ショップで初めて見たとき、さりげなく山でも街でもかぶるのによさそうな帽子だというのが第一印象で、まさか遮熱構造を備えた画期的なハットだとは思わなかった。もっとも、ひっくり返して裏側を見れば「これは何らかの機能があるぞ」と誰もがピンとくるだろう。一言で表現すれば猛暑や残暑の時期に頼りになる、涼しい帽子だ。
太陽光の熱線を遮り、反射する遮熱構造が涼しさの決め手
人はなぜ帽子をかぶるのか。寒い時期は保温が大きな目的になる。では暑い時期に帽子をかぶる理由は? アウトドアブランドで帽子作りを手がける長竹さんは、目的に応じた製品を世に送り出すべく、「帽子をかぶる理由」を常に考えている。「帽子のツバが頭のまわりを一周しているハットにせよ、前面にだけツバがあるキャップにせよ、アウトドアで帽子をかぶると小枝や虫などの障害物を避ける役に立ちますよね。それ以外にも、夏場に帽子をかぶるのは単に『日に焼けないため』と考える人が多い。『サーモシールドハット』は紫外線遮断率98%以上(UPF+50)で日焼け予防に役立ちますが、機能はそれだけではありません。
ハット全体の生地の内側に通気性を持つ遮熱素材をはさみ込むことで、太陽からの熱線を反射する特殊な構造で、帽子の表面温度の上昇と帽子内部への熱伝導を抑えることができ、頭部が暑くなりにくいんです。弊社とおつきあいのある企業が特許を持つコカゲルⓇという遮熱構造を採用した結果、頭部の温度上昇を効果的に抑えることができます 」
紫外線を防いで日焼けを予防する効果は多くの帽子に備わっているが、熱線を跳ね返して熱中症を予防する遮熱構造を採用したアウトドアブランドのハットは「サーモシールドハット」だけ。そこが画期的なところだ。
実験を繰り返した結果、ハット内部の温度上昇を8℃程度も抑えられた!
帽子をかぶると頭が蒸れて脱ぎたくなる場合が多いのに、取材の前に幾度も低山歩きなどで「サーモシールドハット」を使ったところ、1日中かぶっていることができた。決め手は通気性を確保した遮熱構造で頭部の温度上昇が抑えられ、蒸れにくかったことだろう。「アルミなど一部の金属には熱線を跳ね返す働きがあります。『サーモシールドハット』はアルミの面を外に向けてあり、直射日光など外部からの熱線を跳ね返します。だから熱くならない。自動車のフロントガラスにアルミを貼ったパネルを立てかけて、クルマの中の温度が上あがるのを防ぎますよね。あれと原理は同じです
ガラス自体は熱線を透過してそれほど熱くならないのに、ガラスを通過した熱線をクルマの中にあるモノが吸収して温度が上がり、結果として車内が猛暑あるいは酷暑になりますね。すると熱中症の危険が高まります。同じようなことが帽子内部で起きるのを防ぐのが『サーモシールドハット』の目的です」
通気性を高める目的ならば、全面メッシュの帽子を作ったほうが一見、涼しそうに思える。しかし、通常のメッシュで頭を覆うだけでは紫外線も赤外線も防ぐ効果が期待できないと長竹さんは指摘する。
「メッシュの素材によりますが、通常は網の目から紫外線も熱線も通過して頭部に達するので、帽子をかぶってもメッシュの部分だけ髪が日焼けして変色したり、熱線で温度が上って熱中症になる場合があります。『サーモシールドハット』にも通気性を高める工夫は取り入れましたが、日光の通過は最小限とし、遮熱性能とのバランスを取ってあります」