ファッション研究の現場において、デジタル技術はどのような恩恵をもたらしたのか。これまで多くの研究者に取材をしてきたFashion Tech Newsだが、あらためてその最前線を追いかけてみたい。
今回お話を伺ったのは、京都女子大学家政学部の渡邊敬子准教授だ。専門は「アパレル人間工学」や「被服構成学」で、3Dテクノロジーを使ったアパレル製品の設計や研究をしている。
今年になり、約20年ぶりにJIS(日本産業規格)衣料サイズが改定された。この背景には、日本人の体型データの新たな収集と分析が必要であり、そこには渡邊准教授の研究の存在が不可欠だった。3Dテクノロジーの黎明期からすでにデータの収集・分析を行っていたからこそ、学会や企業に向けて提言できることも多くあるだろう。
そこで、あらためてご自身の研究について語っていただき、ファッション研究と3Dテクノロジーの関係を振り返っていただいた。
PROFILE|プロフィール

渡邊 敬子
京都女子大学家政学部生活造形学科准教授
大妻女子大学大学院家政学研究科博士後期課程単位取得退学後、博士(学術)を取得。大妻女子助手、京都女子大学短期大学部講師等を経て2011年から現職。「日本人成人の人体寸法データブック2014-2016(一般社団法人 日本家政学会被服構成学部会)」、「被服学事典 (朝倉書店)」など人体と人体計測に係わる共著がある。人体計測、特に3D人体計測の専門家として、JIS衣料サイズ規格、ISOTC133の審議委員やエキスパートを務めている。
ご専門である「アパレル人間工学」「被服構成学」では、どのような研究が主流なのでしょうか。
戦後、既製服の時代を迎えて、科学的な衣服設計のために始まった学問です。お茶の水女子大学の柳沢澄子先生がこの学問領域を確立させました。戦後日本で洋装が広まり、それまで各社バラバラだったサイズが統一されることになり、そのためには膨大な量の日本人の体格データが必要になってきました。