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2021.04.22

ロッテルダム発Living Colourの探求する バクテリア染色の可能性

オランダ在住のデザイナーLaura Luchtman(ローラ・ルヒトマン)とIlfa Siebenhaar(イルファ・シーベンハー)の2人によって構成されるバイオ・デザインのプロジェクトチーム、Living Colour(リビング・カラー)。彼女たちは、バクテリア染色の発展可能性を探求している。バクテリア染色は、化学薬品を一切必要とせず、合成繊維・天然繊維双方の染色が可能であり、染色工程における水の使用量や環境負荷を最小限に抑えられる点から注目の集まる染色手法だ。今回、バクテリア染色の研究を主軸に、レシピの開発と研究、ワークショップの開催、企業とのコラボレーション等を行ってきた彼女たちの取り組みについてインタビューを行った。

Textile Academy卒業後、Living Colourとして活動を継続

Living Colourは2016年、ローラとイルファの2人による、オランダ・ロッテルダムのバイオ・デザインの研究プロジェクトである。大きな特徴として、両者共に独立したデザイナーであり、ローラは自身のテキスタイルスタジオ「Kukka」を、イルファはフリーランスのファッションデザイナー「Studio Ilfa Sabienhaar」として活動している。
「よく企業ですか?と尋ねられることがありますが、企業でもスタートアップでもありません。Living Colourは、お互いに本業の傍ら、興味が合致するテーマに沿って行われる、唯一のコラボレーション・プロジェクトです。」
左からLaura Luchtman、Ilfa Siebenhaar ©Menno Boer
左からLaura Luchtman、Ilfa Siebenhaar ©Menno Boer
2人の出会いは、2016年にアムステルダムのWaag Societyで開催された短期間コースTextile Academy(テキスタイル・アカデミー)だそうだ。当コースは、毎年約3ヶ月間、オンラインで授業が展開され、毎週異なったテーマに沿って参加者はハンズオンで実験や制作を行いつつ学習する。講義は、RhinocerasGrasshopperといったソフトウェア用いたコンピュテーショナル・クチュール・電子工作を主軸とした、eテキスタイルやウェアラブルハードウェアの開発・バイオマテリアルの制作や染色といったテーマから構成され、最終回では、各々がプロジェクトプランを発表、これまでの講義の集大成として最終成果物を提出するといったような内容だ。
2016年当時、両者ともロッテルダムに在住していたことから、講義後アムステルダムからロッテルダムの車中で、授業の感想や互いの興味について頻繁に語り合っていたそうだ。とりわけ、バクテリア顔料の染色の講義後は、白熱した話を交わしながら帰路についたという。そして、最終成果物を制作するにあたって、互いが最も関心を示したバクテリア染色に焦点をあて、共同研究を始めたことが、Living Colourの発足となったという。プログラム終了後も、よりバクテリア染色の方法論の研究を深めたいという強い思いから、コラボレーションプロジェクトとして、本業の傍ら共に活動を継続することを決定し、現在に至るという。

ラボ環境を「ハック」した、Living Colourの実践が可能にしたこと

Textile Academyプログラム終了後、活動拠点をWaag Societyから、近場のRotterdam University of Applied Scienceに移した彼女たちは、まず実験を行うにあたって、研究施設のプロトコルを学習したという。
「ラボに実際に入り、実験を実施するにあたって最初に行ったのが、ラボのプロトコルの学習です。基本的にこのプロトコルに従って、安全性への基本的な要件を常に意識しつつ、思いついたアイデアを実行しています。入所当時から、ラボ側の研究員からはとても歓迎され、オープンな環境で実験を実施することができているように思います。」
ラボの様子 ©Laura Luchtman and Ilfa Siebenhaar
ラボの様子 ©Laura Luchtman and Ilfa Siebenhaar
「Rotterdam University of Applied Scienceは、微生物学に焦点を当てた研究施設で、既にバクテリアの研究は行われていました。しかし、研究が応用されるのは抗生物質の開発などで、実際にバクテリアの色などは彼らの興味の及ぶ範囲ではありません。そのため、通常のラボの環境を『ハック』する形で、彼らがこれまで行ってこなかった、新しいコラボレーションの方法をチャレンジしてきたとも言えます。」
ラボの様子 ©Laura Luchtman and Ilfa Siebenhaar
ラボの様子 ©Laura Luchtman and Ilfa Siebenhaar
「例えば、在籍する学生は、研究計画を立ててから実際に実行するまでの準備期間に数ヶ月かけるという特徴があります。しかし、私たちは、思いついたアイデアを、すぐに実行したいと考えていたため、研究実施に至るまでの準備期間を短縮していました。この違うタイムスパンでの捉え方もまた、これまでのラボのあり方に影響し、最近では、学生たちの準備期間が短縮されています。」
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#Bio Fashion
#Sustainability
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