1946年に英国で生まれた伝統あるブランド、karrimor(カリマー)のリュックサックは、ブランド名の由来である「carry more」を実現して背負いやすく、疲れにくい製品が揃っている。アウトドアを楽しむスタイルの広がりを受けて新たに開発されたモデル「cleave(クリーブ)」を手に取ると、従来の製品になかった機能が数多く取り入れられているようだ。
どうやら画期的なリュックサックらしいので、ぜひ隅から隅まで解説してもらいたくなり、カリマーインターナショナル株式会社でプレスを担当する中島亜唯さんを訪ねた。
「カリマー」製品に共通する特長として、徹底的な合理性が挙げられる。背中に触れるバックパッドの配置や「背面長」〔1〕の選択、特徴的なショルダーハーネスとヒップベルトの形状といった、いわばブランドのDNAは「クリーブ」に受け継がれていると中島さんは言う。
「肩にかかる荷重が多いと疲れやすいので、しっかりしたヒップベルトや身体にフィットするショルダーハーネスなど、定評のある『カリマー』製品の伝統を取り入れて、全体的に肩よりも腰で背負う構造になっています。バックパッドの背面長も47cmのミディアムと42cmのスモールがあるので、男性用や女性用というくくりでなく、背負ってフィットするタイプを選べます」
背面長47㎝の「クリーブ 30 ミディアム」を背負うと、おもに腰で重量を支えながら補助的にショルダーハーネスにも荷重される感覚がある。その際、ハーネスが鎖骨の下などの血流を妨げないカーブになっているので、これは確かに行動しやすいだろう。
「背負ったまま手が届く範囲に、いろいろと工夫があります。扱い方は人それぞれだと思いますが、どんな想定で作られたか1つずつご説明していきますね」
「アタッチメントループと呼んでいる蛍光イエローのパーツが『クリーブ』の前面と背面の左右にそれぞれ付いています。前面のアタッチメントループには、たとえばグローブをちょっと外して写真を撮りたいなといった場合など、リュックサックを下ろさず一時的にグローブを取り付けて行動することができます。
ショルダーハーネスに付いているメッシュポケットは左右で形状が異なります。行動食を入れておいたり、スマートフォンをセットしたり、ドリンクのボトルを入れたりと用途はいろいろです。左のメッシュポケットは上部が開いているので出し入れしやすく、右のメッシュポケットはジッパー付きで上部を絞ることが可能なので、左のポケットに比べて落としたくないものを収容するのに向いているかもしれません」
「岩場などで一時的にトレッキングポールを片づけて両手を自由に使いたいときなどは、前面のアタッチメントループにポールを通して固定すれば着脱で時間をロスすることがありません。しばらくポールを使う機会がない場合は背面のループに固定すれば、より動きやすいはずです。前面でも背面でも、ループはタオルなどを下げるのにも便利です」
帽子やサングラスといったアウトドアの必需品を、状況に応じて着脱する際にも前面のアタッチメントループは活躍しそうだ。歩きながら操作できるのは大きなメリットだし、おそらく置き忘れなど紛失のリスクも軽減されるだろう。
前面だけでも機能が多彩でいろいろな使い方ができそうだが、背面と側面にもメッシュポケットが付いている。それでいて見た目がシンプルなので、さりげなく「carry more」を実行可能で、伝統と新機軸が見事に融合している。
「2023年の春夏シーズンは『-BEYOND the LINE-(ビヨンド・ザ・ライン)』がブランドのテーマです。いまいる場所、いまできるることから、もう一歩前へ。これまで培ってきたモノ作りのノウハウと、新たなコンセプトを融合させた提案を行います。
この『クリーブ』は近年の山行スタイルの変化に応じて、これまで大切にしてきた『背負いやすく、疲れにくい』基本設計に加えて、ファストハイクなどに役立つ『行動しながらの操作性の高さ』『荷物の出し入れのしやすさ』『軽さ』を併せ持つ、多機能でシンプルなシリーズなんです」
すでに2000年代から、日本で販売されている「カリマー」製品はすべて日本人の体型にフィットするよう日本で企画開発されている。英国で「カリマー」の哲学を学び、日本企画のリュックサック作りに当初から携わる松澤篤雄氏は、現在に至るまでアドバイザーとして同社の企画開発に貢献している。「クリーブ」は、まさにその最新作だ。
雨蓋の付いたリュックサックに比べて、ロールトップのモデルは荷物の出し入れがしやすく、より軽 量に設計できる。「ライト&ファスト」を合言葉に山行を楽しむニーズに応えた新機軸といえるだろう。
「口元はファスナー付きで、バックル部分が互い違いになっているので、口元を上部で留めることも可能です。容量30リットルといっても、状況の変化に対応できる拡張性に優れているのが『クリーブ』の特徴です。極端な話、中身を空にすればペタンコになりますし、日帰りのハイキングにも泊まりがけの山行にも対応できます」
「拡張性の高さはボトムの使い方でさらに高まります。岩場や鎖場などでトレッキングポールを畳んで取り付けることもできますし、かさばる登山マットなどのアイテムや、汚れや濡れが気になるものを装着して持ち運ぶことができます」