのようなものなのか。今回、同研究所所長の川井さんと担当の安木さんに話を聞いた。
PROFILE|プロフィール
川井正則

菅公学生服株式会社 カンコー学生工学研究所 所長
菅公学生服に入社後、営業職を経て、学校独自デザインの制服企画・提案業務に従事。その後、カンコーの新商品開発や品質管理を担当。近年では、制服のジェンダーレス化に伴い、ジェンダーレス制服についても各事業部や担当者と共同で開発提案を行っている。現職は2022年より。

PROFILE|プロフィール
安木綾乃

菅公学生服株式会社 カンコー学生工学研究所
中学講師を経て、菅公学生服へ入社。商品開発や学校推進企画の業務に携わる。 2008年より現職となり、子どもたちのカラダとココロの健全な成長を支援することをモットーとし、基礎研究に取組んでいる。

理想の制服が自己評価感情を高める

はじめに、カンコー学生工学研究所が創設された経緯について教えてください。
川井弊社は学生服メーカーとして制服や体操服を作ってきましたが、子どもたちにより快適な学びを提供していくために、子どもたちの「カラダ」「ココロ」「時代」「学び」の4つの視点から子供たちを見つめる「学生工学」という考えのもと、2006年にカンコー学生工学研究所を創設したのです。会社としても制服・体操服の製造・販売に留まらず、学校や生徒の課題を解決するスクールソリューション企業として取り組みを行っております。
研究員には、どんなメンバーがいるのでしょうか。
川井現在、9名体制で活動しております。制服の・体操服の品質管理だけではなく、社会課題や学校課題の調査、生徒の嗜好調査などから、研究・開発を進めています。
研究やリサーチを行うなかで、実際に商品に反映されたケースを教えてください。
川井制服は長時間着るものなので、その時間をいかに快適に過ごせるか、生徒の姿勢や日常動作を研究し、従来のブレザーより動きやすく着心地の良い「ストレスフリー アクティブブレザー」を開発しました。こちらは全国の多くの学校でご採用いただいています。
そのような研究をしていくなかで、制服のかわいさに着目した背景は?
安木学校制服は、制服を制定する学校、購入する保護者、着用する生徒の三者が関わっています。そのなかで、生徒側から、かわいい制服を求める意見が多くあったのです。このかわいいは人によって異なりますし、そもそもかわいい制服ってなんだろう? という疑問から、その深層を探るために研究をスタートさせました。
今回の研究でわかったことは、今の時代における制服には「かわいい」が、とても重要なキーワードであることです。そのうえで、女子中高生は、かわいいと思う制服について、社会における役割と、自分らしさのバランスが大切だと考えています。私服にはない制服の本質について「きちんと感・学生らしさ・安定感」と捉えており、私たちはこれらを「制服らしさ」と考えました。
そして、気に入った制服を着ることができれば、肯定的な自己評価感情が高まるなど、私服にはない価値を見いだせることが調査のなかで明らかになりました。また、制服を身につけることで、周りの人と「かわいい」という思いを共有して繋がることができる、といった制服ならではの価値も見えてきたのです。
調査の前に仮説があったかと思いますが、実際の結果と違いはありましたか。
安木ありましたね。自己評価感情について調べるにあたって、私たちの仮説は、自分の好みで着られる私服が最も肯定的な自己評価感情が高くなると思っていました。ところが、理想の制服と現在の制服、お気に入りの私服の3つを着たときのイメージをしてもらい、自己感情を評価してもらった結果、理想の制服が私服よりも肯定的な自己評価感情が高くなっていたんです。
安木これは、いい意味で裏切られましたね。
理想の制服が高く評価される理由として「青春っぽさ」も1つあると思います。制服のかわいさは、その青春体験にも関わってくるのかなと。実際に制服のかわいさについて学生に座談会形式で聞いたときも、限定感や青春といったキーワードが出てきていました。「制服を着ればどこでも行ける」「制服は無敵」といった意見も出てきていて、私たちが思っている以上に女子中高生たちは制服に対して肯定的な感情があると実感しました。
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